淡水の人魚姫さま

ウォッカ片手に徘徊していた俺は、気がつけば花に囲まれた湖に辿り着いていた

前日は度数の強いものをゴクゴク飲んでいたから、頭がガンガンして痛い

こんなに綺麗な水なのだし、魚の1匹でもいるかもしれない

そう思って、ふらふらしながら水面に近づく

足に引っ掛かりを感じたと思えば、俺の体は湖に一直線だった

バシャーーーン！！

大きな水音を鳴らし、湖に落ちた俺

必死に空気を求めて手を伸ばし泳ぐが、空気に触れることはなかった

落ちた衝撃で空気を吐き出してしまったこともあるし、酔っ払いに着衣水泳は難しい

あぁ、このまま死ぬのか

視界が暗くなってきた中で、昔のことを思い出した

まだ幼かったあの日、親父は人魚の話をしてくれた

幼児のベラが乳児のウクやカザフたちに、人魚姫の話を読み聞かせていた時だ

覚えたての字を読んでいくベラを愛おしげに見つめながら、どこか遠くを見る親父

親父は俺の頭をガシガシ撫でて、にっこりと微笑んだ

突然落ちてきた人間さんは、溺れてしまったみたい

意識を失っていて、どんどんお家の方まで沈んでいってしまう

冷たい手を引っ張って、私は陸まで泳ぎました

まだ生きている

俺、湖に落ちて死んだはずじゃ…

ぼーっとしていたら、鈴が鳴るような高い声が聞こえてきた

急いでそちらを見れば、ほとんど上裸の女が1人

死んでいないのは喜ばしいのだが、助けてくれたであろう彼女に目が向けられない

どこを見てもアウトな気がする…

無邪気に笑顔を見せる日本だが、彼女はまだ水に浸かっている

日本はくすっと小さく笑うと、ようやく水から這い出た

その下半身は、まるで魚のようだった

光る鱗と美しい尾鰭は偽物には見えない

ゆらゆら動く鰭を凝視していると、日本は湖に尾を戻した

まさか親父の言っていた人魚が実在するなんて…

赤い鱗の綺麗な人魚とは、日本のことなのだろうか？

状況整理も終わらないまま、俺は日本と話をした

もっとお話が聞きたかったなぁ、と思っても、ロシアさんが病気になってしまうよりはいいです

お母様にバレないように、気をつけなくっちゃ