「──って、あの無一郎様が言ってくれたんです! それに、鬼と戦った時もずっと私のことを守ってくれて……本当に好きなんですよ、どうしたらいいですか?」
「キャーーーッ!! 初々しいわね、可愛いわぁ! 貴方ほどの可愛さならもう告白しちゃったら良いんじゃないかしら!」
「もしも振られたら迷わず私の頚をその場で落としてくれますか?」
元惚れ症の恋柱継子、霞に心を囚われています。
【注意事項】 ・文才は霞散の飛沫 ・時系列にズレがあります。 干天の慈雨のような優しい心でご覧ください。 ・霞柱オチ
【映画、アニメ化のされていない部分のネタバレを含みます】 漫画未読の方は原作の結末を知ってからの閲覧を強く推奨します。
桜が舞っている。 美しい街並みだ。
地面が近く、全ての物が高く大きく見える。 水面も鏡も見当たらず、自分の姿を確認することができない。
ここが何処かは分からない。 今まで何をしていたか、その記憶さえも曖昧だ。
懐かしい香りがする。
奥にふたつの人影が見えるが、靄のようなものがかかってよく見えない。 脚が動かず、そこに向かうことすら出来ない。
背後から強い強い風が吹き、目を閉じる。ただ、暖かい。
結局よく分からないまま、視界は暗転した。
目を覚ますと見知った天井が映る。
奈那
後藤
刀鍛冶の里で上弦の伍と対峙し、無事勝利した奈那は満身創痍の中鋼鐵塚の一撃で意識を失い、五日間寝ていたという。
ある意味では、鬼よりも鋼鐵塚の方が危険なのではないだろうか。
奈那
後藤
奈那
蜜璃と無一郎の異常なまでの回復速度に驚き、身体起こそうとするも、あまりの痛さにそれは叶わず終わった。
後藤
奈那
後藤
奈那
横を見ると炭治郎と玄弥がぐっすりと眠っている。 その寝顔は歳相応のものだ。
とはいえ……奈那は彼らよりも歳下であるのだが。
奈那
後藤
後藤
目を伏せる後藤に奈那は静かに首を横に振る。 その気持ちが、充分すぎるほどに分かる故に。 掛ける言葉は見付からなかった。
後藤
奈那
後藤
奈那
後藤
ときめいてはいないが、奈那は後藤への好感度が上がった。
当然、無一郎への思いとは比べ物にならないが。
殺されるとは、誰に? そう思ったが、その疑問は驚く程の速さで解消された。
時透無一郎
後藤が部屋を出てすぐに声を掛けられる。 普段よりも柔らかい声に。心臓が、跳ねる。
今すぐに顔を上げてその綺麗な瞳を見つめたいのに、集まる熱を、その奥にある心を見透かされたくなくて。 俯いたまま返事をする。
奈那
時透無一郎
優しい。優しいのだ。冷酷だと噂される彼が。いつにも増して。何故だろうか。 奈那は焦りから思考がまとまらない。
時透無一郎
奈那
時透無一郎
先程まで優しいと思っていた感情は勘違いだったのかもしれない。 しかし、その声色からは確かな暖かさを感じる。
顔を、上げる。心配そうにこちらを見る浅葱色の透き通った双眸と絡み合う。 彼の美しく暴力的なまでに優しい瞳には、奈那だけが映されていた。
奈那
時透無一郎
無一郎は静かに微笑むと、聞きたい? と奈那を見て首を傾げ、分かりきった返事を待ってから自身の過去の話を始めた。
目を閉じ、すぅ、と息を吸って口を開く無一郎。 静かな室内には穏やかな彼の声のみが広がる。
それは、あまりにも壮絶だった。 彼が記憶を失っていたのは恐らく本能的な自己防衛なのだろう。
奈那はただ言葉を失う。震える細い手で口元を抑え、ただ涙を流すことしか出来なかった。 彼が今生きてここに居てくれるのは奇跡だ。
時透無一郎
時透無一郎
時透無一郎
奈那
空気に流されて数ヶ月間抱え続けた想いを思わず伝えようとした、その刹那。
神崎アオイ
時透無一郎
奈那
かなりの音を立てながら襖を開け、目に涙を浮かべながら奈那に駆け寄るアオイと……何故だか少し不機嫌になる無一郎。
また想いを伝えるはずが、遮られた。小鉄といいアオイといい……気持ちを伝えられない呪いか何かではないかとムッとする。
奈那は紅く染まりきった頬を手でパタパタと冷まし、にっこりと笑顔を向ける。
神崎アオイ
時透無一郎
神崎アオイ
神崎アオイ
アオイは食事を奈那に、薬を無一郎に渡すとふたりを交互に見やり、にこりと可愛らしく微笑み部屋を後にした。
完全に奈那の恋心は勘付かれている。 奈那はアオイに心の中で感謝を告げた後、相当噂が広まっていることにため息を吐きそうになった。
時透無一郎
奈那
時透無一郎
じと、と奈那を見る無一郎。 食事を摂りながら平常心を装うも心臓の鼓動がなかなか元の速度に戻らない。頭がくらくらとする。
奈那
時透無一郎
どうして知ってるの、と言いたげな無一郎。 記憶が戻ってから柔らかくなった彼を愛おしく思う。
奈那
わざとらしく炭治郎を強調する奈那。 面倒な性格だと自覚しているが、ほんの少し……ほんの少しだけ自分の名も出てくることを期待しながら。
時透無一郎
時透無一郎
時透無一郎
奈那は驚く。あまりの嬉しさにどうにかなってしまいそうだ。
奈那
奈那
奈那
奈那
時透無一郎
時透無一郎
彼は、どれだけ奈那を"どきどき""キュンキュン"させれば気が済むのだろうか。
高鳴る胸を抑え、軽く深呼吸をして甘く苦しくなった息を整える。
奈那
療養中につき、まだ少ない食事を済ませた奈那は無一郎から受け取った薬をごくりと一気に飲んだ。
奈那
時透無一郎
コメント
2件

好きです!!!!急な告白失礼しました!!お話めっちゃ面白いです!
ずるいよ無一郎きゅん、