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風にキス、君にキス。~君の為に走る想い~

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風にキス、君にキス。~君の為に走る想い~

14 - 神様が起こした最後の奇跡

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2022年02月12日

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え…

……にじみ出るように心にわいてくる、 一つの記憶があったから。 そういつかの…彼のセリフが。 ーーーー『日向の夢は何?』 『トップアスリート。…だけど、 もしそれが無理だったら…』 無理だったら…。 なぜ急に思い出したのだろう。 …その言葉の続きであり、 彼のもう一つの夢。 ーーーー『ダメ。日向みたいに速く走れない』 『もっとしっかり腕振って、前見て』 …いつの、ことだっただろうか。 記憶があざやかによみがえる。 いつかの中学時代のグラウンドに、 引き戻される。 タイムを伸ばそうと必死になっていた、 あたしのそばで微笑みながら… 彼は確かにいった。 『走るのもいーけど…。…世界中の色んな 人達に、走る楽しさを伝えんのも、悪くは ないな』

あたしは震える胸を押さえ、 静かにまぶたを閉じた。 ーーーーこれは夢…? …だって神様はいつだって、 意地悪ばかりだった。 神様がいるならこんなに、 苦しい思いはしなかったのに。 はかりきれないほどの涙を、 あたし達は流した。 だからあたしは、 神様も運命も何も信じない。 そう決めていたけど…。 『同じ道を歩けなくても、いつか道が 交わることがあるのなら』 ーーーーあの日願った言葉だけは、 届いたのだろうか。 …何年も何年も… 君だけを思い続けていた。 その想いだけは届いた…のだろうか。

部員

先生こっこっち!

??

…なにやたら興奮してんだよ。バカだな

え…?

ーーーーあの頃。 グラウンドという小さな世界で、 あんなにも光り輝いていた彼に恋をした。 神様どうかあたしに、 最後の奇跡を下さい。 …だって知っているはずでしょう? あたしは決して彼を見つめることを、 やめはしないのだと。

ッ…

涙が出るほどに懐かしい声が、 匂いが確かに目の前に現れたとき。

日向…?

??

柚…?

神様は、最後の小さな小さな、 幸せな奇跡を起こした。

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