作者
そして私は、新しい作戦を立てた
前回の悪戯は私が大目玉をくらってしまったので、仕返しの為新しい作戦を立てた。
まず、幽霊【私】が出来る範囲は
・壁や天井に手形をつける
・私の怨念の声なら少し人間にも聞こえる。
・ほとんど水が入ってないようなペットボトルくらいの軽いものなら触れたり押せる。
・冷たい空気を吹かせる事が出来る。
・肩を少し重くする。
頭を抱えたが出てきたものはこれぐらいだった。
以前の人間はなんでもかんでも驚く男だったので、置いてあったペンを少しカタカタさせたくらいで、
塩を撒き散らしながら号泣し初め
『何故そのように荒ぶるのか!!!!』
と鼻水垂らしながら動き回っていた。
いやそのセリフもものけ姫やん。
とか思いながら、若干引き気味でその様子を見ていた。
その後の落ち着いてからズビズビと鼻すすりながらコロコロしてたのは面白かったけど・・・。
当然そんな人だったので引っ越してきてから2ヶ月で去っていった。
ある意味嵐のような人だった。
しかし、今回の人間は違う。
多少の事じゃ動じない肝が据わってる物珍しい人種だ・・・
驚かすのもいいけど、趣向を変えて身体に影響するものを選んだ。
そう
!!!!!!!【肩を重くする】!!!!!!!
古典的ではあるが、案外影響がある。
皆肩重いのが続いてたら
『あれ・・・最近肩重いんだけど・・・憑かれてる・・・?いや、まさか・・・ははは』
ってくらいにはなるじゃん?
それを狙う。
地道だとは思う。
しかし、あわよくばあの街中である 歩いてたら霊媒師に
『貴方・・・憑かれてるよ』
的な事言われて驚いて欲しいじゃん!
と考えがまとまったので、現在寝ている人間の上に乗る
すり抜ける事も出来るけど、さじ加減しだいで触ることも可能。
だって私怨霊だからね!
あ、起きた。
重そうな瞼をこじ開け身体を起こしたので、
背後に周り首に抱きつく。
すると少しなにか感じたのか、おぼろげな目で周りを見渡し始めた。
すると男は言った
『なんか身体・・・重・・・』
と。
おお?!気づいた!さぁどうくる?
大抵の人間は「風邪か・・・?」とか
「疲れてるからか・・・」とかネガティブ全開の発言をかましてくるが・・・。
やっとこの男から陰気な言葉を聞けると思った。
「最近筋力つける為にジム通ってたけど、もしや・・・俺にも筋肉が付き始めた・・・?」
とか言い出した。
めっちゃポジティブやん。
うわ服めくって腹筋確認し始めたし。
ってかなんでここで確認するんよ・・・
別に恥ずかしいとかでは無いけど、私だって女やし急に生の腹筋見たら顔ぐらい赤なるよ・・・
自分を落ち着かせながらそっぽを向く。
ってか最近帰り遅かったのジムに行ってたからかと気づく。
私が暇だからもう少し早く帰ってきて欲しいという願いが脳裏にチラついたが、何を考えてるんだと頭を降って煩悩を消し去った。
ようやく確認が終わったようで、朝ごはんの準備をし始めた。
ちょうど椅子が二つあるので、座らせて貰うことにした。
パジャマのままトーストを貪ってるので、食べこぼしを気にしてない様子。
口の横にパンのくずが付いてたので、取ってあげると、ビクッとはねた。
ポロリと机に落ちたパンくずを見て何事も無かったかのように再び食べ始めた。
最近は悪戯をしても返り討ちにあってる気がしてならない。
しかし必ずや、この男にギャフンと言わせれる悪戯【ポルターガイスト】を考えてやる。
食べ終わった男は洗面台に向かい、身支度を進めていた。
当然私はこの男が椅子から立った辺りから首元に抱きついていた。
しかし、流石に着替える所まで抱きついている訳は無いので、大人しく横の部屋で待っていた。
今まで外に出ようとした事無かったけど、この男についてれば何となく大丈夫な気がする。
スーツ姿で男が出てきたので、もう一度飛び乗る。
しかし、顔はあまり悪くないこの男
生前男にうとかった私は少し心臓に悪い。
男が振り返る時とか顔がめちゃくちゃ近くなるのが今のところの問題点である・・・。
身支度を全て終え男も家を出る手前に忘れ物がないか部屋を振り返った。
その時ドキリと無いはずの心臓が飛び跳ねた気がした。
更にふっと口角をあげ、まるで愛しいものを見るかのような顔をした。
流石にノックアウトされた私は首元から耳まで真っ赤になってしまった。
しかしその瞬間とてつもない力で男から離れてしまった。
そう、玄関の扉だ。
私自身地縛霊の事を忘れていた。
どうやらここから先は地縛霊である私は行けないと理解した。
玄関に転げ落ちた私はヘタリと座り込み、
真っ赤になった顔で仕方が無く男を見送る事になった。
今はまだアイツに敵わないかもしれない。
でもきっと、試行錯誤を続けていけば、
私だって勝てる。
そう願い、私はまた新しい作戦を作りながら、アイツの帰りを待つ。
俺は玄関を出て鍵を閉めたあと、少し赤くなった耳を隠し、緩んだ口元を直す。
『あの幽霊可愛すぎる・・・』
