衝撃のようなものが背筋に走り、目が覚めた。
硬いものの上で気を失っていたらしい。
全体的に部屋は暗く、テーブルの上の灯りだけが、
他の参加者の顔を見分ける手伝いをしていた。
左を見ると
小粋な角度でペレー帽を被った男が、右手に懐中電灯をぶら下げて座っていた。
あたしがそちらを見ていると、相手から声をかけてくる。
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
2回目。
このゲームはもう経験済みらしい。
クリーチャー・ピアソン
この男は、どこかしら自身のある顔つきで、あたしを眺め回した。
この手のやからは、あまり好きではない。
あたし
あたし
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
冷たくそう言うと、
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
そう言うと、そっぽを向いてしまった。
すると今度は、右側から声がした。
フレディ・ライリー
フレディ・ライリー
あたし
フレディ・ライリー
フレディ・ライリー。
弁護士。
神経質そうな細い眉に、スーツ姿。
小心者、臆病者という言葉を連想させる風貌だ。
その奥に、まだ人がいる。
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
あたし
麦わら帽子に、そばかすが特徴的な明るい顔。
庭仕事用のエプロンを下げている。
こういう子は、最初にとばされるか、しぶとく残るかのどっちかだろう。
そして、
あたし達の前に、一際大きなイスがあり、
巨大な影が、そこに座っている。
後ろ姿から判断するに、
彼はレオ・ベイカー。
復讐者のハンターだ。
・サバイバーは、5つの暗号機を解読し、ゲートを開いて脱出
・2人以上脱出で勝利
・ロケットチェアには、2回捕まると、荘園にとばされる
さあ、始めよう。
視界が暗くなった。
そして突然明るくなる。
あたし
薄暗がりの中、
あたしは教会のような場所に立っていた。
あたし
あたし
空を仰ぐと、
何本か、光るものが見えた。
あれが暗号機だ。
ハンターに見つからないようにして、5個解読しなければならない。
あたしは暗号機の方に走った。
あたし
あたし
すると向こうから、
走ってくる音がする。
あたし
フレディ・ライリー
フレディ・ライリー
あたし
あたし
フレディ・ライリー
フレディはあたしの乱暴な口調にたじろぎながらも、手伝ってくれる。
その手元を見て、息を飲んだ。
慣れた手つき。
速い。
その表情は真剣そのもので、
改めて弁護士なんだなぁということに気付かされる。
しばらくして、解読が終わった。
パッ、と、明るい光がつく。
フレディ・ライリー
フレディ・ライリー
あたし
フレディ・ライリー
フレディ・ライリー
礼を言うなんて、あたしらしくない。
とその時。
エマ・ウッズ
クリーチャー・ピアソン
二人分の悲鳴。
慌ただしく走る音。
ハンターに、見つかったのだ。
あたし
フレディ・ライリー
見た目に反して度胸のある事を言うな、と思いつつ
冷静に考える。
あたし
あたし
あたし
あたし
フレディ・ライリー
あたし
フレディ・ライリー
あたし達は走って、次の暗号機に向かった。
カチャカチャ…
カチャカチャ…
暗号機を解読する音だけが響き、
やけに静かなのが不気味だ。
2人でやると、大分解読が速い。
そこへ、
エマ・ウッズ
エマ・ウッズが転がるようにして、あたし達のところにきた。
あたし
エマ・ウッズ
あたし
エマは、うなだれるように頷いた。
エマ・ウッズ
あたし
エマ・ウッズ
深々と頭を下げるエマ。
だが、呼吸は荒く、背には深手を負っている。
それに気づいたフレディが、エマに駆け寄って治療し始めた。
エマ・ウッズ
何度も謝罪を繰り返すエマ。
治療が終わると、いくらか顔色が良くなったように見えた。
あたし
エマ・ウッズ
突然の言葉に、あたしとフレディは絶句する。
あたし
あたし
あたし
あたし
あたし
そう告げて駆け出そうとすると、腕をつかんで引き戻された。
あたし
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
あたし
あたし
エマ・ウッズ
エマは決意を固めた表情で、駆け出して行った。
あたし
フレディ・ライリー
あたし
言いかけて、目を見開いた。
ハンターが、こちらに迫って来ている。
あたし
あたし
そう言いながら走り出すと、
壁の隙間から、クリーチャーが拘束されているチェアが見えた。
そこには、
あたし
ハンターのスキルは、瞬間移動らしい。
これは厄介だ。
もう一度見ると、エマが走りより、
クリーチャーを助け出していた。
ほっとするもつかの間。
ドシュッ。
あたしのすぐ横を、攻撃される。
危うく当たるところだった。
あたし
ハンターは無言で、追いかけてくる。
とりあえず、板を1枚倒しておく。
少し距離が離れた。
あたし
ハンターの死角に回り込み、
完全に姿を消した。
ハンターが遠のいて行くのがわかる。
あたし
今ので、フレディとはぐれてしまった。
あたし
そう独りごちて、歩き出した。
あたしはこのゲームに自ら参加した。
それはもう、産まれる前からの義務のようなもので
自分はこのゲームに参加すべきだと
なにかがあたしに知らせていた。
......。
経験者は、何人居るのだろう。
クリーチャー・ピアソン
あたし
あたし
あたし
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
安堵すると、顔にでていたらしい。
クリーチャーがニヤリ、とこちらを見る。
あたし
クリーチャー・ピアソン
あたし
あたし
あたし
クリーチャー・ピアソン
なぜか、クリーチャーが顔を赤らめた。
クリーチャー・ピアソン
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
知らず知らず、仲間任せにしていたらしい。
あたしの罪悪感を感じて、珍しくクリーチャーが慰めごとを言う。
クリーチャー・ピアソン
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
クリーチャー・ピアソン
あたし
あたし
クリーチャー・ピアソン
突然、クリーチャーに押さえつけられる。
あたし
あたし
語気を強めようとして、息を飲んだ。
上手く逃げ仰せたと思って、すっかり油断していた。
あたし
クリーチャー・ピアソン
そう言ってクリーチャーは、教会の中に入っていく。
クリーチャー・ピアソン
窓枠に、あたしを押し上げてくれた。
あたし
クリーチャーはハンターとチェイスしていた。
軽い身のこなしようで、窓枠を器用に乗り越え、板でハンターを翻弄する。
その表情は、むしろ楽しんでいるようにも見える。
ふと、ハンターがくるりと向きを変え、あたしの方に向かってきた。
クリーチャー・ピアソン
あたし
遅かった。
鈍い痛みが走り、声にならない叫びが喉をつく。
クリーチャー・ピアソン
あたし
クリーチャーが手を引いて、あたしを助けてくれる。
その背中に、ハンターのもつ長刃が振り下ろされた。
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
風船にくくりつけられ、つれていかれるクリーチャー。
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
...そんな訳には行かない。
あたしは他人と交わるのは嫌いだ。
でも、決して、他人が嫌いな訳では無い。
ましてや、自分を助けてくれた人間を見殺すようなことはしない。
するものか。
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたしは、クリーチャーがロケットチェアに括りつけられるのを待って、壁に身を潜めた。
両手で円を描くように動かし、
特徴的な紋章を浮かび上がらせる。
それは形となり、壁に張り付いた。
ハンターが離れるのを見計らい、一気にゲートをくぐり抜け、ワープした。
クリーチャー・ピアソン
あたし
あたしは素早く拘束を解き、クリーチャーを解放した。
あたし
クリーチャー・ピアソン
ようやく、ハンターから大分離れたところに来た。
ここまで来れば、もういいだろう。
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
あたしは手際よく、クリーチャーに包帯を巻く。
沈黙が長い。
やっと、クリーチャーが口を開いた。
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
そうだ。
あたしは、フィオナ・ジルマン。
役は、祭司。
神に導かれたのは、ある意味本当なのだ。
神と言うより、運命と言うべきか。
でも
誰も信じてくれない。
誰も気づいてくれない。
あたしは、ほんとに導かれたんだって。
他人に疎まれる。
だから最初から、あたしの方から
皆を避けていた。
正体を明かせば、嫌そうにされるのが分かってたから。
「嘘つき」
「戯言で人を惑わす宗教過激派組織が」
「来るな」
「付いて来るな!!」
今までそうやって生きてきた。
誰も信じてくれないから、あたしも誰も信じない。
あたし
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたしは一人じゃなかった。
...。
もう一度、信じてみよう。
あたし
あたし
あたし
クリーチャー・ピアソン
ザシュッ。
ハンターが、いる。
見下ろしている。
あたし
あたし
ミスだ。
そばにパペットがあり、瞬間移動出来ることに気づいていながら
また危険に晒してしまった。
クリーチャー...
信じよう、と決めたのに。
あたしがこんなだから、誰も信じてくれないんだ。
あたし
あたし
再び風船に括りつけられるクリーチャーを呆然とみやりながら、
あたしは心から謝った。
もう、助け出せない。
クリーチャー・ピアソン
クリーチャー・ピアソン
あたし
あたし
クリーチャー・ピアソン
クリーチャーがロケットチェアに括りつけられるのを見て、やっとあたしの体が動いた。
もつれる足で、チェアから遠ざかる。
ついに。
つんざくような悲鳴が空気をビリリと裂き、
ロケットチェアが、飛ばされる音がした。
あたし
あたしは膝をついた。
仲間も守れない。
もう、信じてくれない...。
ハンターが近づく。
今まで正しいことをしてきただろうか。
そんな事を今考えても、仕方ない。
もう、遅い。
足音が近づく。
括りつけられる。
誰も来ない、よね...。
え
フレディ・ライリー
グギッ。
なにかがハンターに、体当たりした音がして、あたしは振り落とされた。
フレディ・ライリー
あたし
あたし
言いかけて、フレディの腕を見てやめた。
ラグビーボールを抱えて、満足そうに笑っている。
フレディ・ライリー
フレディ・ライリー
あたし
フレディ・ライリー
あたし
フレディ・ライリー
まだ大丈夫だ。
神はあたしを見捨ててない。
ヴーーヴーー
サイレンがなった。
フレディ・ライリー
フレディ・ライリー
あたし
あたし
ゲート目掛けて、2人で疾走する。
その前に、誰かが立ちはだかった。
あたし
あたし
フレディ・ライリー
フレディ・ライリー
あたし
フレディ・ライリー
その通りだった。
エマが、形相でこちらを睨み付けている。
その後ろには、ハンター。
あたし
あたし
フレディ・ライリー
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
ハンターが迫ってきた。
間一髪のところで、攻撃をかわす。
あたし
フレディ・ライリー
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
あたし
フレディ・ライリー
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
あたし
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマが悔しそうに下を向く。
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
あたしの祖先は、
そんな事を...。
あたし
あたし
エマ・ウッズ
あたし
あたし
あたし
そう言われて、エマがハンターを見上げる。
エマ・ウッズ
あたし
あたし
あたし
エマ・ウッズ
あたし
あたし
あたし
あたし
あたし
エマ・ウッズ
あたし
あたし
あたし
あたし
あたし
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
ハンターは無言でエマに長刃を振りかぶった。
エマの声は、届いてないようだ。
エマ・ウッズ
あたし
エマに体当たりして、ハンターの攻撃をそらさせた。
あたし
フレディ・ライリー
フレディがゲートに行ったのを確認し、エマの手を引っ張る。
あたし
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
あたし
あたし
そう言うと、エマは意を決したように、ゲートに向かって走り出した。
すでにゲートは開いており、フレディが手を振っている。
フレディ・ライリー
あたし
エマ・ウッズ
2人でゲートを駆け抜けた。
ハンターが遠のく。
そして、
また、視界が暗くなった。
衝撃のようなものが背筋に走り、目が覚めた。
硬いものの上で気を失っていたらしい。
見覚えのある場所。
正し、座っているメンツは違った。
右隣に冒険家。左隣にマジシャン。
やっぱり、ゲームはあれで終わりじゃなかった。あたし達は、何度も何度も、このゲームをさせられている。ほぼエンドレスに...。
絶望的な気持ちで呆然としていると、
右の方の椅子から、狂ったような笑い声が聞こえてきた。
エマ・ウッズ
あたし
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマ・ウッズ
エマの笑い声は、狂気的に部屋に響いた。
ほかの参加者も、何事かと不審げにそちらを見る。
エマの笑い声は、泣いているようにも聞こえた。
だんだん、意識が薄くなる。
やがて、あたしは、また深い闇の中に沈んでいった...。
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