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涙はようやく 止まったようだった
ぐしぐしと 目元を擦る音だけが
教室の隅で、微かに響く
優しく、幼子をあやすような声で そっと、問いかけた
しかし、誰も口を開かない
目も、合わせようとしてくれなかった
心の奥で、ふと ざわりとした疑念が這い上がる
────でも これ以上は問い詰めない
この静けさを 無理に壊してはいけない、と
胸の奥が、そう告げていた
すまない先生の声が上がった
その一言に 教室内の空気が凍りつく
ビクッと 生徒たちの体が反応した
目を見開き、肩が跳ね 次の瞬間には、全員が先生に集中していた
そんな呟きを残し
教卓の横をすり抜けて 教室のドアへ向かおうとする
────だが
Mr.銀さんが 慌てて前に立ちはだかる
その背後から Mr.レッドとMr.ブルーが
音もなく回り込み 左右からドアを塞いだ
苦笑いするすまない先生に Mr.銀さんが訴える
「おれ、許可してないし!」と Mr.赤ちゃんが地団駄を踏む
「通行料を貰っていない」と 何故かMr.マネーが便乗してドアに張り付いた
────その間に
Mr.ブラックはこっそり ドアの蝶番に何か細工をしていた
Mr.ブラックの声は低く 少しだけ震えていた
Mr.ブルーが叫び ドアの端を掴んで、仁王立ち
Mr.銀さんが 必死に笑顔を作った
一歩踏み出す度に 生徒達が身体を寄せて壁を作る
引っ張られた袖が伸び ロングコートの裾が握られ
遂には、Mr.バナナに がっしりと腕を固定されて
完全に 動きを封じられてしまった
────何だ、これは……
扉の前にたちはだかる皆の姿に 僕の足が、思わず止まる いつもの優しさはそこには無く まるで “何か”から必死に 僕を引き留めようとする目をしていた
……様子がおかしい そんな予感が、胸の奥に 冷たいものとして、沈む
Mr.赤ちゃんが、無言のまま 僕の袖をぎゅっと掴んでくる Mr.バナナは、銃こそ構えてないが 完全に扉の奥を“敵”として 見据えていた Mr.マネーは、一言も喋らない 声を出さないと言うよりは 出せないような…… そんな、強ばった顔をしていた
いつもと違う 明らかに、何かがおかしい でも、原因が何のか──── まるで、見当がつかない
問いかけても 誰一人として答えない
沈黙の中で ただ、視線だけが
何かを必死に 訴えかけてくる
Mr.ブラックが ゆっくりと近付いてきて
そっと、僕の手を握る
────冷たい
けれど、強い力で
「行かないで」と 言わんばかりに────
────本当に、どうしたんだ
ほんの数分 教室を離れるだけなのに……
どうして……
「永遠の別れ」のよな 空気が流れているのか────
胸の奥に 名もない“不安”が張り付く
…この子たちは 僕に何を隠してるんだ……?