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第1話 - あ

2023年10月16日

#恋愛

結城　真矢

セイカ

ケイタ、今日お弁当忘れていかなかった？

ケイタ

あ、本当だ...

ケイタ

今鞄の中見たけど、ないわ

セイカ

やっぱり...

セイカ

今どこにいる？

ケイタ

今、バス乗っててあと５分くらいで駅に着くと思うよ

セイカ

そしたら、駅で待ってて

セイカ

私届けに行くから

ケイタ

いいよ、そんなことしなくて

ケイタ

今日は会社の食堂に行くから

ケイタ

セイカ食べてよ

セイカ

え、でも私今日は時間あるし、せっかく作ったんだし

ケイタ

じゃあ、この際はっきり言わせてもらうけど...食いたくないんだよ

セイカ

え？なに？どういうこと...？

ケイタ

だから、セイカが作った弁当は食いたくねーの！

ケイタ

パサパサの卵焼きに、焦げた魚に...クオリティいつも最悪だろ

セイカ

今日は魚じゃないよ

セイカ

お肉にしたし...

セイカ

っていうか、そんな食べたくない、ってはっきり言わなくてもよくない？

セイカ

オブラートに包む、っていう言葉知ってる？

ケイタ

それは俺らの間では成立しないことだと思ってるから

ケイタ

だってさ、セイカにははっきりと言わないと伝わらないだろ？

セイカ

はっきりと言う、って言っても、言い方はもう少し優しくできるでしょ？

セイカ

例えば、焦げてたね、でもいつも作ってくれてありがとうね、とか...

セイカ

そういうことも言えないの？

ケイタ

だから、そんなこと言ってもセイカには伝わらないだろ？

ケイタ

それに、悔しい、って思った方が人って頑張れるんだよ

ケイタ

だから、俺はあえて厳しい口調で言ってんの

ケイタ

分かる？

セイカ

分かんないよ

セイカ

ケイタはいつも料理のことになると亭主関白だし、

セイカ

自分で料理もできないくせに、どうしてそんなに偉そうに文句言えるわけ？

ケイタ

だって、俺は食べる専門だから

ケイタ

料理なんてする必要ないだろ？

セイカ

そんな子供みたいなセリフを聞くことになるなんて...

セイカ

ショックだな

セイカ

私の友達の周りの旦那さんは、ちゃんと家事もやってくれるし、

セイカ

頼んでなくても気づいたら掃除とか、ご飯を炊く準備とかしてくれるのに...

セイカ

ケイタは、そういうことは一切気にかけてくれないよね

ケイタ

だって、それは主に今はテレワークしてるセイカがやる、って言ったんじゃん

ケイタ

だから、俺もお願いしたんだろ

セイカ

休日にケイタが家にいる時も、私がやらないといけないの？

ケイタ

休日は、俺もやってるよ、やれることは

セイカ

例えば？

ケイタ

例えば、先週の土曜日は床の掃除機をかけるの、やっただろ

セイカ

え？そんなことで家事やったとか思ってるわけ？

セイカ

ケイタは少し手伝っただけで、「家事やったって思ってるよね」

セイカ

それに、掃除したくらいで偉そうな顔するの、どうかと思うよ

ケイタ

別に、偉そうな顔なんてしてないだろ

ケイタ

俺は、平日は仕事で忙しいのに、もう少し休みたいところを惜しんで、

ケイタ

家のこともやってるだろ

セイカ

仕事で忙しいのは分かるけど、私も仕事してるよ！？

セイカ

テレワークで、普段は家にいること多いけど...

セイカ

営業で一日中外にいることがある日は、私だってぐったりしてるの

セイカ

ケイタは、そんなこと気にかけてないでしょ

ケイタ

そんなの、言われなきゃ分かんないじゃん

セイカ

明らかに、私が疲れてるの分かってるじゃん

セイカ

それも、見て見ぬふりするんでしょ

ケイタ

分かんねーよ、そんなの言われないと

セイカ

そういうところがいけないんだよ

ケイタ

は～もううるせーな

ケイタ

朝から気分最悪だわ

ケイタ

もう駅着くから、じゃあな

セイカ

もう、都合が悪くなったら話無理やり終わらせようとするんだから！

～その日の20時ごろ～

ケイタ

セイカ？

ケイタ

今日の夕飯は？今どこにいんの？

セイカ

この前言ったじゃん

セイカ

今日は友達と夜ご飯食べに行く予定があるって

ケイタ

は！？そんなの口で言われるだけじゃわかんねーよ

セイカ

私が口で言ったら、「分かったって返事したじゃん」

セイカ

それに、自分で作るか、食べてくるかにして、って言ったら、それにも「分かった」

セイカ

って返事してたよ？

ケイタ

そんなの、３日前とかだろ

ケイタ

前日にもう一回言ってくれないと、分かんねーよ

セイカ

どうして私がそこまで気にかけないといけないの？

セイカ

返事したから、分かってるもんだ、って普通は思うでしょ

ケイタ

セイカは俺が家事に関して気がきかないやつって思ってるんだろうけど

ケイタ

そっちこそ、重要なことはダブルチェックでもう一度言うべきだと思うぞ

セイカ

は！？知らないよ！そんなこと！

セイカ

そんなのはセルフダブルチェックで済ませてよ

セイカ

それか、私にもう一回聞くとかしたら？

ケイタ

またそうやって、俺ばっかり責めるだろ...

ケイタ

本当に思いやりがあるやつは、「私もこれからは気を付けて言うようにするねとか...」

セイカ

私にそういうことを求めるんだったら

セイカ

ケイタも私のこと小さなことで気を遣えるようになってよ

ケイタ

ああいえばこう言うで...なんか、分かりあえそうにねーな、俺ら

ケイタ

冷蔵庫の中の食材も、限られた喪にしかないし

セイカ

それだけあれば、何か作れるでしょ

ケイタ

こんな材料じゃ、本当に限られたものしかつくれねーじゃん

ケイタ

卵と、ベーコンと、野菜がキャベツ、玉ねぎ...

ケイタ

こんだけ？

セイカ

十分でしょ？

セイカ

あんまり、買い足すことしないでよ

セイカ

今あるものでご飯作るのも、節約術の1つなんだから

ケイタ

色々文句多いな...

ケイタ

もうめんどくせーから、自分の小遣いで外に食べてくるわ

ケイタ

こんなしょぼい食材じゃ、何も作れねーし

セイカ

しょぼい、って...私だって限られた予算の中で、

セイカ

できるだけバラエティー増やせれるように頑張ってるのに

セイカ

料理する大変さ、知らないでしょ？

ケイタ

だって、俺は食べる専門だから別にしなくてもいいだろ

セイカ

またそうやって...家事に線引きなんてしなくてもいいんじゃない？

セイカ

もし、私が病院に入院とかして1週間くらいケイタが家のこと1人で全部やることになったら...

セイカ

ケイタどうするの？

セイカ

どうやって生活していけるの？

ケイタ

そんなの、その時考えればいいだろ

ケイタ

それに、俺だって普段はやってないだけで家事はできるよ

ケイタ

あんまり馬鹿にするんじゃねーよ

セイカ

そんなに自信たっぷりなら、普段からやってくれればいいのに

～翌日早朝～

セイカ

ケイタ、ちょっと話があるの

ケイタ

何だよ？

セイカ

実は、私昨日の帰りに軽く事故っちゃって、

セイカ

脚の骨折、しちゃったんだよね

ケイタ

え？マジで？

セイカ

うん

セイカ

それで、1週間くらい入院することになったから、家に帰れないの

ケイタ

え？ウソだろ？本当に言ってんの？

セイカ

うん、本当だよ

セイカ

それでね、1週間の間、お義母さんに来てもらうことになったから

ケイタ

え！？母さん来るの？

ケイタ

いつから？

セイカ

今日の夕方くらいには家に着く、って言ってたかな

セイカ

でも、お義母さんも自分のパートの仕事を続けながらケイタのこと手伝う、って言ったから、

セイカ

あんまり家にはいれないと思うし、家事もそこまでできないと思うよ

ケイタ

セイカ...どうしてよりによって母さんに頼むんだよ？

セイカ

えっだって...他に頼める人がいなかったから

ケイタ

だからって、母さんに頼まなくてもいいだろ？

ケイタ

あんな口うるさい人と毎日一緒にいたら、頭おかしくなりそうなんだよ...

セイカ

いいじゃん、家事のこと色々習えるいい機会になるでしょ

セイカ

そう思って、プラスに考えてみたらいいじゃん

ケイタ

そんな簡単に考えれるわけないだろ

ケイタ

仕事も繁忙期に入るし、ほんと最悪だろ、こんなタイミングで...

セイカ

1週間後には帰れるから、それまで頑張ってね

～翌日の8時～

セイコ

ケイタ！

セイコ

朝起きたら、洗濯ものくらい干して、って言ったでしょ！？

セイコ

自分のことだけじゃなくて、人のことも考えて動きなさい！

ケイタ

そんな、俺だってこれから仕事が忙しくなるんだよ

ケイタ

毎日洗濯なんて、そんなことしてられないよ

セイコ

昨日の夜も言ったけど、母さんだってパートの仕事を続けながらこっちに来てるのよ？

セイコ

ケイタだって、もう子供じゃないんだから

セイコ

頼まれてなくても家事くらい積極的にやりなさいよ

ケイタ

もう無理だって...

セイコ

セイカさんが帰ってくるまで、まだ6日もあるのよ？

セイコ

そんな初日から弱音吐いてたら、どうするの？

セイコ

これから子供が生まれる時になって、ケイタが家事をやっていかないといけない時も出てくるの

セイコ

そんな時に、急に普段やってないことをやるより、だいぶましでしょ？

ケイタ

それは、そうかもしれないけどさ...

セイコ

そしたら、今日は母さん夜は家にいないから、夜のことは自分でやってね

セイコ

夜ご飯は作って、テーブルの上の置いておくから

ケイタ

え！？待ってよ...

ケイタ

俺、今日は残業で帰るの8時30分くらいになるんだよ

セイコ

だから、夜ご飯は作っておく、って言ってるじゃない

セイコ

後片付けくらいは、自分でできるでしょ

セイコ

いくら疲れてても、それくらいはしっかりやりなさいよ

セイコ

いいわね！？

ケイタ

分かったよ...

～翌日の昼～

ケイタ

セイカ、お前、今朝どこにいた？

セイカ

え？どこって、なんで...？

ケイタ

俺さ、今朝、駅前のコンビニの前通ったんだよ

ケイタ

そしたら、コンビニから出てくるセイカのこと見たんだけど？

ケイタ

どういうこと？

セイカ

実は...

セイカ

入院してる、っていうことはウソなの

セイカ

ごめん

ケイタ

俺のことそうやって騙して...

ケイタ

どういうつもりだよ！？

セイカ

お義母さんの提案なの！

ケイタ

は！？母さん？

セイカ

お義母さんに、ケイタは最近どう？って言われたから

セイカ

嘘ついてもしょうがないな、と思って、正直に話したんだよ

ケイタ

なんで、そんなことするんだよ

セイカ

だって、私だってケイタの家事の任せっぷりにはうんざりしてたんだもん！

セイカ

相談もかねて、お義母さんに現状を話したの

セイカ

そしたら、うちの子は口で言っても分からないから、

セイカ

セイカさんが入院した、っていうことにして無理やりケイタに家事をさせましょう、って

ケイタ

ほんと、やることがめちゃくちゃなんだよ、母さんは...

セイカ

私も、ケイタに分かってほしかったし、

セイカ

そうでもしないと家事を毎日する大変さ、分かってもらえないと思ってたから

セイカ

その作戦に乗ったの

ケイタ

ほんと、最悪すぎるだろ

ケイタ

なんで、そんな騙すみたいなことしたんだよ

セイカ

だから、口だけで言ってもきっと分からないと思ったし、

セイカ

限界まで追い込んだ方がいいかな、って...

セイカ

ほんと、最悪なんだけど...

ケイタ

っていうか、脚がなんともないんだったら帰ってきてくれよ

セイカ

あと5日間くらいあるから、帰れないよ

ケイタ

は！？なんで？

セイカ

お義母さんから言われてるの

セイカ

「もし、ケイタにばれても1週間は帰っちゃだめよって」

セイカ

一度甘やかしたらあの子すぐ甘えるから、1人でやらせなきゃダメだ、って

ケイタ

終わり、って...別にそんなことないのに

セイカ

まあ、でもそう言うことだから

セイカ

ケイタ、頑張ってね

～後日談～

セイカ

ケイタは私がいない間、へとへとになりながらもなんとか家事をマスターしたようで、

セイカ

お義母さんからの小言を嫌々に聞きながらも一生懸命やってくれました

セイカ

今まで口で注意して家事をやってもらうだけで十分だと思っていましたが、

セイカ

それはどうやら間違いだったみたいです

セイカ

お義母さんの助言のおかげで、解決できて本当に良かったです

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結城　真矢

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