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➰ ✿ nrkr
32
りおん
5,264
みかんのかんずめ
246
夜。
病院の灯りが落ち、廊下には小さな足音だけが響いていた。
🍵
すちは一人、誰もいない廊下を歩いていた。
手には古い一冊のファイル。
表紙は少し、色褪せている。
そこに書かれているのは、今の患者たちの名前ではない。
もっと古い記録だった。
🍵
ファイルを開く。
そこには、幼い頃のらんの記録が並んでいた。
『被験者番号# 100418』
『年齢# 12』
『経過______』
すちの指が、一枚の写真の上で止まる。
幼いらんが、白い部屋の中で、こちらを見ていた。
今の面影が、確かにある。
🍵
いや、
正確には、知らなかったのではない。
知らされることを、当たり前だと思っていた。
研究者として生まれ。
研究者になるために育てられ。
「患者」と「研究対象」の違いさえ、教えられた言葉の一つだった。
幼いすち
幼いすちの前には、一人の少年。
ベッドに座ったらんがいた。
幼いらん
幼いすち
幼いらん
幼いすち
幼いらん
幼いすち
幼いらん
すちはなにも言えなかった。
その言葉が、ずっと胸に残っている。
現在。
🍵
古いファイルを閉じる。
その時。
後ろから声がした。
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振り返ると、らんが立っていた。
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すちの表情が曇る。
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すちはなにも言い返せなかった。
その沈黙が、答えだった。
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すちはファイルを抱え直す。
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🍵
声が震える。
🍵
らんは拳を握りしめた。
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🍵
🌸
🍵
二人の間に、長い沈黙が訪れる。
その頃。
患者たちの病室では、こさめが眠っていた。
なつも眠っている。
けれど、いるまだけは起きていた。
📢
天井を見つめる。
今日の診察。
薬。
あの記録。
そして、すちの表情。
📢
誰にも聞こえない声。
その時。
病室の扉が静かに開いた。
📢
廊下には、誰もいない。
ただ、床に一枚の紙が落ちていた、
いるまが拾い上げる。
そこには、自分の名前。
その下に書かれていた言葉。
『追加検査対象』
📢
紙を握りしめる。
まだ、いるまは知らない。
この病院に来た理由も。
自分の出生も。
そして______
自分が、他の二人とは違う理由も。
ただ一つ。
白い廊下の奥で、誰か静かに扉を閉めた。
カチャ____
その音だけが、夜の病棟に響いた。
コメント
1件
読み終えました。今回のエピソード、すちの過去が少しずつ見えてきて胸がぎゅっとなりました……。幼い頃のらんに「治してよ」と言われて何も言えなかったすちの無力感と、今もなお同じような状況に直面しているもどかしさが、地の文からにじみ出ていて切なかったです。特に「ここから出るのが怖いんだろ」とらんに核心を突かれるシーン、すちの動揺が伝わってきてハッとしました。最後のいるま宛ての「追加検査対象」の紙と、誰かが扉を閉める音……これから何かが動き出す予感がして、続きが気になって仕方ないです。丁寧な心理描写が光る、とても好きな回でした🌷