やっと、愁斗が話し出した。
愁斗
俺、父子家庭でさ...。
愁斗
でも、お父さん、病気で...働けないんだ。
愁斗
だから、俺が稼がないと.....。
胸が締め付けられる。
史記
でも、だからって...
史記
こんな傷だらけになって...
愁斗
こういうのが趣味の人って、結構いねね。
愁斗
俺を殴る事で快感を得る人もいるの。
愁斗
だから、ちょっと痣できちゃった。
史記
ちょっとどころじゃねぇだろ...。
史記
この事、お父さんは知ってるの?
愁斗
言える訳ないよ。
愁斗
これは、俺が勝手にやってるだけ。
愁斗
だから、お父さんの事は責めないで。
史記
責めないでって...。
史記
こんな事までして、お金を稼いで、お父さんが喜ぶとでも思ってんの?
愁斗
でも.....これが1番稼げる方法なんだ。
史記
そうかもしれないけど...。
史記
こんなの絶対間違ってるよ...。
愁斗
ふみ君には分かんないよっ!
愁斗が声を荒らげる。
俺は愁斗を思って言っているのに、何も伝わっていない。
そう思うと、より拳に力が入った。
史記
あぁ、分かんねぇよ!
史記
俺は、親に見捨てられてるからな!
史記
家族の為にこんな事までする愁斗の気持ちなんて分かんねぇよ!
史記
でもな、大切な人がこんな事までして自分のためにお金を稼いでるって知ったらどう思うかは分かるよ!
史記
愁斗のお父さんがこの事を知ったらどう思うか、俺には分かる!
大切な人が、こんな目に遭ってるなんて知ったら...
愁斗
分かるわけないよ!
愁斗
お父さんは、俺の事邪魔でしかないんだからっ!
史記
えっ.....。
意味が理解できなかった。
史記
どういう事.....?
しまった、というような顔をして俯く愁斗。
史記
愁斗の事が、邪魔...?
史記
なんで....。
少しして、全てを諦めた様に喋りだした。
愁斗
本当は、これ、お父さんにやられた傷なんだ...。
全身の力が抜ける。
史記
そんな.....。
愁斗
ごめんね、嘘ばっかりで...。
愁斗
弟にまで手を上げ出す前に、逃げたいんだ。
愁斗
弟だけは、何としても俺が守ってあげなきゃいけない。
愁斗
その為には、お金が必要なんだ。
愁斗
...ごめんね。
静かに涙を流しながら謝る愁斗。
こんな事...。 なんで、愁斗ばっかり...。
史記
何も知らなくて...
史記
俺、酷い事しちゃった...。
史記
ごめん...
ごめんっ、愁斗...。
ごめんっ、愁斗...。
愁斗
謝らないで。
史記
もっと冷静に、愁斗の話を聞いてあげれば良かった。
史記
気づいてあげられなくて、ごめん...。
愁斗
お願いだから、ふみ君は謝らないで。
愁斗
気づかれないようにしてたのは、俺の方だし。
俺は、なんて事をしてしまったのか。
助けを求めていたかもしれないと、冷静になった時にそう思ったのに。
結局感情に任せて...愁斗を傷つけてしまった。
こんなの本当にアイツら汚い人間と同じじゃないか。
静かに涙を流す愁斗をそっと抱きしめたい。
でも、今の俺にはそんな資格なんてない。
史記
でも、このままじゃダメだよ...。
史記
今から、一緒に警察行こ?
俺だけの力じゃ、愁斗を助けてやれない。
こんなに傷だらけの愁斗を見て、お金が貯まったらなんてそんな悠長な事も言ってられない。
そんな思いとは裏腹に愁斗は悲しく笑った。
愁斗
これでも、俺たちにとってはたった1人の父親なんだ。
また、何も言葉が出なかった。
だから、嘘をついたのか。
嘘をついてまで、お父さんを守ろうとしたんだ。
愁斗
大人の力を借りれば、解決するかもしれない。
愁斗
でも、父親が犯罪者になるなんて、俺はそっちの方が耐えられないよ。
愁斗
.....ごめんね。
乱れた服をなおし、頬を伝う涙を拭いた。
愁斗
全部、話してもいい?
その言葉に、俺は静かに頷いた。






