ある日の休み時間 私はいつも通り本を読んでいた
上野 りんご
(やっと休み時間だ〜。
本の続きが読める!)
本の続きが読める!)
それから3分後。 カサっという音と共に、目の前の本が消えた。 顔を上げると、クラスでいちばん人気のある山井くんがいた。
山井くん
あの。
上野 りんご
はい・・・
(私は本が目の前から消えたことに驚いて、虚ろな返事になってしまった。)
(私は本が目の前から消えたことに驚いて、虚ろな返事になってしまった。)
山井くん
上野さんだよね?
上野 りんご
はい。
山井くん
今まで話したいと思ってたけど本読んでたから。
あと半年でこのクラスも終わりだからさ。
ごめん。本、びっくりしたよね?
あと半年でこのクラスも終わりだからさ。
ごめん。本、びっくりしたよね?
上野 りんご
いえ、大丈夫です。
山井くん
良かったー。
これで嫌われたらどうしようかと思った。
これで嫌われたらどうしようかと思った。
上野 りんご
あの、どうして私なんかに話しかけてくれたんですか?
山井くん
ああ。
クラス全員と話したいなー、と思って。
ごめん。もうチャイムなっちゃうね。
またね!
クラス全員と話したいなー、と思って。
ごめん。もうチャイムなっちゃうね。
またね!
そうして、授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。 その日は、それ以降話しかけてくれることは無かった。
次の日、本を読んでいると、また視界が明るくなった。
山井くん
おはよう。上野さん。
また本読んでるんだ。
本好きなの?
また本読んでるんだ。
本好きなの?
上野 りんご
はい。
小さい頃から本が好きで。
小さい頃から本が好きで。
山井くん
そうなんだ。
俺はそんなに読まないかなぁ。
なんか、文字読んでると、眠くなっちゃう。
俺はそんなに読まないかなぁ。
なんか、文字読んでると、眠くなっちゃう。
上野 りんご
そうなんですか?
私はその逆です。
本を読むと目が覚めます。
私はその逆です。
本を読むと目が覚めます。
山井くん
そっかぁ。
なんか羨ましい。
てか、昨日から思っていたけど、なんで敬語なの?
距離遠い(笑)
ごめん。またチャイムなりそうだね。
なんか羨ましい。
てか、昨日から思っていたけど、なんで敬語なの?
距離遠い(笑)
ごめん。またチャイムなりそうだね。
それから毎日、山井くんは話しかけてくれた。 私は山井くんにだけは警戒心が無くなっていた。
山井くん
いつも思ってたけどさ、昔からずっと休み時間に本読んでるの?
友達とか作らないの?
友達とか作らないの?
上野 りんご
今まで友達はそんなに作ったことありません。
私なんか、って思っちゃって、話しかけるのを躊躇しちゃうんです。
だったら大好きな本を読んでいた方がいいなって。
そのまま来て今に至ります。
私なんか、って思っちゃって、話しかけるのを躊躇しちゃうんです。
だったら大好きな本を読んでいた方がいいなって。
そのまま来て今に至ります。
山井くん
そうなんだ。
友達欲しいとか思ったことないの?
友達欲しいとか思ったことないの?
上野 りんご
羨ましいとは思ったことありますが、欲しいとは思いません。
本があるので
本があるので
山井くん
じゃあどんな感じの友達が欲しいとかあるの?
上野 りんご
私、我儘なので、それに付き合ってくれて、明るくて、
こんな私のことをありのまま受け入れてくれるような子がいいです。
こんな私のことをありのまま受け入れてくれるような子がいいです。
山井くん
分かった。
りんごちゃんはさ、
りんごちゃんはさ、
上野 りんご
え?
山井くん
ん?
上野 りんご
今、名前で・・・
山井くん
ごめん。
嫌だった?
嫌だった?
上野 りんご
嫌じゃないです。
でもなんで急に・・・
でもなんで急に・・・
山井くん
嫌じゃないんでしょ?
だったらいいじゃん!
友達でしょ?
だったらいいじゃん!
友達でしょ?
上野 りんご
友達・・・ですか?
山井くん
うん!
だってさっき友達に欲しい子のタイプ言ってたじゃん!
今まで友達いなかったんだったら、俺が友達第1号になりたいなーと思って。
だってさっき友達に欲しい子のタイプ言ってたじゃん!
今まで友達いなかったんだったら、俺が友達第1号になりたいなーと思って。
そう言って白い歯を見せて、ニコッと笑う山井くん。 それを見た瞬間、自分の心臓がうるさいくらいに鳴り出す。
上野 りんご
うん!
私なんかでよければ!
私なんかでよければ!
本の世界じゃなく、現実の世界で 初の友達、初の好きな人が出来ました!