コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
久留間悟
布がほどけるような音が聞こえ
コウモリは飛膜が落ちるように人の姿に変わっていく
やがてすべての変化が終わるとそこには
小ぶりな胸元を大胆に晒した、小学生ほどの少女が立っていた
サキュバス
サキュバス
サキュバス
機嫌よさそうに舞い降り、腕に絡んでくるその手から
するりと避けて手を振る
久留間悟
久留間悟
久留間悟
サキュバス
サキュバス
サキュバス
サキュバス
久留間悟
久留間悟
久留間悟
久留間悟
サキュバス
サキュバス
久留間悟
久留間悟
久留間悟
サキュバス
サキュバス
声が弾け、歩き去ろうとしている久留間の手をサキュバスが取る
撥ね付ける暇もなく長い爪が手首の薄い皮を引っ掻くと
赤い唇が弓なりに歪んだ
サキュバス
サキュバス
手を奪い返し、はっきりと警戒を示して眉根を寄せる
掻かれたそこは、ミミズ腫れのように赤い筋になっていた
久留間悟
サキュバス
サキュバス
久留間悟
サキュバス
サキュバス
久留間悟
久留間悟
サキュバス
口調とは裏腹に、楽しげに幼い足が宙へと踊る
はっきりと距離が開いていく不自然さに、久留間は片眉を上げた
久留間悟
久留間悟
サキュバス
サキュバス
サキュバス
白昼堂々、少女が空を駆けていく。
いくらなんでも大胆すぎると思ったが、誰も反応する様子がない
もしかしたら人に変化してからは見えることのできる人間以外
彼女を認識してすらいないのかもしれないと考え直した
世間と自分の見ている世界の差が掴めず
足下が危うい感覚は久し振りだとこめかみを押さえる
生死者の区別が曖昧な自分にとって
これを隣で補正してくれる存在はいつでも一人だけだった
久留間悟
久留間悟
今晩は久し振りの自宅でゆっくり休めるようにと
来訪を遠慮する旨のメールが朝一で届いている
なんだかんだ言いつつ心配してくれていることは嬉しいものの
できれば今日は傍にいて欲しかったなと肩を落とした
手首のミミズ腫れが、じんと熱を持つ
翌日、カタヅケ屋本舗
渋谷恋しさに珍しく一番に出社した久留間は
わずかな背中の引き攣りも気にすることなく
笑顔で業務準備を進めていた
各机を拭き掃除して回る姿に
ひときわ大きな机に掛けた好々爺は頷く
本田芙蓉
本田芙蓉
本田芙蓉
本田芙蓉
ポスト
ポスト
本田の気遣いを、周囲を浮遊して回っていたポストが茶化す
それを耳にし、久留間はにっこりと引き出しに手を掛けた
久留間悟
久留間悟
久留間悟
ポスト
ポスト
ポスト
わめき騒いぎながら逃げるポストに
ふんと鼻息を吐き出し、言ってやったと胸を張る
確かに普段より疲れやすいが
基本的に座り仕事ばかりの業務は疲労も軽い
なによりようやく元の生活に戻れる嬉しさに
鼻歌すら漏らしながら渋谷の机に雑巾を掛け終わった時だった
渋谷大
久留間悟
久留間悟
喜色満面で振り返った久留間とは対照的に
渋谷の表情はひどく暗い
胸元を押さえて息も上がっているその様子を見て
久留間ばかりでなく本田も立ち上がった
本田芙蓉
本田芙蓉
久留間悟
久留間悟
渋谷大
はぁと大きく息を吐き出し
少しはマシになった様子で崩れるように椅子に腰を下ろす
渋谷大
渋谷大
渋谷大
渋谷大
脂汗を浮かべて辛そうに助言を求める渋谷に
本田の目がチラリと久留間の右手を見る
不安げに渋谷に駆け寄るその手首から、ふわりと呪いが香っていた