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西暦2200年代

犯罪を取り締まる警察は、9割以上の人間がSECONDと呼ばれる身体能力の高い者たちであった

連続殺人犯

ったくその程度かよ

連続殺人犯

それでもお前らもSECONDなのか?

連続殺人犯

笑いが止まらないな!

乗用車を超える速度で街を逃げ回る男がいた

連続殺人の犯人だ

SECONDの中でもエリートの部類に入る特殊部隊が確保の為追っている

警察官1

くっそ…どんだけ速いんだよ!

警察官2

SECONDの中でもかなり速いよね

警察官1

お前だって速い方だろ?

警察官2

うん、まぁね

警察官1

だったら速く負え!この二つ先の路地裏は行き止まりだ!

警察官2

おいつめるんだね、了解!

SECONDの奴らが二手に別れて走っていった

近くの交番でその様子を見ていたロゲインは軽く溜息をつき、淹れたてのコーヒーを口の中に流し込む

ロゲイン

何だよ…巻き込みやがって

路地でやり合うなら交番勤務のロゲインも一応犯人逮捕に連れ出される可能性が高い

SECONDの犯罪者なんて勝てるはずがない

FIRSTの中では武術において優秀なロゲインでもSECOND相手なら子どもにだって勝てない

それだけ力の差があるのだ

ロゲイン

どうせなら俺もSECONDに生まれたかったなー

そう文句を垂らしながらロゲインは立ち上がり、巡回という名の散歩へ出かけて行った

同時刻

警察官2

追い詰めたわよ!連続殺人犯!

警察官1

あまり実力行使はしたくねぇから大人しくこちらに来い

連続殺人犯

悪いけど、断る

警察官2

ならば実力行使ね!

少年の様な顔立ちの女性警察官がスタンガンを構える

被弾すると、体に電流が流れる仕組みだ

連続殺人犯

おまえら、こんなんで俺を追い詰めたと思ってんのか?

警察官2

何が言いたいのよ!

連続殺人犯

角に追い詰めたって、何にも変わんねぇんだよ!

連続殺人犯は飛び上がり、警察官の背後に回る

警察官2

しまった!

連続殺人犯

それじゃあ、またな

再び乗用車超えのスピードで走り出した

警察官1

近くの交番のやつに頼みに行くか

警察官2

駄目よ、ここの交番の人はFIRSTなんだから!

警察官2

早く追うよ!

警察官1

旧人類の役立たずが

ロゲイン

そういや犯人…まぁSECONDの連中に任せときゃ大丈夫か

そう呑気に構えていると、何かが猛スピードで走ってくるのが見えた

その奥から警官っぽいのが走っている

何となく直感した

SECONDの連続殺人犯だ

ロゲイン

嘘だろ

このままでは危ない

捕らえようとすれば死ぬ

しかし、このまま逃げれば後で特殊部隊からなんと言われるか

なら、どうするべきなのだ?

分からない

けれど、アイツを止めなければ

自分は永遠に旧人類FIRSTのままだ

ロゲイン

来いよ…殺人犯!

ロゲインは、腰にさしてある警棒を抜く

上手くいくか怖い

けれど、止めなければならない

警察官2

そこの人、逃げてください!

警察官1

FIRSTが!早く退け!

五月蝿い!

高く飛び上がり自分に伸し掛かろうとしている殺人犯の腹部を警棒でつく

速すぎて何も見えなかったが、恐らく上手くいった

連続殺人犯

がはぁ!

肺から空気が押し出されたのだろう

苦しそうな声を出して犯人は尻餅をついた

連続殺人犯

てめぇ…何しやがる!

ヤバイ掴まれる

そう思った時、犯人にスタンガンのスパークが駆け巡った

連続殺人犯

…許さねぇから…な

犯人が警棒を掴む

ロゲイン

あーー!

全身に電流が流れる

SECOND用のスタンガンは通常のものより電圧が大きい

普通の人間が喰らえば麻痺するくらいだ

警察官2

しまった!

警察官1

お前何やってんだよ!

警察官2

流石にあれは予想外で……

警察官1

取り敢えず被疑者捉えて病院に電話しろ

警察官2

えっと了解!

そのやり取りを最後に

意識が途切れてしまった

ロゲイン

ンンン……

フレッド

大丈夫?

目を開けると、昼の路地裏だった

長時間気を失ってたのかとも思ったが、どうやら違うように感じられる

この路地の感じ…凄く違和感があるからだ

取り敢えず、自分に声をかけてくれた人に目を向ける

歳は確たる証拠は無いが、同じくらいに見える

ロゲイン

ああ、有難う

フレッド

君、警察官ならこんな所で寝てない方が良いんじゃない?

フレッド

俺が居なかったら今頃君命ないよ?

ロゲイン

そうなのか……

呆然としたまま起き、立ち上がる

ロゲイン

で、ここは何処だ?

フレッド

ここ?世界一の無法地帯さ

フレッド

警官なら、絶対に近付いちゃいけないって習う筈だけどね?

そう言うと目の前と青年は手首を掴んできた

振りほどこうにも全く振り解けない

そのまま手首を捻られ、地面に叩きつけられる

フレッド

で、俺はここでリーダーの様なものをやってるフレッドだ

フレッド

フレッド・マッカーティーって言えば、誰でも分かると思うよ

ロゲイン

フレッド・マッカーティー!?

この時代の人なら誰でも知っている

人類最初のSECONDだ

持ち前の頭脳と他者の追随を許さない怪力で

国の機能を完全に落とした犯罪者だ

そんな奴がどうしてこんな所にいるのだろうか

ロゲイン

なぁ、今は西暦何年だ?

フレッド

今そんな事聞く?

フレッド

君はこれから死ぬのに?

ロゲイン

ああ……教えてくれ

フレッド

良いよ

フレッド

今は西暦2043年

フレッド

日付は5月10日だ

ロゲイン

2043年…150年も、前じゃねぇか

ロゲイン

それと、お前今日が誕生日だろ?

ロゲイン

良かったな

どうしてこんなことを言っているのか分からない

しかし、それくらいしかかける言葉が無かった

フレッド

君、僕の誕生日知ってるの?もしかしてファン!?

別にそうでは無いが取り敢えず頷く

すると、フレッドは上機嫌になり

フレッド

だったら早く言ってくれよー!

フレッド

殺しちゃう所だったじゃないか

フレッドは掴んでいた手首から手を離し、手を差し伸べてきた

ロゲイン

悪ぃわりぃ

フレッドの手を取り、ゆっくりと立ち上がる

フレッド

君、名前は?一体どこから来たの?

ロゲイン

俺はロゲイン・ダレスだ。2202年から来た

フレッド

2202年!?そんな未来にもファンがいるのか!?驚いたよ

ロゲイン

待て待て待て、どうして俺が150年先の人間である点に驚かないんだお前は

フレッド

だって、事実だろう?それが

フレッドの深海のように青い瞳に、ロゲインは全てを見抜かれている気がした

フレッド

驚いてるね、無理もないさ

フレッド

君の瞳孔の動き、手の水分の分泌量、そして声のトーン

フレッド

注意深く聞けば真実か嘘かくらい簡単に見分けられる

流石世界一の犯罪者だ

彼を抜く者は後世になっても現れないだろう

ロゲイン

記録の通りお前は凄いな

ロゲイン

正直驚いてる

フレッド

ありがとな!折角君が未来から来たなら聞きたいことがあるんだけど…

フレッドが続きを言おうとした時、不意にフレッドの携帯が鳴った

フレッド

もしもしー

かなり旧式の携帯をとり、フレッドが何か話す

フレッド

うん、うん

フレッド

えーまた?

フレッド

別に良いけどさ

フレッド

今から行くよ。ちょっと待っててくれ

フレッドは通話を終了させると、ロゲインの方へ向き直り

フレッド

ちょっと依頼が入っちゃったから、行ってくるよ

ロゲイン

依頼?

フレッド

うん、ここの連中の密売組織を潰そうとしてる奴らを軽く捻ってくるだけ

フレッド

君も来るかい?僕のファンなんだろ?

密売組織くらいなら相手にした事はある

それにこの時代なら、まだ何か出来るかもしれない

そんな希望が、俺の結論を一つに絞った

ロゲイン

ああ、是非行きたいな

フレッド

それじゃ、着いてきてくれー!

ロゲイン

おう

フレッドの後ろについて、暗い路地裏を歩き始めた

密売組織建物のかなり近くまで来た

こういう時が一番緊張する

フレッド

話によると、ここみたいだけど

フレッド

突入するのは面倒だなー

ロゲイン

だったら俺が行く。お前は後で入ってくれば良い

フレッド

うーん、それもなかなか悪くはないと思うよ?

フレッド

けれど、君に出来る?そんな勇気の要る事

ロゲイン

馬鹿にすんなよ、俺はこれでも警官だ

フレッド

そんなに緊張してるのに、君が突入出来るのかい?

フレッド

その状態じゃ難しいと思うよ?

ロゲイン

…うるせぇ!俺に不可能なんてねぇんだよ馬鹿!

フレッド

はいはい落ち着いて、足が震えてるよ

ロゲイン

うう…分かってんだよ、そんな事

指摘された途端、身体中から力が抜ける

本当は分かっている

自分はどうしようもなく弱虫で、圧倒的な力の前で殺されるのを恐れている

SECONDに、警棒で立ち向かった時でさえ怖くてたまらなかった

そのまま膝から崩れ落ちる自分の前にフレッドはしゃがみこみ

フレッド

怖がる事は別に悪い事じゃない

フレッド

その様子だと、君は恐怖に立ち向かってここに来た

フレッド

無理に変わる必要なんてない

フレッド

待ってて、軽くやって来るから

ロゲイン

嫌だ!

ロゲインは、フレッドに向かって思いっきり叫んだ

望んでもいないのに涙が溢れ出す

フレッド

それじゃあ、君も突入する?

ロゲイン

当然だ

ロゲイン

俺は警察官だ、恐れるはずがない

フレッド

分かった、さぁ行こう

ロゲイン

そうだな

建物内部では、銃撃戦になっていた

密売人A

くそっ!

密売人A

俺らが何したってんだよ

フレッド

大丈夫かい!

扉を無理矢理こじ開けて侵入するフレッドにロゲインも続く

密売人A

フレッドさん!頼むから助けてくれ!

内部の惨状は酷いものだった

襲撃者達と密売業者の死体

よく見えないがまだ数人が撃ち合ってるのがわかった

右手前の物陰に一人、左奥に二人いる

対して密売人は声を上げた一人と、ロゲインのすぐ側で布で身を隠している人だけだ

フレッド

よし、今から行くよ

フレッド

それじゃあ、君は下手に動かないようにね

フレッドはさらっとそう伝えると、奥へ消えて行った

ロゲイン

何が下手に動かないようにねだ

ロゲインは腰から拳銃を抜く

警棒は未来に落としてしまったらしい

壁に沿って歩き、襲撃者のいる物陰に接近する

まだ気付かれてはいない

ロゲイン

ここからならギリギリ狙えるか

なにかのハーブの箱の後ろに隠れている襲撃者の頭が少し見える

失敗すれば撃たれてしまうかもしれない

しかし、今はフレッドがいる

まだ知り合って少しなのに不思議と彼を信頼してしまう

それだけ、人を信頼させる何かを持った人なのだ

ロゲイン

覚悟しろ…

深く深呼吸をし、ゆっくりと引き金を引く

乾いた発砲音と共にどさりと人が倒れる音がした

ロゲイン

フレッド、大丈夫か!?

走ってフレッドのいた方まで行ってみると、銃撃戦は終わっていた

フレッド

早かったね、お疲れ様

ロゲイン

もう、二人も殺したのか

フレッド

うん、そうだよ

近くには二人の人間の死体が転がっている

おそらく、一人は腹部に強い衝撃を受けた事による内臓の損傷

もう一人は首を絞められた事による窒息死だ

ロゲイン

別に俺がいなくっても良かったかもな

フレッド

いや、あの隠れてたやつを殺す手間が省けたよ

フレッド

ありがとう

ロゲイン

……別に、気にすんなよ

密売人A

えっと……あのー?

フレッド

ああ、君大丈夫だったかい?

フレッド

怪我は?

状況を察したのか布で隠れていた奴も出てきた

密売人A

俺は…大丈夫です

密売人A

多分、あいつも

もう一人も大丈夫なのか頷いていた

密売人A

けど、そちらの方は……?

密売人B

フレッドさん、裏切ったんですか?

ロゲイン

俺?俺がなんなんだよ…

フレッド

あー、彼?

密売人A

はい…

フレッド

彼はロゲイン・ダレス

フレッド

僕の相棒だ

ロゲイン

え?あ、ああ。そういう事だ

フレッド

今日は潜入調査帰りでこんな格好してるけど、悪いやつじゃないから覚えてやってくれ

密売人B

そういう事だったんですね、ヒヤヒヤしました

密売人A

分かりました、ダレスさんもありがとうございます

ロゲイン

あー…気にすんな

その後、未来に帰れる気もしなかったから、仕方なくフレッドの家に泊めてもらう事にした

ロゲイン

なんか悪いな、迷惑かけちまってさ

フレッド

気にしないで。今日は手伝って貰っちゃったし

フレッド

ちゃんと未来に戻れるまで、君は僕の相棒だからね

ロゲイン

ああ…って待てよ!いつから俺は相棒になったんだ!

フレッド

あれ?今日話したじゃん

ロゲイン

あれ本当の話だったのかよ

フレッド

うん、だって君あのままなら誰かに殺されてたと思うし

フレッド

ここの連中は警官は嫌いだからね

ロゲイン

反論出来ねえのが辛いな

フレッド

とはいえ、君がちゃんと帰れる様に研究してみるよ

ロゲイン

良いのか?

フレッド

勿論、嘘でも僕のファンって言ってくれたしね

やはり見抜かれていたか

確かにあの時は生き残る為に言った嘘だ

しかし、今は……

ロゲイン

嘘じゃねえよ

フレッド

そうだったのかい?嬉しいなぁ

きっと言葉の意味は分かってくれた筈だ

そう願いたい

フレッド

まぁ、取り敢えず

フレッドは近くのタンスを指して

フレッド

あそこに服ならあるから、テキトーに着替えて

ロゲイン

良いのか?お前の服だろ?

フレッド

良いよ、多分サイズ合うと思うし

フレッド

洗濯はちゃんとしてるからね

確かに、フレッドの方が少し背が高いくらいであまり差はない

フレッド

それにその服は目立つから

フレッド

食事用意するから早く着替えてくれ

ロゲイン

あ、おう

全く嬉しくないが、フレッドの服は殆どサイズぴったりだった

ご丁寧に拳銃を入れるベルトまである

ロゲイン

まぁ…こんなもんか

拳銃をさして、鏡の前に立ってみる

フレッド

へぇーなかなか似合うじゃん

いつの間にかフレッドが後ろから覗きこんでいた

ロゲイン

い、いつからそこに居たんだよ!

フレッド

さっきからずっとさ

フレッド

気配を消すのは得意だからね

フレッド

取り敢えず、ご飯食べよ!

用意されたいたのはパンとスープだ

ここ数年間、栄養ブロックが食事だったから驚いている

ロゲイン

こんな良いもの…食って良いのか?

フレッド

良いものって…何処にでも売ってるよ。これくらい

昔は栄養固形食がここまで発達してなかったから、殆どが通常の食べ物で栄養を摂っていた

知識としては知っている

ロゲイン

そう…だよな

フレッド

うんうん

フレッド

ところで、君はどうやってこの時代まで来たの?

ロゲイン

えっと…それはな

信じてくれるかは分からなかったが、ロゲインは今までの経緯を話した

フレッド

なるほどねー

フレッド

君、凄いじゃん!その、SECONDとかいうのに勇敢に立ち向かったんだろう?

ロゲイン

なんか、やらなきゃいけないって思ったんだ

ロゲイン

そうしないと、死んじまう気がしてな

フレッド

にしても不思議だなぁ…電気ショックでタイムスリップ出来るのかなー

ロゲイン

俺は馬鹿だから分かんねえな

フレッド

可能性としては、高電圧の電気ショックで時空が歪んだ…かな

フレッド

でもそれだと肉体ごと転移は無理か…

フレッド

君、体のどこかに違和感無い?

ロゲイン

はぁ!?どうしてだよ

フレッド

可能性として、君の意識がこの時代の他人の死体に乗り移ったってのもあり得るかなーって思ったんだ

ロゲイン

何だよそれ!気持ち悪りぃ

フレッド

ごめんごめん、言ってみただけだよ

フレッド

未来人の口に合うかは分からないけど、是非食べてみて

いつの間にか食事を済ませていたフレッドはそう言い、キッチンへ去っていった

スプーンを手にとり、スープを飲む

ロゲイン

これ…

栄養固形食は殆ど味がしない

それに対してこのスープは味がある

それだけで嬉しいと思った

こんな事を思う自分はきっと、この時代では

貧しい人なのだろう

フレッド

Hey!ロゲイン!

ロゲイン

何だよ…まだ朝の五時じゃねぇか

フレッド

依頼さ!君と僕にね

ロゲイン

依頼…俺にもか?

フレッド

勿論!君は優秀だって思うからね

ロゲイン

んだよ嫌味か?

フレッド

いいや、事実さ

フレッド

僕はあまり嘘はつかないからね

ロゲイン

なるほどな

フレッド

さ、早く着替えて仕事仕事ー!

フレッドは手に持っていた服をロゲインの方に投げつけると、リビングの方へ去っていった

ロゲイン

まだ俺は眠ぃんだよ

あの日から数週間

ロゲインはしっかりフレッドの相棒として定着している

実際フレッドとの仕事はなかなか悪くないし、警察だった頃より充実している

ロゲイン

まぁ、この仕事もなかなか悪くないかもな

唯一未来から持って来る事に成功した拳銃をベルトにさす

昔からだが、こうするとやるぞって気持ちになる

ロゲイン

今日も生きて帰れますように!

ロゲインはそう叫ぶと、リビングへの扉を開けた

フレッド

おはようロゲイン、これ食べて

フレッドがパンを渡してくる

毎朝食ってるが、すごく美味い

ロゲイン

やっぱ美味いな

フレッド

安物だけどね

ロゲイン

で、今日の依頼内容はなんだ

フレッド

この辺りで活性化してる組織の弾圧さ

フレッド

ここの覇者は僕達だけで十分だからね

ロゲイン

敵は?強いのか?

フレッド

全然

フレッド

僕が先陣を切るから、君は援護射撃をしてくれれば良い

フレッド

君の援護は正確で、後始末の手間が省けて嬉しいよ

ロゲイン

馬鹿にすんなよ

ロゲイン

俺はただの素人だ

フレッド

自分を過小評価しすぎないほうがいい

フレッド

さぁ、任務だ

フレッド

やぁ君達

敵組織人1

なんだよテメェ

フレッド

ここら辺で僕らの同胞をやって覇者狙ってるってホントー?

フレッド

流石に最近は目に余るなぁ

敵組織人1

仮にそうだとして、テメェに関係あるのかよ!

敵組織人2

なぁ、こいつらやっちまおうぜ

敵組織人1

言われなくてもそうする気さ

連中の一人がフレッドに殴りかかる

フレッド

遅いよ?君

しかし、フレッドは難なく拳を止めて力を込めていく

敵組織人1

ぐ…あああ!

フレッド

どうしたんだい?さっきまでの威勢はどこにいっちゃったのかなー?

敵組織人2

お、おい!大丈夫かよ?

仲間に駆けよろうとする奴に、ロゲインは銃を向ける

敵組織人2

ヒィっ!

ロゲイン

動くな。動けば撃つぞ

敵組織人3

なんの騒ぎ?

敵組織人4

何が起きてんだよ

フレッド

おおーみんな集まってきたね

ロゲイン

そうだな

フレッド

どうする?自己紹介する?

ロゲイン

してもいいんじゃないか?

フレッド

そうだね

フレッド

やぁ!僕はフレッド・マッカーティ

フレッド

ここ一帯の、支配者さ

たったそれだけの言葉で、辺りが凍りついたのを感じた

敵組織人3

ねぇ、これヤバイんじゃない?

敵組織人4

となるともう一人はロゲイン・ダレスだ!

敵組織人4

逃げるぞ!

フレッド

ロゲイン、やっちゃえー

フレッドが捉えていた奴の腹を蹴ると同時に、ロゲインは、三人に向かって発砲した

フレッド

じゃあ、残党を追いかけるよ!

ロゲイン

了解

それから1時間もしないうちに、敵に生存者はいなかった

フレッド

お疲れ様、良い働きだね

ロゲイン

…ありがとな

フレッド

今まで仲間なんて要らないと思ってたけど、今は君がいてくれてよかったって思うよ

ロゲイン

奇遇だな、実は俺もだ

ロゲイン

誰かに必要とされるなんて生きてて初めてだからな

フレッド

SECONDだっけ?君たちの世界を少数で支配してるってのは

ロゲイン

ああ、俺の住んでる国も其奴らが主権を握っている

ロゲイン

奴らは…俺たちFIRSTを、見下してんだ

フレッド

それは酷い

フレッド

SECONDはFIRSTを基にして生まれてきた

フレッド

先祖に敬意を払わないなんて、人間のクズだね

ロゲイン

そう…だな

お前がいるからこんな世界になったんだとは、不思議と言えなかった

フレッド

そんな未来しかないんだったらさ、俺が変えてあげるよ

そう言うフレッドの姿は、到底犯罪者には見えなかった

ロゲイン

今…なんて

フレッド

そんな未来は糞みたいだから、俺が変えるのさ

フレッド

さぁ、ここ150年の歴史を教えてくれ

フレッド

君が帰りたくなる様な未来を作ってあげるよ!

それからの計画は、どんどん進んで行った

フレッド

なるほどー

フレッド

僕は捕まっちゃうのかー、残念だなぁ

ロゲイン

お前が捕まって、秘密裏に遺伝子の研究をされたんだ

ロゲイン

人類がお前並みの力と頭脳を持てば、敵なしとでも考えたんだろ

フレッド

けど、僕の遺伝子を適合させられるのは地球人口の22パーセントしかいなかったんだね

ロゲイン

そうだ

フレッド

じゃあ、僕が捕まらなければ遺伝子も研究されなくて済むね

フレッド

ついでにこの国の個人情報ばら撒いとこっか

ロゲイン

何でだよ……

フレッド

それで、国家機能を落としてその後僕が、正義のヒーローみたいに国家機能を回復させるんだ

フレッド

そしてこの国を戻して政府に接触して、内部からこの国を変えていく

フレッド

こうでもしないと、歴史は変えられない

ロゲイン

しかし、そうするとお前が政府に接触してしまう

ロゲイン

SECONDが造られてしまうかもしれない

フレッド

じゃあ、君が回復したことにすれば良い

ロゲイン

俺にはこの時代の戸籍はねぇんだ!到底無理だろ

ロゲイン

それにお前は手柄を横取りされる事なるんだ、良いのか!?

フレッド

良いよ

その言葉は、あっさりとフレッドの口から放たれた

ロゲイン

なっ……

フレッド

僕の目的は君を未来に返す事だ

フレッド

手柄が欲しいわけじゃない

フレッド

後、戸籍はハッキングして加えておくし、君が未来に帰ったら君は死んだ事にしておくよ

ロゲイン

俺なんかの為に良いのか

フレッド

大事な仲間が困ってるんだから、当たり前さ

「それじゃあ、またね」と言ってもフレッドは自室へと帰って行った

ロゲイン

俺、本当に帰りたいのか

最近ずっと考えている

最初はこんな犯罪者の生きてる時代嫌だと思ったが、今考えると飯も美味いしSECONDもいない

よく考えたら楽園ではないか?

けれどフレッドはロゲインを未来に戻そうと頑張ってくれている

一体どうしたら良いのだろうか

考えても答えは出ない

二ヶ月後

あれから、どんな依頼だってこなしてきた

いつしか、フレッドは必要不可欠な存在になっていた

しかし今日は決行日

歴史改変の為に政府のコンピュータをハッキングし、ロゲインに高圧電流を流してタイムスリップをさせる

どちらも成功率は高くないが、やるしかないのである

ロゲイン

今まで世話になったな、ありがとう

フレッド

僕の方こそ、君に会えてよかった。ありがとう

フレッド

…さぁ、情報読み取り用のウイルスを発動させるね

フレッドがコンピュータの難しそうな画面を確認したのち、enterと書かれたキーを押した

フレッド

このシステムを落としてしまえば、研究系もストップする筈だよ

フレッドは難解そうなプログラミング言語を網膜に映しながら説明する

フレッド

あと、多分君が帰っても僕はいないと思う

フレッド

冷凍保存技術は開発成功するけど、僕みたいな犯罪者は使えない

フレッド

それに人間の寿命を引き延ばすのも先になりそうだ

フレッド

どうやら一生の別れになりそうだね

フレッド

さようなら

ロゲイン

……待ってくれ!

フレッド

どうしたの?今更怖くなった?

フレッドは振り返らずに尋ねる

ロゲイン

俺…本当は、未来に戻りたくない

その時、初めてフレッドは振り返った

フレッド

君…今なんて

ロゲイン

たしかに最初は帰りたくて仕方なかった

ロゲイン

けど、よく考えたらあんな力主義な世界より

ロゲイン

この世界の方がずっと良いと思ったんだ。それに飯も美味い

ロゲイン

何より、お前に会うことが出来たからだ。フレッド

フレッドはコンピュータのディスプレイを拳で叩き割ると、目から涙を流し始めた

ロゲイン

わ、悪い…いつかは言おうと思ってたんだ

ロゲイン

けど……

フレッド

良いんだ

フレッド

実は僕も、君を未来に戻したくなかった

フレッド

最初はなんかしてあげないとって思ってたけど、一緒に依頼をこなしていく内に

フレッド

ずっと一緒にいられたらなって思ってたんだ

ロゲイン

フレッド……

フレッド

これからも、ずっと相棒でいてくれるかい?ロゲイン

ロゲイン

ああ

ロゲイン

これからも宜しくな

ロゲインの差し出した手を、フレッドがしっかり握った

フレッド

じゃあ、ハッキングを解いて君の戸籍情報移しとくよ

フレッド

君、歳は?

ロゲイン

25だ。来月の7日で26になる

フレッド

9つも上だったのかー、てっきり同じ歳くらいだと思ってたよ。君、若く見られない?

ロゲイン

まぁな…って9つ下って事はお前まさか!

フレッド

僕は17だよ

フレッドが天才と呼ばれてきた理由をもう一つ、知った気がした

フレッド

いやー、本当に国家レベルの犯罪者になるなんてね!

あれから数年、フレッドとロゲインは国の最重要機密であった人体改造のデータを盗みだし、車で逃亡している最中なのだ

ロゲイン

驚いてるのか?

フレッド

なんとなく、こうなる気はしてた

ロゲイン

そうか

ロゲイン

どう思ってる?

フレッド

んー何が?

ロゲイン

こんな風に逃亡する羽目になって後悔してるのか?

フレッド

まさか!すっごく楽しいよ!

ロゲイン

俺もだ。今、すっごく生きてるって感じがする

フレッド

じゃあ、もう一走りだー!

犯罪者として後に名を残すことになるのだろうか

ロゲインはふと、そう思った

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コメント

13

ユーザー
ユーザー

ちょ…スエンさん… なんでこんな素晴らしいお話が書けるんですか…? なんかもう…一周回ってちょっと怖いです…

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