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私は毎朝、誰よりも早く教室に来る。
田城カエデ
そう囁くように呟きシンと静まりかえった教室に入ると
机に鞄を置き窓の外に目を向けた。
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
担任の真島先生は私の横を通り過ぎ、教室の後方へ歩き出す。
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
真島先生
教室の後ろには棚があり、その廊下側の隅に小さなアクアリウムが置かれている。
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
真島先生
田城カエデ
私も先生の隣に立ち、餌やりの準備を始める。
腿に手をおき中腰になっている先生をチラ見すると、小さな熱帯魚たちを見つめる優しい笑顔が私の目に映った。
トクン…
普段の先生は笑顔が少ない。
その真面目な面持ちからは真剣さと誠実さが滲み出ているし、
落ち着いた話し方や所作など、実年齢以上の貫禄を感じさせる。
クラスメイトの中には嫌う子も多かったが、私は先生を尊敬していた。
田城カエデ
真島先生
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
水槽に顔を近づけ熱帯魚を見ながら話してると、先生が私の頭にポンと手を置いた。
トクン…
真島先生
田城カエデ
離れていく先生の後ろ姿を視界の脇に置きつつ、ついさっき見た優しい笑顔を思い出していた。
田城カエデ
目線を水槽に戻すと、お腹をポッコリ膨らませた熱帯魚たちがゆらゆら泳いでいる。
田城カエデ
田城カエデ
間も無くして、生徒の揃った教室に戻ってきた先生はいつもの見慣れた顔で出欠を取り始めた。
窓の向こうはスコールのような大雨で朝だというのに暗い。
蛍光灯の点いた教室が非日常的だ。
いつもの教室とは雰囲気がどこか違う気がした。
今日もまた澄んだ空気の中、人気のない校門をくぐる。
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
動揺して言葉が出ない私とは対照的に、先生は焦る様子もなく普段と同じ口調で話を続けた。
真島先生
真島先生
田城カエデ
私は咄嗟に背中を向けた先生を呼び止めていた。
真島先生
田城カエデ
混乱した。
呼び止めてしまったが、その理由も分からなければ話す事もない。
田城カエデ
私の口が勝手に有りもしない出任せを紡ぐ。
真島先生
田城カエデ
真島先生
私の言葉を遮りそう喋りながら、先生は目の前まで近寄ってきて、
その大きな掌で私の手首を包み自分の方へ引き寄せた。
ドクンッ!
と同時にジャケットの内ポケットからボールペンを取り出す。
真島先生
私の掌に直接書いた数字の羅列だけを残し、ハッと顔を上げた時には既に先生の姿はなかった。
田城カエデ
田城カエデ
脳と心がバラバラになっているような感覚で立ち尽くしていた。
私の手首と手の甲が先生の掌の温もりをまだ意識している。
脳裏には熱帯魚を見つめる先生の優しい笑顔がくっきりと浮かんでいた。
これが先生と会える最後の時だったとは知る由もなく。
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
真島先生
田城カエデ
私は、
1週間考えて
確信しちゃったよ、先生…
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
会って話すよりも話しやすい。
暫く顔を合わせることもないし、思い切って伝えてみようかな…
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
どこまで伝えよう。 元々相談事なんてなかったし。
あの時、何故呼び止めたのか。何故デタラメを言ってしまったのか。
いや、今は学校生活の話に留めておこう。
この想いは、先生が戻ってきた時に直接伝えよう。
「好きです」と。
田城カエデ
田城カエデ
田城カエデ
田城カエデ
田城カエデ
私のメッセージは未読のまま日付が変わろうとしていた。
当たり前だけど忙しいみたい。
予想以上の寂しさを抱えて、スマホを握りしめベッドにもぐった。
結局、未だに既読はついていない。
検査の結果が良くなかったのか、ただ忙しくて私どころじゃないのか。
そもそも先生がこんなに大変な時に、自分のことしか考えていない自分が情けなくて恥ずかしかった。
副担任
副担任
田城カエデ
副担任
副担任である初老の女性教師が神妙な顔つきになる。
教室も私の胸の奥もざわつき始めたその時だった。
副担任
ドクン
無意識にガタンと椅子を倒し立ち上がってしまった。
教室の騒めきが一層大きくなる。
田城カエデ
副担任
副担任
田城カエデ
田城カエデ
教室が静かになり、副担任が深く息を吸い口を開いた。
副担任
田城カエデ
副担任
田城カエデ
副担任
副担任
副担任
教室は静まりかえっている。
私も自分の知らない情報を取りこぼさないように注意深く耳を傾けていた。
副担任
副担任
副担任
田城カエデ
副担任
副担任の告白は驚きの内容だった。
真島先生はタクシーを降りて病院まで走っている途中、通行人にぶつかり体勢を崩し建物の壁に後頭部を打った。
その時から少しずつ脳内出血を起こし始めていたこと。
翌日、妹さんの担当医に頭痛と吐き気を訴え内科で受診したが、
異変を感じた内科医が脳外科の受診手続きをしている間に先生が意識を失い倒れたこと。
副担任
田城カエデ
田城カエデ
副担任
副担任
副担任
田城カエデ
その後も詳細説明は続いたが、結果教壇に立てる見込みがないとのことで真島先生本人の意思で退職することになったらしい。
私は真実が分からなくなり、その日は悪夢の中にいるような曖昧な意識のまま時間を過ごした。
既読がついて返事が来たのは3日後の夜だった。
不謹慎な胸の高鳴りを抑え、全力で冷静を保つことに集中する。
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
真島先生
田城カエデ
先生、ありがとう。
素直な想いを伝えて良かった。
先生が喜んでくれて 涙が出るほど嬉しかった。
先生はやっぱり凄い。
明日の登校を待ち遠しいと思わせるなんて魔法使いみたい。
熱帯魚の飼育日記をつけて先生に見せようかな。
先生、 出会ってくれてありがとう。