外は思った以上に寒くて、まるで、夕日が必死に空を暖めているように見えた
裸の木がぽつぽつと植えられた住宅街をぬけ
オレンジ色に染まった道路をひたすら歩くと、そこにケーキ屋はあった
数種類のレンガが組み合わされた、いかにもな雰囲気のその店は、ひっそりとそこに佇んでいた
重たい木のドアを開けると、カランという鐘の音が鳴る
外の世界から、この世界に入る瞬間が、なぜかたまらなく不思議で、大好きだった
青
店員さん
店員さん
青
店員さん
店員さんはまたにこりと微笑んで店の奥へと消えていった
暇になった僕は、ガラスケースに並べられた、色とりどりのケーキを物欲しそうに見つめていた
すると、カランという鐘が鳴る音がした
お客さんか、これから込み始めるのかな…
特に気にせずにケーキを眺めていたら、そのお客さんは驚いたように口を開いた
黄
青
黄
黄
青
店員さん
ケーキを渡された瞬間、甘く優しい香りが鼻腔をくすぐった
黄
黄
黄
何を突然言い出すんだこの教師…!
僕はさっとその箱を抱きかかえて店から出ようとしたけど
黄くんがドアに手を突いてそれを遮ったため、出るに出れなかった
黄
青
青
青
ぎぎぎっと音を立てて、僕は必死にドアを押し開けようとした。尚も続く攻防戦
黄
青
黄
青
青
ばっと、無理矢理店を出ると、僕はバランスを崩して、道路に転んだ
バタンとドアが閉まる音がしたのと、鐘の音がカランカラン、と鳴ったのは、ほぼ同時だった
真上には、そんな僕を哀れみを含んだ目で見下ろす黄くん
黒い影が、地面にうつ伏せている僕を覆った
黄
黄
青
青
青
冷たい道路に頬をくっつけながら空を見上げたら、切なくなった
厄日だ、今日は厄日なんだ
多分きっと、いや、確実に、先生自体が疫病神なんだ…
黄
黄
青
僕は重たい体を起こして、土の汚れを掃った
そのとき、ズキズキと手のひらに痛みが走った
ああ、やばい。さっき転んで切ってしまったんだ
僕が、僅かに顔をゆがめたことに気付いたのか、黄くんは、どうかしました?と寄ってきた
青
黄
黄くんは、僕の手の平の傷に気付く前に、他のものに気付いたようで、小さく声を上げた
僕も、黄くんの見ている方向に目を遣った
「「 あ...、 」」
重なった声は、僅かな沈黙を作り上げた
そう、そこには桃くんがいたのだ
黒いマフラーを口元までぐるぐるに巻いて、目を見開いて驚いていた
あ、どうしよう。なんでだろう。嬉しい。嬉しい、どうしよう
その瞬間、胸がぎゅうって鷲掴みされるような感覚に陥った
全身が安堵感に満ちて、思わず抱きつきたくなった。…重症だ。やっぱりストーカー癖なんだ
黄
桃
桃くんは、思い切り〝そっちこそ〟って表情をしている
僕はというと、まだびっくりしていて、口をあんぐり開けたまま間抜けな顔をしていた
服装からして、バイトへ行く途中だったのか、そんなことを考えていた
桃
低く掠れた声。それはあまりにも小さな声だったので、聞き取るのに少し苦労した
桃くんはずっと俯いたまま、顔をあげようとはしない
黄
青
何を言い出すんだこの教師は
ただ偶然会って、お金を忘れたから生徒のケーキを奪おうとしてただけのくせに
そう、先生に文句を言っていると、突然桃くんが僕に近付いてきた
そして、突如、手をぐいっと引っ張られた
青
桃
混乱している僕をよそに、桃くんはそう一言呟いた
青
桃
青
触れた指先からどんどん熱が上がっていくのが分かる
おかしい、桃くんの手は凍るように冷たいのに
青
桃
青
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コメント
7件
フォロー失礼しますッ! マジでめっちゃ好きです!! 早くみたいです…(T ^ T) 楽しみ…!(〃ω〃)