TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

38

私にとって その数字は思い入れが強い

いま私がここにいられるのは その魔法の数字のおかげだから

何にもない田舎町

晴れても曇っても雨が降っても ずっと素敵な光景を見せてくれるこの町で

私は生きている

一枝

すぅー。

一枝

はぁー。

空気は綺麗で 肺は洗濯したみたいにすっきりした

深く呼吸をして 自身の胸に手を当てる

私はもう一度思った

生きている、と

一枝

……あなた。

一枝

あなたの言う通りね。

一枝

私は最後まで生きなくちゃいけない。

一枝

だって、こんな贅沢な時間が一度きりなんて寂しいものね。

一枝

生きるっていい気分ね。

隣を歩く夫に話しかけた

「そうだね」

まるで本当に声が返ってきたように 今のわたしには感じられる

きっと歩いてくれている

だって 何度も会いに来てくれたもの

一枝

どう? 最近始めたウォーキング。

一枝

わたしは意外とへっちゃらよ、

一枝

心臓も元気になったし、これからは運動して出来るだけ長生きしないとね、

「そうだね」

柔らかい風に乗って 声が答えてくれた気がする

一枝

ふふ。本当かしら。

一枝

あなた休みの日は出無精で、運動も苦手だったでしょ。

一枝

無理しないでね。

一枝

……ほら、バス停が見えてきた。

一枝

あそこの椅子で休みましょ。

小鳥が囀った

「そうだね」

声は小鳥の鳴き声に重なって聞こえてくる

私はバス停前の椅子に座った

一枝

水筒持ってきたわよ。

一枝

あなたも飲んで。

私は水筒を取り出して カップになる蓋にお茶を入れた

それを隣に置いておく

自分の方は水筒の縁に 直接口をつけて飲んだ

一枝

……こうしてると、男の子みたいな飲み方ね。

一枝

喉渇いてると、こっちの飲み方の方がいいわね。

一枝

学生時代にやってたら、みんな笑ってたでしょうね。

一枝

ふふ。

一枝

……お茶美味しいでしょう?

水筒の中のお茶が ちゃぽんと音を立てて揺れた

「そうだね」

声は潤ったように伝わってきた

一枝

わたし今でもたまに思うの。

一枝

……早くあなたに会えたらなって。

一枝

分かってるわ。これは私だけの命じゃない。

一枝

あの出来事で、あなたや一弥、秋斗くんがわたしに伝えてくれたもの。

一枝

でもね。それでも思ってしまうの。

一枝

なんでわたしだけ残ったんだろうって。

一枝

あなたと一緒じゃないのはなんで何だろうって。

一枝

ねえ。

一枝

教えてくれない?

声は

返ってこない

一枝

心臓を病んでしまった時、わたしは嬉しかったのよ。

一枝

早くあなたに会えるって思って。

一枝

でも、あなたは止めた。

一枝

わたしをここに残して。

声は返ってこない

一枝

わたしだけが今ここで幸せに生きるのは罪なんじゃないかって思うの。

一枝

あなたをそこに残して。

声は返ってこない

一枝

教えて。

一枝

わたしは生きるべきなの?

貴方の選択で結末は変わります 運命を切り開きましょう

A.死ぬ

B.死ぬ

C.死ぬ

……

なんで

声は返ってこないの?

心細いの

とっても

心細いの

「そうだね」

私は顔を上げた

そこには誰もいなかった

一枝

……。

一枝

あなたも心細いのね。

一枝

本当は同じ気持ちなのね。

「そうだね」

一枝

それでも私に生きてほしいのね。

「そうだね」

一枝

じゃあ、わたしは生きるべきなの?

声は返ってこない

一枝

私自身が決めるべきって言うのね。

「そうだね」

一枝

誰かが決めるべきでもなく。

一枝

私自身の選択で。

「そうだね」

一枝

私が生きる理由はなんだろう。

一枝

あなたがいない世界で生きる理由ってなんだろう。

一枝

……。

一枝

38

「そうだね」

私は思い出した

いまの私が生きていられるのは 死んだ夫や一弥、秋斗くんだけのおかげではない

38人の命が支えてくれたものだった

私は38人の命を背負って いまを生きている

それだけの理由があった

あの魔法の数字がそれを教えてくれた

初めから答えを知っていたのに 私は、私は……

一枝

ひゃっ。

何かが頭に落ちてきた

びっくりして手で払うと なんてことはない葉っぱだった

「そうだね」

声は落ちてきた

一枝

……もう。

一枝

わかったわよ。

一枝

驚かさなくたっていいじゃない。

「そうだね」

声は笑ったように聞こえた

そうしていると 遠くから低い音が聞こえてくる

一枝

あっみて。

一枝

バスが来たわよ。

私は立ち上がった

そして手を振った

バスが目の前までくると 声が返ってきた

「そんな手ぇ振らなくたって見えてる」

「恥ずかしいから大人しくしてろ」

「ばあちゃん」

一枝

そうだね。

一枝

……ふふ。

「あ? なに笑ってんだ。気持ち悪ぃな」

一枝

なんでもないわよ。

「おっ。それお茶か?」

「もらうぜ。ばあちゃん」

一枝

そんなに慌てて飲まなくてもいいのに。

「かぁー。生き返ったぜ」

「ふああ。それより今回は一人だからバスで眠っちまわねぇように気ぃ付けてたから眠い」

一枝

あらあら。

一枝

家まで頑張らないとね。

「そうだな」

一枝

え?

その声が一瞬だけ

あなたの声に聞こえた

本当に一瞬だけ

一枝

ふふ。

「さっきから何笑ってんだよ」

「先行くぜ」

一枝

待ってよ。もう。

私は生きる

自分だけの命じゃないから

誰かのために

私自身の選択で

生きる

だからあなたも そしてどこかの"貴方"も

自分の選択で「いま」を生きてね

貴方の選択で結末が変わります 運命を切り開きましょう

A.生きる

B.生きる

C.生きる

さあ…… 貴方の運命や如何に

この作品はいかがでしたか?

6

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚