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薄く視界が開く
知らない天井
木の感触 見慣れない色
柔らかい感触に身体が沈んでいる
──ここどこ?
思考が上手く回らない
身体が重い
指先に力が入らない
???
掠れた声が空気に溶ける
自分の声なのにどこか遠い
少しだけ顔を動かす
白い髪がさらりとシーツに流れた
???
低くやけに落ち着いた声
驚くほど近くから
少女の目線の端に黒が入る
目線を向けた先に
椅子に座りこちらを見ている男 ただそこに″いる″
状況が理解できない
──ただ
怖いという恐怖とは少し違う
男が立ち上がり こちらに静かに近づく
???
反射的に逃げようと体を起こそうする
???
???
???
???
???
???
──なんで?
──どうして?
聞きたいことが浮かぶのに 言葉にはならない
男は、そのな様子を見て目を細め
???
善意でも義務でもないような言い方
ただの事実
意味がわからない
どこの誰かも分からない人に…
なぜそんなに優しくできるの?
男は立ち上がる
???
その声は変わらず静かで
拒否されることを一切想定していない 自然さだった
この人は、何を考えているの?…
その疑問が頭の中をぐるぐると駆け回る
???
水を差し出して近づく 飲ませようとそばに
──すぐ近くに
???
体を無理やり起こし離れようとする
ぐらりと視界が揺れる
それでも距離を取るためにベット端へ
???
???
かすれた声
浅い呼吸
理由が言えないと言葉を飲む 言ってしまえば何かが決定的になる気がした
力が入らない
それでも離れようも 逃げようと体を動かす
触られたくない……
触られてしまったら……きっと私は
???
ただ1歩だけ距離を詰める
???
???
???
反射的に大きな声が出る
男は、何も言わず立ち止まる
???
あっさりと
拒絶をそのまま受け取る声
──え?
でも次の瞬間視界が大きく傾いた
足元が崩れる
???
ベットから落ちる寸前
腕が伸びて 支えられる
少女の体はそのまま男の身体に 預けられる形になる
???
???
小さな抵抗 でも力が入らない
???
???
???
違う
違う
違う
???
目線は、少女に向けたまま
???
違うそうじゃない
???
命令でもお願いでもなく
まるで当然かのように言う
???
???
???
???
呼吸がさらに浅くなる
胸を抑える手が小さく震える
何かが──内側からせり上がってくる
ギリッ………
歯を食いしばる
視界が滲む
熱い
でも寒い
矛盾した感覚が体を走る…
???
誰に向けた言葉か分からない
そのままぎゅっと目をつぶる
開いた時
赤い瞳が沈んでいた
???
???
黒を混ぜたような深い赤い色 光を失ったような眼
呼吸が変わる
荒く苦しそうに…
???
理性の薄皮がゆっくりと剥がれていく
目線が無意識に″何か″を探すように揺れる
目の前にいる
【食べたい】
【啜りたい】
【食べればいいよ触れたのは、この人からだ】
【あなたは、悪くない】
???
???
???
???
???
だが手は離れない
???
だが言葉とは裏腹に 身体は、正直だった
喉が焼けるように酷く渇く
何かを求めている
でもそれが何かわかっているからこそ
拒絶する
少女は、容赦なく自分の腕を噛む
ガブッ
血が滲むほど強く
ポタっ…ポタポタ…
???
男は腕を掴み口から離す
???
???
???
ガタンッ!!
少女は、男を押し倒す
馬乗りになり肩を抑える
押さえつける腕は、震えているのに 力だけがやけに強い
喉が鳴る
逃げたいのに離れたいのに
???
それを身体が許さない
呼吸。
鼓動。
生きている音がやけに鮮明に聞こえる
目線は、もう男から外せない
理性が今にも切れそうな時
???
???
???
その言葉で一瞬意識が戻る
???
言葉を遮る
???
でももう遅い
飢えは、もう止まらない
???
???
瞬間的に離れる
だが男はそれを許さない
男の腕が少女を掴み 抱き寄せる
距離がゼロ
呼吸が触れる
鼓動がすぐそこ
生きている匂い
抗えるはずがない
???
???
静かに耳元で呟く
???
もう、ほとんど自分に言い聞かせている
でも──
身体は、止まらない
???
自然に
甘く優しく…
その声は誘惑する
その言葉が─
最後の歯止めを壊す
理性じゃない
衝動だった
男の首を──
ガブッ
一瞬…時が止まる
???
男の体が僅かに揺れ強ばる
???
だが止まらない
止まれるわけがない
???
白いドレスに赤が滲み
床に生暖かい液体が広がる…
少女の呼吸は、荒いまま─
???
自分が何をしているか分かっているのに…
もう戻れない
甘い
暖かい
柔らかい
おいしい
???
???
???
わすがに息を吐く
痛みが体を襲う
だが
拒絶も抵抗もしない
むしろ─
腕が少女の背に回る
抱き寄せるように
優しく
支えるように落ちないように
???
少女の視界はぼやけている
ただ…満たされていく感覚と
壊れて行く自分だけは、はっきりしている
どれくらい時間が経ったか分からない
ただ少女の体から力が抜ける
噛み付いていた力が緩む
呼吸が荒いまま
男から離れる
視界に入るのは、
血に染まり真っ赤になった自分のドレスと
その場に倒れている男
???
声にならない
理解が追いついた瞬間
全てが一気に押し寄せる
???
声が震える
またわたしは
人を…食べたんだ…
誰かをまた…傷つけて…殺し──
???
???
???
???
低く優しい声
???
その一言は
責めるでもなく
後悔するでもなく
ただ事実だけを置く
少女から涙が零れる
???
???
生きることも今の自分も全てを否定したいのに
???
男は、静かに肯定する
はっきりと逃げ道を塞ぐように
???
呼吸が止まる
その言葉は、とても残酷で
同時に
誰よりも何よりも優しかった
男はいつの間にか目の前にいて
血が着いた頬にそっと触れてくる
???
???
まっすぐと見つめ目を細め
???
???
???
涙が溢れ止められない
全て否定したかった
全て拒絶したかった
でも──
初めてそれでもいいと言われた
間違ったままでも
壊れたままでも
生きてていいと