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ガラガラ…
咲蓮
兄は呼びかけると同時に振り向き、 それまで机に向かって見ていた手帳の ようなものを慌てて閉じた。
小萩
小萩
咲蓮
咲蓮
そう言って、先ほど拾った葉を見せる。
新月の里の子どもよ、こんばんは。
一ヶ月後、数百年に一度といわれる 風露月(こぼれづき)が空に姿を現します。
それにちなんで祭りを開催するので、 準備を手伝ってくれませんか。
場所は、天渡(そらかけ)の丘です。
最後の一文には目を疑った。
なぜなら、天渡の丘はこの里と 宵影の里のちょうど真ん中にあるからだ。
小萩
咲蓮
小萩
咲蓮
送り手のわからない手紙。
その文面のとおりにしてしまったら、 何が待っているのかも予想がつかない。
それでも。
咲蓮
小萩
翌日。
天渡の丘に着くと、少し離れたところに 立て看板を見つけた。
―試練其の壱
素敵な花を摘んできてください―
試練、という言葉に少し緊張する。
でも、看板に書かれているのは 「花を摘む」ということだけ。
ということだけ。
そう難しいことではないはずだ。
咲蓮
そう言うと兄はふっと息をつき、
小萩
咲蓮
小萩
咲蓮
ゆっくりと丘を見渡す。
ここは草花がたくさん生えているけれど、 せっかくなら特別な花を選びたい。
そう思いながら、丘のなだらかな 斜面を降りた。
足元には小さな白い花や黄色い花が 咲いていたけれど、それらはどこにでも ありそうなものだった。
もっと特別な花があるはず。
すると、向こうに紫色の花が 咲いているのが見えた。
咲蓮
近づいてみると、それは藤の花だった。
垂れ下がる房が風に揺れ、 淡い紫がたゆたう。
そっと指先で花びらをなぞった。
別の花も探そう、と思って丘の上に 戻ると、兄がじっと何かを見つめていた。
咲蓮
彼の視線の先には、淡い青色の 小さな花があった。
小萩
兄はしゃがみ込んで、そっと指で 花の茎に触れる。
小萩
咲蓮
そう言いながら、そっとそれを摘んだ。
手のひらに収まるくらいの可愛らしい花。
でも、これだけじゃ少しさみしい 気がする。
もっと素敵な花を見つけたい―
そう思い、もう少し歩き回ってみる ことにした。
丘の端に進むと、今度は地面一面に 広がる小さな花々が目に入った。
小萩
咲蓮
小萩
気づけば腕の中には、藤の花の一房、 勿忘草、芝桜が揃っていた。
兄は私の手の中の花を見つめた。
小萩
そう言われ、私はもう一度丘を見渡した。
すると、少し先に濃いピンク色の花が 集まって咲いているのが見えた。
咲蓮
ふんわりとした質感で、 鮮やかな色が目を引く。
藤、勿忘草、芝桜、ツツジ——
咲蓮
小萩
向こうへと目を向けると、 星のような形をした淡い青紫の花が 咲いているのを見つけた。
咲蓮
珍しい花を見つけたことが嬉しくて、 急いで駆け寄った。
星の形をした花びらは、風に揺れても 崩れず、凛とした雰囲気を持っている。
咲蓮
藤、勿忘草、芝桜、ツツジ、丁子草。
私はそれらを大事に抱えながら、 兄と一緒に看板へと戻る。
そっと花を地面に置く。
咲蓮
小萩
ふと空を見上げると、太陽は西へと傾き、 雲の端はほんのりと色づいていた。
家路をたどる道の上に広がる夕焼け空は、 虹の欠片を散りばめたような色彩が 淡く溶け合っていた。
𝓉ℴ 𝒷ℯ 𝒸ℴ𝓃𝓉𝒾𝓃𝓊ℯ𝒹