プロローグ 「さんりんぼう」
田川 航
「さんりんぼう」という言葉がある。
田川 航
さんりんぼうの日に家を建てると、となり三軒が火事で亡びるという言い伝えからきた言葉らしい。
田川 航
この難しい言葉を、小学五年生のぼくがひんぱんに使うようになったのは、「いやなことが起こると、あとふたつ、いやなことが起きる」というジンクスと掛け合わせていたからだ。
田川 航
簡単に言えば、良くないことが起こる大凶の日のこと。
田川 航
いやなことが起きる日は、ひとつだけでなく三つは起こる大凶の日。
田川 航
そんな日をぼくはさんりんぼうという言葉で、軽く受け流すことにした。
田川 航
逆に考えれば、三つのやっかい事を我慢して目をつむったら、もうこれ以上、いやなことは起こらないという「おまじない」。
田川 航
そうすることで、その日の残り時間は安心して過ごすことができたのだ。
田川 航
今日はまさに、そのさんりんぼうの一日だった