ミオ
ユナ
放課後の、とある公立中学校。 制服を着崩した二人の女子生徒が 椅子に座って話し込んでいた。 時計は四時二十分を指し示していた。
ユナ
ブラウスの襟に毛先のかかった少女が 視界の先に居る上級生に返す。 ふたりとも、指定された簡易ネクタイ を外し、スカートのポケットに退避 させていた。
ミオ
上履きのくたびれた上級生たる少女 が笑う。夕日の差し込む教室に、 彼女ら以外の姿はない。 三十五人分の椅子と机が組になって 置かれているのみ。
「はぁ」とユナは返す他ない。
ユナ
椅子は座面を下にし机の上に 置かれている。午後の授業が終わり、 教室を清掃した生徒らがその状態に して下校する。あてがわれた生徒が、 登校したかどうかの出欠確認にも使用 されるためだった。
ミオ
二人だけの教室に、かたりと響いた。
ミオ
ミオと呼ばれた女子生徒が、ユナの 首元に右手を添える。そうして外に 向かって手の甲を滑らす。
ミオ
ミオ
ミオ
ミオ
走った右手は吸い込まれるが如く、 少女の黒髪を撫でつける。 一度、二度、……頭頂部から耳の 上を通過して首元まで流れてゆく。 その持ち主たる少女は、その行為に 困惑のみ覚えていた。
ミオ
撫でるのに飽き足らずとばかりに、 ミオは黒髪に指を絡ませる。 髪の一束一束を愛撫する。
ミオ
夕日に透けるミオの髪は、元来の 色も相まって、栗の実のような 明るい茶をたたえていた。 その表情は、ユナには見えない。
ミオ
ミオ
かたり、と音の鳴る。ミオの影に 気圧され後ずさろうとしたユナの、 腰掛けていた椅子が擦る。 ミオの左手が、ユナの後頭部に回される。
ミオ
ミオ
ミオ
ミオ
だからボブが好き。 少女の胸の内には、ほのかに、 暖かい物が抱かれていた。
___ミオ先輩、それは……。
ミオ
どこにも行かないで、 私のそばにいて。 ___言葉は虚ろに消えた。
影猫noki
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