久世仁奈
…は、
元彼
あ、仁奈
元彼
おはよ
リュックを背負って 家の玄関を開ける。
家の前には元彼が立っていた。
久世仁奈
な、なんでここに…
元彼
ちゃんと話したくて
元彼
学校はサボって出掛けね?
久世仁奈
いや意味分かんないし
久世仁奈
もう話すことなんてないし、
久世仁奈
なんでそんな事のために学校休まなきゃいけないの
元彼
っ、いいから来いよ!
久世仁奈
ちょ、嫌!!
手首を掴まれ、 すぐに振りほどく。
恐怖と不安で涙が滲む中、 私は必死に駅まで走った。
赤葦京治
おはようございま…
赤葦京治
…先輩、何があったんですか
死にものぐるいで 学校に着いた頃には、
見た目は それはもう酷かったと思う。
下ろした髪は乱れて、 頬には涙の跡。
そして赤葦くんの顔を見て 涙がまた溢れた。
久世仁奈
あ、赤葦っく…
赤葦京治
大丈夫ですから
赤葦京治
落ち着いて深呼吸して
その場にうずくまって しまった私に、
赤葦くんもしゃがむと 背中をさすってくれた。
幸い、時間が早いため 体育館には私と赤葦くんだけだ。
私は深呼吸をしながら こぼれる涙を必死に拭った。
赤葦京治
…まだ懲りないんですね
少しして ようやく落ち着いた私は、
今朝あった事を話した。
赤葦くんは顔を顰めて 怒りを顕にする。
赤葦京治
朝も迎えに行きます
久世仁奈
え!?それは流石に悪いよ…
赤葦京治
何かあったあとじゃ遅いでしょ
赤葦京治
先輩に何かあったら俺…
そこまで言うと口を噤む。
赤葦くんの瞳は 一瞬潤んだように見えた。
赤葦京治
…とにかく明日からは朝も行きます
赤葦京治
迷惑じゃなければですが
久世仁奈
迷惑なわけないよ!
久世仁奈
ごめんね…早く解決しないとね
赤葦京治
謝らないで下さい、先輩は何も悪くないでしょ
赤葦京治
さ、そろそろ皆来ますしネット準備しましょう
謝る私に 赤葦くんは優しく微笑むと、
体育倉庫の方へ歩いていった。
赤葦京治
( 何弱気になってるんだ、俺 )
赤葦京治
( 1番怖いのは先輩だろ )
赤葦京治
( 少しでも俺が先輩の不安を拭えたら…その時は )
その時は。