テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
時間が、息を止めていた。 秒針は進んでいるはずなのに、 緋炎にはその音が聞こえない。 代わりに、胸の奥で何かがほどけていく感覚だけがあった。
ak
彼はそう言った。 誰に言ったのかは、自分でもわからない。
世界は薄く、 色も輪郭も意味を失い始めている。 上も下も、前も後ろも、 もう区別する必要がない場所。 彼女は、つつじは隣にいる。 触れられる距離なのに触れられない。 聞こえる距離なのに声もない。 それでも、緋炎が立ち止まると、つつじも止まる。
____一緒だよ。 言葉にならない同意が、 二人の間に落ちようとした。 緋炎は「失う」と思っている。 つつじは「残る」と知っている。 その違いに、誰も気づかない。
あと一歩、 あと一瞬、 あと一度、呼吸をしたら―― そんな考えが浮かんで、 緋炎はそれを振り払うように目を閉じた。
重なる影。 ずれない気配。 終わりだと信じた場所で、 つつじだけが選ぶ。 離れない、という選択を。
緋炎は気づかない。 ここが終点ではないことも、 終わらせない存在が、もう決めていることも。 ただ、 自分がひどく満たされている理由だけを、 最後まで理解できないまま。
一つ影は残された。
一つ影は消え失せた。
コメント
2件
あっ すきです 雰囲気全てオシャすぎて あの ほんとにドカ好きで とりあえず改めてリクエスト応えてくれてありがとうございます‼️‼️‼️