桜笑
…あれ?
桜笑
あたし、なんで屋上にいるんだろう
はじまりはきっとここ
今日の教室は居心地が悪かった
莉乃
あーイライラする
六花
…どしたの莉乃?
桜笑
なんかあったのー?
莉乃
さっき学級委員に遅刻ギリギリなこと怒られてさー
莉乃
センセーが怒んないんだからいーじゃんって言ったら
莉乃
センセーが怒ってるから私が注意してるんだーとか言い出して
莉乃
あいつ、ちょっと調子乗ってるよね
六花
あー…そ、そうだね
桜笑
…
六花はいつも莉乃に合わせてるし
それを楽しそうにしている
だけど稀に、気まずそうに俯くときがある
桜笑
(…あのときも、そうだったよね)
莉乃
つーか六花あいつと仲良いんだっけ?
六花
あ、え、えっと…まあまあ…だよ
莉乃
ふーん
桜笑
(…ああ)
桜笑
(そういえば言ってたな)
あ!私も瑠々ちゃんから聞いたよ
桜笑
(如月瑠々はうちの学級委員)
桜笑
(男女問わずノリが良くて好かれてるんだけど…)
桜笑
(莉乃とはなんか仲悪い…というか莉乃が毛嫌いしてる)
六花
ていうか桜笑のが仲良かったくない?
六花
こ、この前2人でいるの見た気が…
桜笑
(…ふーん)
莉乃
そーなの?
桜笑
…仲良いよ
六花
!
別に…仲良いわけ、ない
2人でいたなんて六花のウソだ
だけど別に2人の友情を壊したいわけでもないし
六花がそうしたいなら、そうすればいい
桜笑
(…けど)
桜笑
(莉乃だけじゃなく、六花にも…)
桜笑
(あたしは利用しちゃえるくらいの関係だと思われてたんだ)
で、今ココ
桜笑
(…まあ1限から2限の間長いし、ちょっとくらいいっか)
桜笑
(授業までには───)
ガチャ
桜笑
…あー、宮代くんじゃん♪
屋上のドアの音がしてあたしはそう言ってから振り返る
京介
なんで分かるんだよ
桜笑
あはは、だってここに来るの、きっときみくらいだから
京介
京介
…三日月
桜笑
ん?
京介
名前
京介
クラスメートから聞いた
桜笑
あはは、せーかい!
京介
なんて読むんだよ
桜笑
ん?三日月はそのまま今ので───
京介
さくらに、わらう
さくらに、わらう
桜に、笑う
漢字に変換するまで少しかかったあたしは
こう、言った
桜笑
…名前は
桜笑
別に知らなくても良かったのに
京介
ヘンなやつ
桜笑
…そーだね
桜笑
何度も言われてきたよ
桜笑
桜笑
…さえ
京介
あ?
桜笑
あたしの名前!
京介
…さ、え?
桜笑
?
桜笑
うん、そーだよ
京介
桜に笑うで、さえ?
桜笑
そう
京介
…ふーん
京介
で、三日月、1つ言いてぇんだけど
桜笑
ホントに名前聞いた意味ないんだよねぇそれ
京介
俺、ここで休みたいんだ
桜笑
うん、好きにどうぞ♪
京介
…チッ
京介
お前には遠回しに伝えるって言う概念が無ぇのか?
桜笑
ふふ、宮代くんは1人が好きなんだね
桜笑
だけどあたしも逃げてきたわけだからね〜
京介
…逃げる?
桜笑
そうそう
桜笑
教室、居心地悪くてさ〜
京介
…分かった
桜笑
んー?
京介
ずっと…お前と俺の違いってなんだろうって考えてた
桜笑
そーなの?全部違うじゃん笑
京介
…俺はお前の言葉を借りると、"猫を被ってる"わけだ
京介
お前は────
京介
楽しくないのに笑ってるんじゃなくて
京介
楽しいって自分に言い聞かせてたんだ
桜笑
桜笑
…なにそれー笑
桜笑
勝手に決めつけないでよね
桜笑
あたしはこんな幸せな環境にいるんだもん
桜笑
タノシまなきゃいけないよ
京介
楽しまなきゃいけないなんてねーだろ
京介
お前にとってそれがツラいならそれでいーじゃん
桜笑
あたしにとって、ツラいなら…?
桜笑
あはは、何それ
京介
そんだけだよ
京介
なんか見ててヘンっつーか、違和感覚えたから
桜笑
…違和感って
桜笑
あたしの笑顔に?
京介
京介
…いや…態度に…だけど…?
桜笑
ふふっ、そっか
京介
(…なんだ、今の、笑顔)
京介
(息が、苦しくなるみたいな…)
桜笑
ホントは優しいんだね宮代くんは
桜笑
口調や態度はすっごい悪いけど、ちゃんと人を見てるし心配してくれる
桜笑
しかもこーんな見ず知らずのあたしに
京介
別にそんなんじゃねーよ
桜笑
…ありがとう
京介
あー気にすんな、けど───
桜笑
でも
桜笑
あたしのことは自分で決める
桜笑
あたしは、タノシいから。
京介
…あっそ
京介
ま、関係無ぇしどーでもいいけど
京介
それって自分の首絞めてるだけじゃねーの
桜笑
───だったら
桜笑
あたしがクルシいって言ったら誰が助けてくれる?
京介
…っは?