大森
何時間寝てたんだろう。 久しぶりに寝れたからか、すごく気分がスッキリしている。 目を擦りながら辺りを見渡すと、ここが病院だって事が分かった。 そっか…ぼく気絶しちゃったんだ…
藤澤
藤澤
大森
藤澤
短い会話をし、先生を呼びに行ってくれた後、先生から話があると言う事で、診察室に行く事に。 ぼくとしては、ただの寝不足で気絶しちゃったんだと思っていたけど、そんな単純なものではなくて、先生曰く、まず不眠症の原因は、ダイナミクスの抑制剤が上手く効いてない事によるストレスからくるものだと言う事で、このまま抑制剤が効かず、欲求不満のままの状態が続くと、自分自身だけではなく、周りに居るダイナミクスの対になる性の人にも影響を及ぼしてしまうとの事。 具体的にどのような影響を及ぼすかと言うと、基本的にはPlay中に出るダイナミクス特有のフェロモンが通常でも出るようになってしまい、それによって何が起きるかは…言われなくても簡単に想像出来た。 ぼくと同じように抑制剤が効かない人は少数だけど居るそうで、原因は体質によるものだと言うのが今の医学の見解らしい。 今は一時的に、ぼくが気絶している間に強い抑制剤を点滴したから調子がいいけど、常用出来るものではないので、先生からは抑制剤が効かない以上、Playをして欲求を解消するしかないと説明された。
大森
病室に戻ったぼくは顔を枕に埋めながら呟いた。
一生カミングアウトしないで生きていくって決めてたのに、どうしろって言うんだ。 でも、このままだと二人にぼくがSubだとバレるのも時間の問題な訳で… ああ、もう完全に詰み状態じゃんか。
藤澤
後頭部から涼ちゃんの声が聞こえ、枕から顔を起こすと、涼ちゃんはコーラを2本持って立っていた。
藤澤
涼ちゃんはそう言うと、神妙な面持ちでベッドサイドに置かれていた椅子に座り、持っていたコーラを1本、ぼくに渡してきた。
大森
あまり見る事のない涼ちゃんの表情に緊張が走る。
藤澤
藤澤
涼ちゃんの真剣な目から目が離せない。
ああ、これは誤魔化せないやつだ。
でも、なんで? 誰にも言ってないのに。
涼ちゃんはぼくの目が不安に揺れたのを気付いたのか、『やっぱり』と小さく呟いた。 そして、ぼくが何も言えないでいると、涼ちゃんは更に言葉を続けた。
藤澤
藤澤
でも今日、病院に運ばれる事態になり、病院で処置が行われてからフェロモンの匂いが消えた事で、ぼくの体調不良とダイナミクスが関係してると確信してしまった涼ちゃんは、もう見て見ぬふりが出来なくなってしまったと、申し訳なさそうに話してくれた。
大森
バレてしまった事への衝撃は勿論大きくて、頭は混乱しているし、緊張して握ってる手は冷や汗でグショグショだけど、それよりも大切なメンバー、そして大切な友達にこんな辛そうな顔をさせてしまった事に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。 涼ちゃんはきっとこの1週間ずっと悩んでたはずで、むしろ気付いていたのに何も出来なかった自分を責めているかもしれない…
藤澤
ほらね? 涼ちゃんのこう言う優しい所が本当に好き。
大森
藤澤
ぼくが少し茶化すように言うと、涼ちゃんはぷりぷりと怒り出し、いつもの涼ちゃんに戻ったように気がして、ぼくは少しだけ安心した。
大森
ぼくは涼ちゃんの目を見て、少しだけ笑った。
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