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仕事が終わり、 家に帰るとまた白い封筒が入っていた。
永玖
今日はいつもよりも封筒が厚い。
開けてみるといつも通りの1枚の手紙。
そして…
永玖
俺と颯斗が写った写真が入っていた。
しかも、完全プライベート。
久しぶりに休みが合い、 颯斗とデートした時のものだった。
手紙を開くと、今日は1行だけでなく文章が書かれていた。
永玖くん。 写真びっくりしたかな? だって、今日知っちゃったんだ。 2人が付き合ってること。 見返してみたらこの写真があって、すぐにデートだったんだって分かったよ。 ダメじゃんか。僕という人がいながら高尾くんと付き合うなんて。 次、2人っきりでいるところ見たら、僕、嫉妬しちゃって何するか分からないなぁ。 ねぇ、早く別れて。 早く僕だけの永玖くんになってよ。 早くしないと、僕、高尾くんに……。 今日も宇宙一愛してるよ。 おやすみ。
読み終わった時には、 全身が恐怖で震え、放心状態だった。
そして、「早く颯斗と別れないと」
その事で頭がいっぱいだった。
一晩、ろくに眠りもせず、 どうやって別れを切り出そうか考えた。
もう何年も一緒にいる颯斗に、 嘘なんてすぐにバレてしまう。
だから「嫌いになった」 なんて言えない。
いや、嘘でも大好きな人にそんな事言いたくない。
そして何時間も考えた結果、俺は颯斗に“嫌われる”ことを選んだ。
その日から俺は颯斗に嫌われるために 行動を起こした。
颯斗の言うことだけを無視したり、 あからさまに避け続けた。
そうやって過ごしていくうちに、 颯斗は俺に話しかけなくなった。
メンバーも、ケンカしたの? と心配してくれるが軽く流すだけ。
これでよかったんだ。
別れるのも時間の問題。
これでよかった、はずなのに……。
颯斗と仕事をした日の夜は いつも涙を流した。
あの日から1行に戻った手紙も、 気づけば棚いっぱいになっていた。
永玖
今日も手紙をあける。
『明日、全員で仕事だね。 僕だけの永玖くんになるの、 楽しみにしてる』
永玖
今、言葉を交わさない状態で〔恋人〕という関係でもなくなってしまったら、 もう颯斗と……。
俺は、記念日に颯斗に貰ったネックレスを握りしめ静かに涙を流した。