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星空瞬く夜の空の下。 少女の息は城を出た時よりも上がっていた。時折、足を止めて休みたくなる衝動に駆られたが、少女は決して足を止めることはしない。
シェラ
シェラ
懸命に前へ前へと走り進んでいく彼女が、まさかこの国の第一王女であるシェラ・ティーナ・リシャロッテ"だと気付く者は居ない。
それもそのはず、今は深夜であり。 少なからず皆、寝ている時間帯。 人一人いない街並みを険しい顔つきで走り抜けている少女がいるなど誰も知るはずがない。
走り続けていた煌びやかな淡い青色のドレスを見に纏った金髪の少女が、力尽きたように倒れた姿を夜の月が怪しげに照らしていた。
夢を見た。 見慣れた兄の背中に剣が刺さり。着ていた白い服が赤に染まっていく。 普段の人柄からは想像もつかない程、憎悪に満ちた瞳で兄の背に剣を突き刺した男はこちらをじっと見ている。
シェラ
一番、そんなことをするなど有り得ないと思っていた人物が兄を殺した。
その事実から目を背けたいという私の思いからか、男は暗闇に消えていく。
明るい光が瞼越しに伝わる。 シェラは朧げな意識の中思う。
未来を見ることが出来る力を持っていながら。起こってしまった出来事を防ぐことが出来なかった自分への怒りと、不甲斐なさからの悲しさ。 そんな二つの感情から、自身の気持ちが黒く染まっていく。
アディ
見知らぬ男の声が聞こえた気がしたが、シェラは今までの疲労からか、幻聴が聴こえたのだと判断し、意識を手放した。