コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ガイド妖精
ガイド妖精が発した光を建物の壁に当て、文章を表示する。
ユウゴ
第4ブロックが終わってすぐに、次の2択が表示された。
【A】逃げる 【B】逃げない
問題文なしで、この2択だけが表示された。
逃げるか逃げないかの2択。
いったい何から、どこに逃げるのか?
問題の意図するところがわからずに動けずにいると、建物にビキビキとヒビが走って広がっていく。
建物が内側から爆発するように壊れて、ガレキがバラバラと崩れ落ちていく。
中から全長5メートルはある、真っ黒い熊のような生き物があらわれた。
魔物……人工魔物《イミテーション》だ!
魔物熊が一歩前に出ただけで、地面がグラグラと揺れて、石レンガがきしみ、スキマからバラバラと砂が落ちてきた。
こんなものを相手にできるわけがない。
全員、誰からともなく、もと来た通路を目指して走り出した。
選択は【A】逃げる。
全員同じで失格になってもかまわない。
とにかく安全なところまで逃げないと。
その一心で足を動かした。
1番に通路にたどり着いたのはホマレ。
次いでぼく、ユトリが通路に入った。
天井が低いから、ここまでくれば魔物熊は入ってこれないはずだ。
ホマレ
ホマレが振りかえって言う。
メイカは魔法具《マギアツール》のスケボーがあるから、誰よりも早く逃げられるはず。
ガレキに邪魔されてスケボーでは動けなかったのか?
広場の方を振り返ると、メイカがガレキの山の中でへたり込んでいた。
ショウリ
途中まで来ていたショウリが呼びかけるが、メイカは動かない。
目の焦点が合わず、ただ虚空を見つめている。
怯えているんだ。
いつもは強気でも、まだ9歳の女の子。
突然、あんな大きな魔物が目の前にあらわれたら、正気でいられるわけがない。
魔物熊の歩みはゆっくりだが、確実にメイカに近づいている。
ショウリ
ショウリが引き返して走り出した。
ホマレ
ホマレ
ホマレも魔法具《マギアツール》の指輪を出し、左手に炎をまとわりつかせて走り出す。
ユウゴ
ユウゴ
ユトリ
ユウゴ
ちゃんと発動さえしてくれれば、魔物をワンパンで倒せる威力がある。
それに賭けた。
ユウゴ
ユトリ
ぼくもホマレについて走り出す。
ガイド妖精
ぼくとホマレが通路の出口に差し掛かる直前で、ガイド妖精が鉄格子に変形し、通せんぼをされた。
ガイド妖精
ガイド妖精によるいつものアナウンス。
ユウゴ
ガイド妖精
魔物熊がぐおおおと咆哮を上げた。
戦闘態勢に入ったんだ。
ホマレ
ホマレが指さした先で、メイカは呆然とした顔で震えながら、魔物熊をただ見上げている。
ユウゴ
ショウリが使える魔法と言えば、手のひらから温風を出してドライヤーのように髪をかわかす程度。
同じ風《アエル》のアルクと違い、経験も浅いから、戦闘に流用することは出来ない。
魔物熊の右腕が動けないメイカを襲う。
ショウリ
すんでのところでショウリがメイカを抱きかかえて、その場から連れ去った。
攻撃が空を切った魔物熊が体勢を崩す。
ショウリ
ショウリ
メイカ
メイカは気持ちを落ち着かせようと深呼吸をしようとしているが、過呼吸を起こしてうまく息を吸えずにいる。
魔物熊がふたたび歩きだして、近づいている。
メイカ
メイカ
ついに恐怖の限界を超えて泣き出してしまった。
以前ショウリに聞いた話だと、ショウリとメイカの2人は、幼い頃に魔物に襲われて大ケガを負ったらしい。
自分より何倍も大きい魔物熊を目の当たりにして、その時の恐怖が蘇ったんだろう。
メイカは大粒の涙を流して、ただわんわんと泣き続ける。
ショウリはメイカを魔物熊から守るために、かぶさるように抱きしめている。
ユウゴ
ユトリ
ホマレ
ぼく達3人でショウリとメイカを助けてくれるように、ガイド妖精に訴える。
ガイド妖精
ユウゴ
ユトリ
ホマレ
ガイド妖精
ガイド妖精の返答に、ぼく達はほっと胸をなでおろした。
これで最悪の事態は避けられたはずだ。
ガイド妖精
ユウゴ
ガイド妖精
ユウゴ
魔物熊は今にもショウリとメイカに右腕を振り下ろそうとしているところだった。
対抗するすべを持たない2人には、どうあっても逆転の手段はない。
ユウゴ
ユウゴ
ユトリ
ホマレ
すぐ近くまで魔物熊が迫っているという状況。
さらにメイカが大きな声で泣き続けている。
魔物熊に対する恐怖感や緊張感も手伝って、ショウリにもメイカにも、ぼく達の声は全然届いていないようだった。
2人が中止宣言するのは無理だ。
ホマレ
ホマレが炎をまとった左拳で、鉄格子を殴りつける。
しかし、表面が少し焦げ付く程度で、ほとんどダメージなし。
ホマレ
涙目になって左手を振るホマレ。こっちのダメージは大きそうだ。
ユトリ
ユトリが魔法具《マギアツール》のハンマーのやわらかくする面で鉄格子を叩く。
ユウゴ
ぼくはゴムになったはずの鉄格子を広げて開けようとした。
しかし、バウンと大きく戻る力に弾かれて、全身が壁に叩きつけられた。
ユトリ
ユウゴ
ちょっと背中が痛いけど、休めばすぐにおさまりそうだ。
ガイド妖精
無慈悲なガイド妖精の音声。
やっぱり、ショウリとメイカが自分達で中止宣言をしないと終われないのか。
魔物熊が攻撃前の咆哮をあげる。
メイカ
メイカが泣き叫んでショウリに抱きつき、右腕がショウリの背中に重なった。
その瞬間、メイカの右腕が光を放った。
光の圧に押されて、魔物熊の巨体が浮き上がる。
ユウゴ
あまりに強い光に、ぼく達は思わず目をつぶった。
それでも光を直接まぶたに当てられたように目の前が赤く、目の奥がキリキリと痛む。
強い光は一瞬でおさまり、目の前が赤から黒に変わった。
おそるおそる目を開けると、鉄格子の向こうで、魔物熊の巨体が仰向けに横たわっていた。
ショウリの服の背中部分と、メイカの右袖が破けてなくなり、新しい傷はなかったが、大きな古傷……魔力痕があらわになっていた。
以前ショウリに聞いたが、2人の魔力痕はショウリの背中とメイカの右腕でつながっている。
その言葉通り、まるでパズルを合わせたように、ショウリの背中の傷痕とメイカの右腕の傷痕は、ピッタリとつながっていた。
ユトリ
ユトリもぼくと同じく目をつぶっていたために、何が起こったのかを見れなかったみたいだ。
ホマレ
ぼく達の疑問に答えたのは、ホマレだった。
大きく目を見開いて、滝のような涙を流している。
ユウゴ
ホマレ
あの強い光の中で、ずっと目を開いて見ていたらしい。
目を閉じていても痛かったから、直視した時の痛みは相当なものだろう。
ホマレ
ユウゴ
ホマレが言っていた謎の言葉。
ホマレ
通常は右腕と左腕のように、ひとりの人間の魔力痕で起きる現象で、2人の魔力痕で発生するのは前例も少ないらしい。
ユトリ
ガイド妖精
ユトリの質問には、ガイド妖精がこたえた。
鉄格子からガイド妖精の姿に戻ったあとで宣言する。
ガイド妖精
倒れている魔物熊が空気の中に溶けていくように消滅した。
04_成績表_06.png