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ガイド妖精

第5ブロックの競技と難易度2択はこれだ

ガイド妖精が発した光を建物の壁に当て、文章を表示する。

ユウゴ

え、もう?

第4ブロックが終わってすぐに、次の2択が表示された。

【A】逃げる 【B】逃げない

問題文なしで、この2択だけが表示された。

逃げるか逃げないかの2択。

いったい何から、どこに逃げるのか?

問題の意図するところがわからずに動けずにいると、建物にビキビキとヒビが走って広がっていく。

建物が内側から爆発するように壊れて、ガレキがバラバラと崩れ落ちていく。

中から全長5メートルはある、真っ黒い熊のような生き物があらわれた。

魔物……人工魔物《イミテーション》だ!

魔物熊が一歩前に出ただけで、地面がグラグラと揺れて、石レンガがきしみ、スキマからバラバラと砂が落ちてきた。

こんなものを相手にできるわけがない。

全員、誰からともなく、もと来た通路を目指して走り出した。

選択は【A】逃げる。

全員同じで失格になってもかまわない。

とにかく安全なところまで逃げないと。

その一心で足を動かした。

1番に通路にたどり着いたのはホマレ。

次いでぼく、ユトリが通路に入った。

天井が低いから、ここまでくれば魔物熊は入ってこれないはずだ。

ホマレ

メイカさまがいませんわ

ホマレが振りかえって言う。

メイカは魔法具《マギアツール》のスケボーがあるから、誰よりも早く逃げられるはず。

ガレキに邪魔されてスケボーでは動けなかったのか?

広場の方を振り返ると、メイカがガレキの山の中でへたり込んでいた。

ショウリ

メイカ、走れ!

途中まで来ていたショウリが呼びかけるが、メイカは動かない。

目の焦点が合わず、ただ虚空を見つめている。

怯えているんだ。

いつもは強気でも、まだ9歳の女の子。

突然、あんな大きな魔物が目の前にあらわれたら、正気でいられるわけがない。

魔物熊の歩みはゆっくりだが、確実にメイカに近づいている。

ショウリ

メイカ、今行く!

ショウリが引き返して走り出した。

ホマレ

仕方ありません。

ホマレ

私も助けに行きますわ!

ホマレも魔法具《マギアツール》の指輪を出し、左手に炎をまとわりつかせて走り出す。

ユウゴ

ぼくも行く。

ユウゴ

ユトリはここにいて

ユトリ

え、でも

ユウゴ

ぼくには闇《ケイオス》の魔法がある

ちゃんと発動さえしてくれれば、魔物をワンパンで倒せる威力がある。

それに賭けた。

ユウゴ

それに、ユトリが残ってくれれば、5:0にはならないから

ユトリ

わ、わかりました

ぼくもホマレについて走り出す。

ガイド妖精

選択の変更は認められない

ぼくとホマレが通路の出口に差し掛かる直前で、ガイド妖精が鉄格子に変形し、通せんぼをされた。

ガイド妖精

投票が終了した。

Aがユウゴ、ユトリ、ホマレの3票。
Bがショウゴ、メイカの2票。

よって、第5ブロックは、難易度Bでショウゴとメイカが行う

ガイド妖精によるいつものアナウンス。

ユウゴ

行うって、これから何をやらせるつもりだよ?

ガイド妖精

魔法使いの本分、魔物退治だ

魔物熊がぐおおおと咆哮を上げた。

戦闘態勢に入ったんだ。

ホマレ

出来るわけ無いでしょう。
メイカさまを御覧なさいまし

ホマレが指さした先で、メイカは呆然とした顔で震えながら、魔物熊をただ見上げている。

ユウゴ

それに、ショウリだって魔法具《マギアツール》を持っていないんだよ

ショウリが使える魔法と言えば、手のひらから温風を出してドライヤーのように髪をかわかす程度。

同じ風《アエル》のアルクと違い、経験も浅いから、戦闘に流用することは出来ない。

魔物熊の右腕が動けないメイカを襲う。

ショウリ

メイカ!

すんでのところでショウリがメイカを抱きかかえて、その場から連れ去った。

攻撃が空を切った魔物熊が体勢を崩す。

ショウリ

メイカ、落ち着け。

ショウリ

とにかく落ち着いて

メイカ

はっ、ひいっ……はっ、はあぁっ

メイカは気持ちを落ち着かせようと深呼吸をしようとしているが、過呼吸を起こしてうまく息を吸えずにいる。

魔物熊がふたたび歩きだして、近づいている。

メイカ

ひっ、いやっ!

メイカ

ああああああああああああああああああああ!!

ついに恐怖の限界を超えて泣き出してしまった。

以前ショウリに聞いた話だと、ショウリとメイカの2人は、幼い頃に魔物に襲われて大ケガを負ったらしい。

自分より何倍も大きい魔物熊を目の当たりにして、その時の恐怖が蘇ったんだろう。

メイカは大粒の涙を流して、ただわんわんと泣き続ける。

ショウリはメイカを魔物熊から守るために、かぶさるように抱きしめている。

ユウゴ

ガイド妖精!
魔物熊を止めてくれ!

ユトリ

このままではショウリさんもメイカさんも死んでしまいますよ!

ホマレ

せめて鉄格子を開けて、私にも戦わせてくださいまし!

ぼく達3人でショウリとメイカを助けてくれるように、ガイド妖精に訴える。

ガイド妖精

競技を途中で止めると、さかのぼってリバイバル・サバイバルのすべての競技が未クリア扱いになり、ポイントは没収になるがかまわないか?

ユウゴ

かまわないから、ショウリ達を助けてくれ

ユトリ

ポイントなら、また自分で稼ぎます!

ホマレ

元より自分の実力不足が原因なのですから!

ガイド妖精

君達がそれで良いなら、受理しよう

ガイド妖精の返答に、ぼく達はほっと胸をなでおろした。

これで最悪の事態は避けられたはずだ。

ガイド妖精

競技参加者が中止を求めれば、その時点で終了する

ユウゴ

え?

ガイド妖精

他の者の勝手で中止をされては、たとえクリアの可能性が低かったとしても、競技参加者は納得いかないだろう

ユウゴ

いや、それはそうだけど

魔物熊は今にもショウリとメイカに右腕を振り下ろそうとしているところだった。

対抗するすべを持たない2人には、どうあっても逆転の手段はない。

ユウゴ

ショウリ! 競技の中止を宣言してくれ!

ユウゴ

それで魔物熊は止まる!

ユトリ

ショウリさん!
私達の話を聞いてください!

ホマレ

ショウリさま、
メイカさま、
どちらでもいいので中止と言ってください!

すぐ近くまで魔物熊が迫っているという状況。

さらにメイカが大きな声で泣き続けている。

魔物熊に対する恐怖感や緊張感も手伝って、ショウリにもメイカにも、ぼく達の声は全然届いていないようだった。

2人が中止宣言するのは無理だ。

ホマレ

なんとかして伝えませんと……大爆発拳《ボルケーノインパクト》!

ホマレが炎をまとった左拳で、鉄格子を殴りつける。

しかし、表面が少し焦げ付く程度で、ほとんどダメージなし。

ホマレ

いってーですわ

涙目になって左手を振るホマレ。こっちのダメージは大きそうだ。

ユトリ

わ、私の魔法なら……何か軟化《バウンドスタンプ》!

ユトリが魔法具《マギアツール》のハンマーのやわらかくする面で鉄格子を叩く。

ユウゴ

そうか、鉄格子をやわらかくすれば

ぼくはゴムになったはずの鉄格子を広げて開けようとした。

しかし、バウンと大きく戻る力に弾かれて、全身が壁に叩きつけられた。

ユトリ

ユウゴさん、大丈夫ですか?

ユウゴ

う、うん……

ちょっと背中が痛いけど、休めばすぐにおさまりそうだ。

ガイド妖精

競技の妨害は出来ない

無慈悲なガイド妖精の音声。

やっぱり、ショウリとメイカが自分達で中止宣言をしないと終われないのか。

魔物熊が攻撃前の咆哮をあげる。

メイカ

きゃあああああああああああああああああああ!!

メイカが泣き叫んでショウリに抱きつき、右腕がショウリの背中に重なった。

その瞬間、メイカの右腕が光を放った。

光の圧に押されて、魔物熊の巨体が浮き上がる。

ユウゴ

うお、まぶしっ!

あまりに強い光に、ぼく達は思わず目をつぶった。

それでも光を直接まぶたに当てられたように目の前が赤く、目の奥がキリキリと痛む。

強い光は一瞬でおさまり、目の前が赤から黒に変わった。

おそるおそる目を開けると、鉄格子の向こうで、魔物熊の巨体が仰向けに横たわっていた。

ショウリの服の背中部分と、メイカの右袖が破けてなくなり、新しい傷はなかったが、大きな古傷……魔力痕があらわになっていた。

以前ショウリに聞いたが、2人の魔力痕はショウリの背中とメイカの右腕でつながっている。

その言葉通り、まるでパズルを合わせたように、ショウリの背中の傷痕とメイカの右腕の傷痕は、ピッタリとつながっていた。

ユトリ

何があったんでしょうか?

ユトリもぼくと同じく目をつぶっていたために、何が起こったのかを見れなかったみたいだ。

ホマレ

スカーレットパイルですわ

ぼく達の疑問に答えたのは、ホマレだった。

大きく目を見開いて、滝のような涙を流している。

ユウゴ

な、何があったの?

ホマレ

すっげーまぶしくて、目の奥がまだいってーですわ

あの強い光の中で、ずっと目を開いて見ていたらしい。

目を閉じていても痛かったから、直視した時の痛みは相当なものだろう。

ホマレ

でも、良いものを見させていただきましたわ

ユウゴ

スカーレットパイルってやつ?

ホマレが言っていた謎の言葉。

ホマレ

ええ、魔力痕のレアケースで、離れた部位に受けた魔力痕が重なって強い魔力を発する現象のことを、魔力痕の合わせ鏡《スカーレットパイル》と呼びますの

通常は右腕と左腕のように、ひとりの人間の魔力痕で起きる現象で、2人の魔力痕で発生するのは前例も少ないらしい。

ユトリ

そういう専門的なことはわかりませんが、ショウリさんとメイカさんが助かったということですよね?

ガイド妖精

そうだ

ユトリの質問には、ガイド妖精がこたえた。

鉄格子からガイド妖精の姿に戻ったあとで宣言する。

ガイド妖精

人工魔物《イミテーション》の行動不能を確認。
ショウリ、メイカのクリアを認めて、5ポイント

倒れている魔物熊が空気の中に溶けていくように消滅した。

04_成績表_06.png

アミキティア魔法学校の闇

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