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夕暮れの森は、橙色の光を木々の葉に散らし、拠点の焚き火がパチパチと小さな音を立てる。

8人は毛布を広げ、魚と果実の夕食を囲む。

Squid

僕さ、コアラとすごいもの作ったことあるんだ。

皆の視線が集まる。

Squidは少し照れたように笑って言った。

Squid

小学6年生の頃だったかなぁ…

夕方の風が砂場を撫で、遠くで子供たちの声が遠ざかる。

Squidはベンチに座り、膝に置いた手で石を転がしていた。

小学6年生の頃のSquid

暇だなぁ…

小学6年生の頃のSquid

お、コアラ。

小学6年生の頃のKoala

スクイッドじゃん。どうしてここにいるの

小学6年生の頃のSquid

少し…いや、結構暇だったから。

小学6年生の頃のKoala

…携帯持っている人っていいなぁ。

小学6年生の頃のSquid

まぁ、僕たちには与えられるわけないか。

小学6年生の頃のSquid

そんな嘆く必要ないよ。辛抱していればそのうち––

小学6年生の頃のKoala

でもさ。

小学6年生の頃のKoala

作ればいいじゃん。作ればいいんだよ。

小学6年生の頃のSquid

いやいや、今まで確かに工作はしてきたけど流石に携帯は

小学6年生の頃のKoala

私、少しだけプログラミングできるんだ。材料も検討はついている。

Koalaはスケッチブックを開き、鉛筆で簡単な図を描いた。

アルミ缶、古いラジオのパーツ、公園のゴミ箱の奥にあった壊れたおもちゃ…

小学6年生の頃のKoala

一回、試してみようよ。

小学6年生の頃のSquid

Squidは少し考えて、頷いた。

小学6年生の頃のSquid

わかった。協力するよ。

小学6年生の頃のSquid

僕、材料集めるよ。Koalaは……中身、作れる?

小学6年生の頃のSquid

当たり前じゃん。

それから一週間、放課後になると二人は公園に集まった。

初日、Squidはゴミ箱を漁り、壊れたラジオの基板を見つけた。

埃と錆がこびりつき、ネジが一つ欠けていた。

Koalaはスケッチブックに回路図を描き、木の枝をナイフで削ってケースの形を作った。

枝は湿っていて、削るたびに木の香りがした。

二日目、Squidは公園の裏にある廃材置き場から、錆びた電池ケースと古いイヤホンを拾ってきた。

イヤホンのコードは絡まり、プラグが曲がっていた。

Koalaは基板にハンダごてを当て、細かい部品を付け始めた。

三日目、Squidは壊れたおもちゃのスピーカーを外してきた。

プラスチックのケースが割れ、ネジが錆びていた。

Koalaはスピーカーを基板に接続し、ボタン用のスイッチを作った。

スイッチは、壊れたリモコンの部品を流用したものだった。

四日目、Squidはアルミ缶を拾い、Koalaはそれをアンテナに加工した。

缶の底を切り、形を整える。

Koalaの指は、ナイフで缶を切るたびに少し震えたが、目は集中していた。

五日目、Squidは公園の木から落ちた枝を集め、Koalaはそれをケースに仕上げた。

木の表面を削り、滑らかにした。ケースは、木の温もりが残るものになった。

六日目、Squidは古い電池を拾ってきた。

電池は古く、液漏れの跡があったが、まだ使えそうだった。

Koalaは電池を基板に接続し、回路を完成させた。

画用紙には、細かい文字と矢印がびっしりだった。

そして七日目。

二人は完成した"携帯"を手に持った。

Koalaがボタンを押すと–––

小学6年生の頃のKoala

もしもし……聞こえる?

6年生の頃のKoala(スピーカーから)

もしもs 聞kえる?

Squidの持つもう一台から、かすれた声が聞こえた。

小学6年生の頃のSquid

聞こえた!!

Squidは息を呑んだ。自分の声が、Koalaの携帯から返ってきた。

二人は顔を見合わせ、笑った。

Koalaはスケッチブックを閉じ、Squidは拾ってきた材料をベンチに置いた。

Squid

結局、その携帯は三日で壊れたけど……

Squid

あの時、Koalaと一緒に作ったのすごく楽しかったんだ。

Koala

結構楽しかったよね。

焚き火の音が、静かに響いていた。

99夜の森〖 Ⅱ . Marks of the Forgotten 〗

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