この物語は、彼女があることを選んでくれたから、私がいるんですよ?
サキエ

サキエ
「………」

カズエ
「あれー?」

カズエ
「サキエちゃん、そんな怖い顔して、どうしたの?」

サキエ
「佐賀 かず…」

遊翔
「それは、させませんよ」

キミ子
「……!」

カズエ
「そっかー」

カズエ
「また、カズエの名前を呼んで、カズエのこと」

カズエ
「探ろうとしたんだ」

サキエ
「………」

カズエ
「本当に好きだね、サキエちゃんは」

カズエ
「人の心を覗くのが」

サキエ
「…っ……」

キミ子
「……カズエちゃんは、どんな能力(ちから)を持っているのかな?」

カズエ
「………」

私が、話しかけていることに気づいていないように見えた。
遊翔
「カズエ、来宮さんが、聞いてるよ」

遊翔は、ナイフをポケットに直すとカズエの肩を優しくたたいた。
カズエ
「ん?」

遊翔
「あっち」

キミ子
「……?」

カズエ
「お姉さんが、『来宮 喜美子』さん?」

キミ子
「うん…」

カズエ
「カズエに聞きたいことあるんでしょ?」

カズエ
「もう一回、ゆっくり言ってくれる?」

キミ子
「うん、わかった」

キミ子
「あなたは、どんな能力(ちから)を持ってるの?」

サキエ
「いや、教えるはずないでしょ」

カズエ
「カズエの能力(ちから)は」

カズエ
「『フォーゲット』なんだって!」

キミ子
「ふぉー…ゲット?」

カズエ
「うん!」

キミ子
「サキエ!」

キミ子
「教えてくれたよ!」

サキエ
「はいはい」

キミ子
「でっ、ところで、フォーゲットって何?」

遊翔
「『忘れる』ですよ」

キミ子
「忘れる?」

サキエ
「だから、誰もあなたの能力(ちから)を覚えてないのね」

キミ子
「ん?」

キミ子
「どういうこと?」

カズエ
「みんなね、私のこと、“忘れ”ちゃうんだ」

キミ子
「うん、どうして?」

遊翔
「それは、いつか話しますね」

キミ子
「そっか、わかった」

カズエ
「ねぇ、そろそろ始める?」

遊翔
「そうですね」

サキエ
「私達の記憶を消すの?」

遊翔
「少し違います」

カズエ
「きっかけがあれば、思い出せるし」

カズエ
「それに忘れるのは、キミ子お姉ちゃんだけだよ」

キミ子
「へぇー、そうなんだ」

サキエ
「ちょっと、あんた」

サキエ
「ちゃんとわかってる?」

キミ子
「忘れちゃうのは、“輝き”についてだけでしょ?」

遊翔
「まぁ、今日の出来事まるごとを忘れることになりますけど」

キミ子
「そっかー」

キミ子
「まぁ、特に大した…」

キミ子
「ことしかしてないね!」

遊翔
「そうですよねー」

キミ子
「まぁ、いいや」

サキエ
「本当に軽いんだから」

キミ子
「いやー、いつかは思い出すんでしょ?」

遊翔
「まぁ、思い出せない場合もありますよ」

キミ子
「ふーん」

サキエ
「でも、忘れさせる理由って?」

遊翔

遊翔
「……シャット」

サキエ
「……!」

サキエ
「まさか、そんな…」

キミ子
(シャットって、何だー?)

キミ子
(話についていけてないんだけど)

サキエ
「いつなの?」

遊翔
「7月12日」

サキエ
「早すぎるわよ…」

キミ子
「あの、7月12日に何が起きるんですか?」

遊翔
「その日、この村が終わる」

キミ子
「えっ……?」

サキエ
「正確に言えば、世界からこの村が消えるの…」

キミ子
「それって、私達は…」

カズエ
「輝き所有者以外の人は、全員無事だよ」

カズエ
「また、戻るから」

キミ子
「それじゃ…」

カズエ
「消えちゃうんだ」

キミ子
「私も?」

遊翔
「あなたは、忘れることができたら、助かるよ」

サキエ
「ねぇ、それって、本当なの?」

遊翔
「本当です」

サキエ
「それじゃ、敵同士って言ってたのは?」

遊翔
「……」

遊翔
「それは、望む末路が違うからですよ」

サキエ
「……そう」

遊翔
「………」

サキエ
「………」

突然、黙りこみ小屋の中では、外の雨音しか、聞こえなくなった。
キミ子
「……!」

遊翔
「……っ…!」

しかし、ナイフを持つ右手ごとサキエに蹴り飛ばされてしまった。
キミ子
「ちょっ!」

遊翔
「これは、驚きました」

遊翔
「思っていたよりも、強いようですね」

サキエ
「そう、ありがとう」

キミ子
(強…)

サキエ
「でも、女の子に強いと言うのは、ほめ言葉になるのかしら?」

遊翔
「そうですね」

遊翔
「ただ、ナイフがなくとも作はあるのですけどね」

サキエ
「……!」

カズエ
「サキエちゃん、ごめんね」

キミ子
「えっ?」

遊翔
「あぁ、説明しましょう」

遊翔
「カズエの能力(ちから)には、特徴があるんですよ」

キミ子
「特徴?」

遊翔
「はい」

遊翔
「カズエが誰かに能力(ちから)を使うとき」

遊翔
「眠ってしまうんですよ」

キミ子
「どうして?」

遊翔
「理由は、おそらく」

遊翔
「眠ることによって、夢の中で記憶などの整理をするときに奥にしまうためでしょ」

遊翔
「記憶の深いところにしまっておけば、思い出すことは難しいですからね」

キミ子
「それじゃ、サキエは、何か忘れちゃうの?」

遊翔
「いえ、今回は発動させたまでなので」

遊翔
「何かを忘れることはないでしょ」

キミ子
「なるほど…」

遊翔
「ちゃんと、理解してくれましたか?」

キミ子
「うん!」

キミ子
「全然!」

遊翔
「いや、そんな自信満々に首をふられても…」

キミ子
「まぁ、要するに」

キミ子
「今回は何も忘れてないってことでしょ?」

遊翔
「まぁ、そうですよ」

キミ子
「なら、いいんだけど」

キミ子
「ねぇ、今から私はどうなるの?」

遊翔
「拐います」

キミ子
「拐ったあとどうなるのかな」

キミ子
「あっちこっちいじくりなめまわされるとか?」

遊翔
「いや、ないです…」

キミ子
「だよねー」

遊翔
「でも、予定では今日の出来事を忘れてもらうつもりでしたが…」

キミ子
「ん?」

遊翔
「あなた…」

遊翔
「……!」

キミ子
「あっ…」

滝斗
「見つけた…」

キミ子
「……滝斗くん」

滝斗
「結局、 5分じゃなくて15ぐらいかかってしまった…」

キミ子
「おそ…!」
