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グレイス

戻ったわ、メイ

メイ

あ…

メイ

おかえりなさいませ、お嬢様

メイ

メイ

…?

メイ

お嬢様、そちらのお二人は…?

グレイス

紹介するわ

グレイス

私の弟と妹

グレイス

ヘルとアビスよ

メイ

!?

メイ

ヘルとアビスって…

メイ

まさか、あの地下監獄の化け物のことですか…!?

グレイス

えぇ、そうよ

グレイス

でもこの子たちも私と同じガルシオンの子だから…

グレイス

どうか丁重にもてなしてちょうだいね

メイ

し、失礼いたしました

メイ

ですが、なぜこちらに…?

グレイス

私に協力してもらおうと思って

グレイス

強い魔法を使えるこの子たちなら、きっと力になってくれるわ

メイ

左様ですか…

グレイス

2人とも、そんなにかしこまらなくていいわよ

グレイス

楽にしてちょうだい

ヘル

アビス

グレイス

え、ええと…

グレイス

そうね…

グレイス

何か欲しいものはある?

グレイス

食べたいものでもいいわ

ヘル

ヘル

…あめ

グレイス

飴?

ヘル

…うん

グレイス

本当に飴玉が好きなのね…

グレイス

メイ

グレイス

厨房に飴はあったかしら?

メイ

使用人の菓子用のものならあったかと思いますが…

グレイス

それでいいわ

グレイス

できるだけたくさん持ってきてちょうだい

メイ

かしこまりました

グレイス

(ヘルとアビス…)

グレイス

(2人の噂は前世から聞いていたわ)

グレイス

(強い魔法を使えるこの子たちなら、力になってくれると思って連れてきてしまったけれど…)

グレイス

(…本当によかったのかしら)

グレイス

(この子たちは、継承権を剥奪されているし…)

グレイス

(裏切られることはないと思うけれど…)

グレイス

グレイス

それにしても

グレイス

ヘルはまだしも、アビスはほとんど喋らないのね

グレイス

恥ずかしがり屋さんなのかしら

ヘル

…アビスは、ぼくとしかはなさないよ

グレイス

あら

グレイス

そうなの

ヘル

ぼくは、アビスの【しんぞう】だから

グレイス

グレイス

心臓…?

ヘル

そう

ヘル

アビスのしんぞうは、

ヘル

ぼくなの

グレイス

…?

グレイス

そう…?

グレイス

(ヘルがアビスの心臓って、どういう意味かしら…)

グレイス

(小さな子の言うことは、よくわからないわ…)

メイ

持って参りました、お嬢様

グレイス

あぁ、ありがとう、メイ

グレイス

さ、2人とも

グレイス

たくさん食べて

私がそう言うと、2人は籠いっぱいの飴玉を食べ始める。

私はしばらく、彼らの様子をテーベるに頬杖をつきながら眺めていたが。

籠の中の飴玉が減ってきた頃。

思い切って、私は彼らに話しかけてみた。

グレイス

…ねえ、

グレイス

ヘル、アビス

ヘル

…?

アビス

…?

グレイス

あのね

グレイス

さっきも言ったけれど、私が二人をここに連れてきたのは、

グレイス

あなたたちにお願いしたいことがあったからなの

ヘル

グレイス

…あなたたちの力を、私に貸してちょうだい

グレイス

私が継承戦で生き残るには、あなたたちの力が必要なのよ

ヘル

…回帰した直後。

継承戦を生き残り、前世と同じ間違いを犯さないため、私が真っ先に考えたのは、【ジークとの婚約破棄】と【二人に協力を求める】ことだった。

2人の力は強力な反面、想像を絶する危険を伴うため、私のように彼らの力を借りようと考える候補者はいないだろうと踏んだのだ。

沈黙が流れる中、ヘルが口を開く。

ヘル

…それは、

ヘル

ぼくたちと「けいやく」をむすびたいってこと…?

グレイス

契約…

グレイス

そうね、あなたたちからすればそうなるわ

ヘル

グレイス

対価は問わない

グレイス

継承戦を勝ち抜けるなら、どんな代償でもかまわないわ

グレイス

力を貸してくれるなら、私も、あなたたちのどんな願いも叶えると誓うわ

私は椅子から立ち上がり、再び屈んで彼らと目を合わせる。

…彼らはいったい、私に何を要求してくるつもりなのだろう。

強大な黒魔法を操る彼らのことだ。

もしかしたら、この公爵家の存在や、はたまたこの国を…皇位を欲しがる、なんてこともあるかもしれない。

しかし、実際に彼らが望んだのは、案外些細なことだった。

ヘル

…いいよ

ヘル

けいやく、おねえちゃんとしてあげる

グレイス

ほ、本当…!?

ヘル

うん

ヘル

あと、「たいか」もいらない

グレイス

いらない…!?

驚愕する私に、ヘルは頷く。

ヘル

おねえちゃんは、ぼくたちをあそこからだしてくれたし…

ヘル

これからも、ぼくたちはここにいていいんでしょ?

ヘル

たいかは、それでじゅうぶん

グレイス

それは、そうだけど…

グレイス

でも、それじゃあさすがに悪いわ

グレイス

私の気が済まないの

グレイス

何かないかしら

ヘル

グレイス

む、無理にとは言わないけど…

ヘル

…じゃあ、

ヘル

ぼくとアビスに、まいにちあめをちょうだい…?

ヘル

それなら、いい…?

グレイス

かまわないけれど…

グレイス

グレイス

ねえ、

グレイス

どうしてあなたたちは、こんなにも私に優しくしてくれるの?

ヘル

…?

ヘル

さっきもいったでしょ…?

ヘル

おねえちゃんが、むかし、

ヘル

ぼくたちに、あめだまをくれたからだよ

グレイス

グレイス

…そう

やはり再度耳にしても覚えがなく、私は小さくうつむく。

と、アビスの手を引き、ヘルがこちらに駆け寄ってきた。

グレイス

ヘル…?

ヘル

…おねえちゃん、

ヘル

おてて、だして

グレイス

…?

グレイス

え、えぇ

ヘルに言われるがまま、左手を差し出す。

と、その時。

グレイス

きゃぁっ!?

突如、周囲に青い光が飛び散り、床に魔法陣が描かれる。

グレイス

ふ、2人とも…っ

グレイス

これは、

ヘル

ヘル

…けいやく、おわったよ

グレイス

え…、え?

グレイス

もしかして、今のが…?

私が尋ねると、ヘルは頷いた。

同時にちゅ、と、彼らは私の手の甲に代わる代わる口付けを施す。

ヘル

…ぼくたちがいきているあいだ、このけいやくはゆうこうだから

ヘル

これは、そのあかし

グレイス

…!

ヘル

…われらヘル・ガルシオンとアビス・ガルシオンは、

ヘル

おねえちゃんが、けいしょうせんでいきのこれるよう、

ヘル

じんりょくすることを、ここにちかいます

グレイス

私の手から口を離し、ヘルはそっと顔を上げる。

 …地下監獄の化け物。地獄の名を持つ、人工的に造られた半魔半人の呪われた双子。

この口付けは、私が彼らの力を手に入れた瞬間だった。

公爵家のデスゲーム~たった一人しか生き残れない公爵家で、悪女は当主になる~

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