テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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ヤヌス

第1話 - 地元の名士

2024年04月29日

#ホラー

#一次創作

#ももみ🌷のホラー大会

#人間怖い

重田💋（omoda）

女の子

人間は誰しも、2つの顔を持っているのかもしれない

女の子

これは、私がまだ小さな女の子だったときに経験した出来事だ

女の子

私の住んでいた地域に、ある老人がいた

女の子

その人は地元の名士として知られていた

女の子

詳しくは知らないが、大地主で

女の子

土地を売った金を投資したり、あるいは貸したりして儲け、かなり裕福だったようだ

女の子

その金の一部を村に寄付し、文化施設を建てたり

女の子

村の人々の生活の向上に役立てたりしていたので、みんなから慕われていた

女の子

けれど

女の子

彼は心の中に　悪　魔　を飼っていた

女の子

たぶん、人間は完全に善人だったり、悪人だったりするわけではなく

女の子

非の打ちどころのない善人が醜い欲望を抱えていたり

女の子

残虐非道な悪人が一抹の優しさを抱えていたりするのだろう

女の子

でも、当時子どもだった私達は、そんな難しいことは分らず

女の子

彼のことをただ親切で優しいおじいさんだと思っていた

女の子

その老人――Ａ氏としておこう――は、果樹園を持っていて

女の子

地域貢献の一環として果物狩りなんかに子ども達を誘っていた

女の子

私も何度か参加したことがある

女の子

ただ、たまに不思議な出来事があった

女の子

あるとき、果物狩りをして帰ろうとしていると

女の子

参加していた女の子のひとりがＡ氏に呼び止められ、どこかに連れていかれた

女の子

その後、その子は学校に来なくなり、やがて引越してしまった

女の子

そのときはまだ、その子の身に何があったのか、私には分らなかった

女の子

けれどそれからしばらく後、また同じようなことがあった

女の子

今度のそれは、私の友達の身に起きた

女の子

私と友達はやはり、Ａ氏の果実狩りに参加していた

女の子

そしてその帰り、私の友達がＡ氏に呼び止められた

Ａ氏

君、ちょっと確認したいことがあるから

Ａ氏

あっちの事務室まで来てくれるかな？

友達

なんだろ？

Ａ氏

ああ、時間かかるかもしれないから

Ａ氏

お友達は先に帰っていてくれるかな

女の子

そうは言われたが、私はなんとなく友達を待とうと思った

女の子

しばらくは一人でプラプラ遊んでいたのだが

女の子

友達が連れて行かれた事務所の方から何か聞こえた気がして

女の子

近づいて、中を覗いてみた

友達

私、そんなことしてません！

Ａ氏

してないって言ってもねぇ

Ａ氏

さっきも言ったけど、うちは採っていい果物は5個までなんだよね

Ａ氏

でも、君の籠から6個目が出てきちゃったんだよね

Ａ氏

そしたら、君が盗んだ、って思うしかないじゃない？

友達

でも、私、盗んだりなんか……

Ａ氏

僕としてはねぇ、君が素直に言ってくれれば、許すつもりだったんだけどねぇ……

友達

でも……

Ａ氏

僕はちょっと、単なる間違いかな、とも思ったけど、

Ａ氏

こんだけ強情だと、やっぱり盗んだのかな、ってなっちゃうよねぇ

友達

そんな！

Ａ氏

もしかしたら、まだ果物隠しているんじゃない？

友達

そんなことしてません！

Ａ氏

じゃあ、そのかばんを見せてくれる？

友達

いいですよ！

Ａ氏

どれどれ……

Ａ氏

うん、ここには入ってないね

友達

当たり前です！

Ａ氏

じゃあ次、スカートの中を見せてくれる？

友達

えっ？

Ａ氏

そこにだって物隠せるでしょ

Ａ氏

何もやましいことがないなら

Ａ氏

今のカバンといっしょで、見せられるよね？

友達

それは、その……

Ａ氏

何？　やましいことがあるの？

友達

いいえ……

Ａ氏

じゃ、見せられるよね？

友達

それは……

Ａ氏

見せられないの？

Ａ氏

じゃあやっぱり、盗んだんだね！

友達

ち、違います！

Ａ氏

なら見せられるはずだよね！？

友達

そ、それは……

Ａ氏

はぁ

Ａ氏

嘘ついてないなら見せられるでしょ？

Ａ氏

見せられないのは、嘘ついていたからだよね！？

友達

見せたら、分ってもらえますか？

Ａ氏

もちろん

友達

じゃあ……

友達

これで信じてもらえますか？

Ａ氏

うーん、どうも怪しいなぁ

友達

えっ！？

Ａ氏

いや、確かにスカートの中には何もないよ

Ａ氏

何もないけどね

Ａ氏

それならすぐに見せればいいわけでしょ？

Ａ氏

なのにあんなにねばった

Ａ氏

どうもあやしいなぁ

Ａ氏

ねばっている間に、何か隠したんじゃないか？

友達

そんな……

友達

じゃあどうすれば信じてもらえるんですか？

Ａ氏

そうだな、一回全部身体検査しようか

Ａ氏

それも、手とか足とか、動かせないようにして

友達

身体検査ですか？

友達

何をするかよくわからないけど、それで信じてもらえるなら……

Ａ氏

よく言った。じゃあこの椅子にすわって

友達

はい

Ａ氏

足を固定するね。それから、手にもこの簡単な手錠をつけてっと

友達

はい……

Ａ氏

よし、じゃあ服を脱がすね

友達

えっ！

Ａ氏

身体検査するっていったでしょ？

Ａ氏

そのためには服を脱がないとね

友達

そんな……、嫌です！

Ａ氏

まあ、嫌がっても脱がしちゃうけどね

友達

やめて！

友達

うぅ……

Ａ氏

はい、服は脱がしたよ

Ａ氏

おっといけない、パンツが残っていたね

友達

えっ

Ａ氏

パンツの中に何か隠しているかもしれないからね

友達

だ、だめ、それは……

Ａ氏

だめって言われても、調べないとね

Ａ氏

……これでよしっと

友達

うぅ……

友達

でも、何もないですよね

友達

これで信じてもらえますか？

Ａ氏

わかった

Ａ氏

でもこれ、あくまで追加で盗んでいないか、って話だよね

Ａ氏

最初に盗んだ分があるよね

友達

だからそれは……

Ａ氏

あくまで謝らないんだね？

Ａ氏

しょうがないなぁ

Ａ氏

これ、この瓶の中身なんだかわかる？

友達

えっ

友達

ひっ！

友達

な、なめくじ　ですか？

Ａ氏

そうだよ

Ａ氏

素直に罪を認めないんだったら、これを君の身体にのせてあげるしかないねぇ

友達

嫌、やめてください！

Ａ氏

でも、罪を認めないんでしょ？

Ａ氏

それならしょうがないよね？

そういうと男は瓶のふたをあけ、箸でナメクジをつまみ、友達が座る椅子の上、足の間に置いていった

友達

ひっ、やっ、だめっ

Ａ氏

あーあ、ナメクジが元気に動いているよ

Ａ氏

早く罪を認めないと、そこの穴から、体の中にはいっちゃうかもよ？

友達

やだぁ、やめてぇ！

Ａ氏

じゃあ認めるんだね？

友達

うぅ……

友達

はい、私がやりました……

Ａ氏

最初から素直に認めればよかったのに

Ａ氏

よし、ナメクジは取り除くとして……

Ａ氏

謝るんだったら、土下座しようか？

友達

わかりました……

女の子

友達は、泣きながら全裸のまま土下座させられていた

女の子

私は見てはいかないものを見た気がして、そのまま逃げ帰った

女の子

翌日から友達は学校に来なくなり、そしてそのまま転校して行った

女の子

その時、私は前にもこれと同じようなことがあったことを思い出した

女の子

あの子も、きっと……

女の子

だいぶあとになって、Ａ氏が逮捕されたと聞いた

女の子

それまでに、何人の女の子が犠牲になったのだろう……

終り

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重田💋（omoda）

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