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あれから────2年
容赦なく照りつける太陽と 乾ききった空気に包まれながら
俺と爽は 広大な砂漠を歩いていた
何処までも続く、砂の海……
風が吹けば 砂粒が容赦無く顔に叩きつけられた
爽がボソッ、と呟く
そう言いながら 俺は片手をかざした
小さな魔法陣がフッと浮かび 冷気の膜が爽の身体を優しく包む
少しはマシになったのか 爽は嬉しそうに尾を揺らした
この砂漠に来たのは ただの旅目的では無い
────────“厄災”を狩る それが俺たちの目的だ
砂漠の入口にある村では 奇妙な『噂』が耐えなかった
『砂の中に何かいる』 『黒い巨大な影を見た』 『夜になると、 地面が唸るような音を立てる』
────そんな話ばかりだった
爽が、不安げに呟いた
灼熱の砂に沈みかける足を 1歩ずつ引き抜きながら
この地に巣食う 『何か』の正体を追っていた────
1時間ほど 灼けるような砂の上を歩き続けていた
魔法によって体温は 一定に保たれているとは言え
視界の端で揺らぐ陽炎と 絶えず舞い上がる砂埃が
じわじわと 精神を削っていく
────それでも 歩みを止めなかったのは
『ここに何かいる』と
村人たちが 口を揃えて言っていたからだ
────────突然
数歩先を歩いていた爽が 足を止めて指を指した
そこは 砂が不自然に盛り上がっていて
その表面には 骨、骨、骨───
大小様々な白い骸が
風に晒され、干からびたまま 砂の上にバラバラに散らばっていた
…………中には まだ、新しいものも混じっていた
俺は腰を屈め 一片の骨を拾い上げる
獣のものか、人間のものか もはや判別できないほど、朽ちている
まるで、 砂に呑まれるようにして
音もなく命を奪われた…
────そんな光景が浮かんだ
日が傾くまで、まだ時間がある
俺たちは 喰い溜めから半周するようにして
慎重に周囲を調べ始めた
砂にうっすらと刻まれた痕跡
────それは
何かが這い回ったかのような 異様な蠕動の跡────……
点ではなく 帯のように続く痕は
太さにして、大人の胴ほど
規則性のないうねりが交差して 時に枝分かれしていることから
複数体いることが分かった
俺は 足元の影に目を落とす
砂粒に埋もれるように
欠けた甲殻の破片が いくつか散らばっていた
────硬い
素手では、到底割れなかった
強度も、数も分からない
ただ、1つ確かなのは…
これは、人の手に負えない “災い”だという事────……
空が ほんの僅かに朱を含んだ
……もう間もなく、夜が来る
『奴』が蠢く時間が 近付いてきていた……
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