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司書

あ、中也さん

中也

どうしたってんだ、司書さん。なんか、太宰が浮かねえ顔して出てったけど!

中也

俺は潜書してねえから、知らねえけどさ!また、酷い具合だったんだろ?

司書

いえ、それが……、なんだか皆さん落ち着かないご様子で……。菊池先生なんか特に慌てて……

芥川

また、見えるよ。歯車が。
寛……、気づいたのかい?今度は、手を離さないって、そういうのかい?

そうだ、龍。必ず救う。救ってみせる

芥川

寛、君は……

芥川

(気がつくと、僕は補修室のベッドの上で寝ていた)

太宰

芥川先生!!ご無事ですか!?

芥川

ああ、太宰君。平気じゃない。とても、弱っていてね。ただ、それだけが心残りだ。

太宰

あ、あの。“それ“って?

芥川

僕の本だ。僕が死んだら、君にあげる。

芥川

どうやら文豪にも、寿命というものはあるものらしい。

芥川

いや、普通にやっても死にはしない。

芥川

だけど、自殺という概念はある。

芥川

僕はまた、同じ運命を辿ってしまう訳だけど、多分誰かが、またそれを骨にして弔うだろう。

芥川

僕の創作とはなんだったのだろう。

芥川

君の、胸に残っている僕の作品は、僕ではない。では、なぜ、僕という人間が生まれたのだろう。

芥川

川端先生、わかりますか?

川端

全てが現実でなかったなら、君も少しは、安らげたでしょうに。

芥川

川端先生。死とは、燐の炎でしょうか。

川端

悲しいですが、止めはしません。

芥川

いいえ。死にはしますが、魂は残ります。

司書

それから、芥川先生はいなくなった。

司書

皆、彼を探したが、出てこない。

司書

どこを探しても、いない。

中也

弔いの火が見える。

司書

弔いの火ですか?

中也

愛するものが死んだ時には、
自殺しなけあなりません。

愛するものが死んだ時には、
それより他に、方法がない。

けれどもそれでも、業が深くて、
なほもながらふことともなつたら、

奉仕の気持に、なることなんです。
奉仕の気持に、なることなんです。

司書

どうせなら、私と心中して欲しかった。

芥川

ふふふ

司書

あれ、芥川先生の、声が聞こえる。

芥川

司書さん。君は生きて。みんなの為に。筆を走らせ続けて。

歯車だ、歯車の音が聞こえる 見える、この光はなに? 敵に侵された僕に、声をかけてくれるのは誰?

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