テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

こっくりさん

一覧ページ

「こっくりさん」のメインビジュアル

こっくりさん

49 - くすりゆび姫

♥

1,883

2019年11月15日

シェアするシェアする
報告する

サヤカ

(…なにが不良よ…なにがヤのつく団体よ…)

サヤカ

(人のこと馬鹿にして…幼稚…ほんとに、幼稚…)

サヤカ

(だけど…逃げてる私も…幼稚…だよね…)

サヤカ

(私…どうしたら…いいんだろう…)

サヤカ

(どうして、小指…なくなっちゃったんだろう…)

サヤカ

…どう…して…

くすりゆび姫

相当落ち込んでいるみたいねぇ…

くすりゆび姫

そんなに小指がなくなったのが悲しいのかしら?

サヤカ

だ、誰っ!?

くすりゆび姫

あぁ、ごめんなさいね。急に話しかけてびっくりしたでしょう?

サヤカ

えと、あの…だ、誰…ですか?

サヤカ

(急になに、この人…)

サヤカ

(それに小指って…見られた!?)

くすりゆび姫

そうね、まずは自己紹介が必要よね

くすりゆび姫

私はくすりゆび姫、右手の薬指の化身よ

サヤカ

あ、え…え?

サヤカ

(きゅ、急になにを言っているの、この人…)

サヤカ

(薬指の化身って…頭、おかしいんじゃないの…)

サヤカ

(どうしよう…変な人に絡まれちゃった…)

くすりゆび姫

あなた、交通事故で右手の小指を失ったでしょう?

サヤカ

そ、それは…

サヤカ

(どうして、交通事故だって知っているんだろう…)

くすりゆび姫

本当ならあの事故で、あなたの手は潰れちゃうはずだったわ

サヤカ

手が…潰れる…?

くすりゆび姫

そう、手が潰れちゃうの。それはもうぐちゃぐちゃよ

くすりゆび姫

そうなってしまうぐらい、酷い交通事故だったわ

くすりゆび姫

それは、あなたが一番よく知っているでしょう?

サヤカ

(確かに…あの事故は本当にすごかった…)

くすりゆび姫

でも潰れなかった

くすりゆび姫

どうしてだと思う?

サヤカ

わ、分かんない…です…

くすりゆび姫

それはあなたが庇ったから

くすりゆび姫

無意識的に手を庇ってくれたから、小指だけで済んだ

サヤカ

庇っただなんて…知らない、です…

サヤカ

だって、あの時は庇うなんて考えられなかったし…

くすりゆび姫

だから無意識的にって言ったでしょ?

くすりゆび姫

とにかく、薬指の化身としては、守ってくれたことがとてもありがたいの

くすりゆび姫

だから、あなたに感謝を言いに来たのよ

サヤカ

(なに…それ…感謝って…ふざけないで…!)

サヤカ

あなたが誰かなんて、知らない…でも!

サヤカ

感謝なんて、いらない!

サヤカ

私は、小指が欲しいの!

サヤカ

(ダメ…言っても意味ないのに…止まらない…!)

サヤカ

今も、小指の感覚が残ってるのに…ないの!小指が、どこにもないの!

サヤカ

あなたが薬指の化身だったとして、それが何になるの!?

サヤカ

そんなバカみたいな話に付き合って、感謝されたって、意味ない!

サヤカ

意味ないの!だって、感謝されたって小指は戻らないんだもの!

サヤカ

(分かってる…こんなの、八つ当たりだ)

サヤカ

(この人が変な人だからって、怒鳴っても意味はない)

くすりゆび姫

…そう、それがあなたの望みなのね

くすりゆび姫

なくした小指が恋しくて、たまらなくなっている、と

サヤカ

あ、当たり前…じゃないですか…こんなの…嫌…

サヤカ

(だって…普通じゃないもの…普通じゃ、ない…)

サヤカ

ひどいっ、よぉ…こんなっ、ひっくっ…なんでっ、なんでよぉ…

サヤカ

なんで私ばっかり、こんなっ…ひっくっ、ぐすっ…

くすりゆび姫

泣くほど嫌なのね…これじゃあ、感謝を受け取ってもらえそうもないわね

くすりゆび姫

そう…なら、こういうのはどうかしら?

くすりゆび姫

あなたがなくして、恋しくなっている小指

くすりゆび姫

なんとかしてあげられるって言ったら…興味ある?

サヤカ

え…?

サヤカ

なんとか…できるん…ですか…?

くすりゆび姫

えぇ、できるわ

くすりゆび姫

だって私は指の化身よ?まぁ薬指の、ではあるけれど

サヤカ

お、教えてくださいっ!どうしたら、いいんですか!?

サヤカ

どうしたら、私の小指を…取り戻せるんですか!?

くすりゆび姫

いいわ、教えてあげる。それはね──

ミユキ

帰って宿題やるのだるいな~

サヤカ

(…ミユキの小指…凄く、綺麗…いいなぁ…小指…)

ミユキ

…ねぇ、サヤカ?聞いてる?

サヤカ

え?あ…うん、聞いてるよ

ミユキ

嘘!だって上の空だったよ!

サヤカ

あはは、ごめんごめん

サヤカ

考え事…していたの

ミユキ

それって、みんなのこと?

サヤカ

うーん…ある意味ではそうかも

サヤカ

(馬鹿なこと考えちゃった…)

サヤカ

(クラスメイトの小指を切り落とそうだなんて…)

ミユキ

ある意味って…やっぱりそうなんだ…

ミユキ

本当、みんな酷いよね

ミユキ

あんな悪口言って…

ミユキ

サヤカはもう…十分傷ついているのに…

サヤカ

あはは…もういいよ…もう…諦めてるから

ミユキ

よくないよ!絶対によくない!

サヤカ

(あの人の言っていたことは、本当なのかな…)

ミユキ

なんとかしたいけど…こういうのってどうやったら、なんとかなるんだろう…

サヤカ

(…誰かの右手の小指を持ってきたら、なんとかしてくれる…って…)

サヤカ

(バカバカしいけど…もし、あの人が本当に薬指の化身だったら…)

ミユキ

あー!もぉ!やっぱり上の空!

ミユキ

それならもう帰ろう!ほら、行くよ!

サヤカ

あ、うん…そうだね。帰ろっか

サヤカ

(縋るしかない…でも、指なんて…どうしたら…)

サヤカ

(クラスメイトの指を切り落とすなんて…やっぱり無理…!)

サヤカ

指…小指が…欲しい…

サヤカ

(ハサミは持ってきた…キッチンにあった、大きいやつ…)

サヤカ

(でも、私にできるの?誰かの小指を…切り落とすだなんて…)

サヤカ

…あ、そうだ

サヤカ

(あそこになら、あるかもしれない。──右手の、小指)

サヤカ

(制服で良かった…通夜にも、怪しまれず紛れ込めた…)

サヤカ

(近所に住んでて放課後よくお世話になったなんて嘘ついちゃった…)

サヤカ

(みんな先に別室に行ったから、今は私と…このおばあさんの遺体だけ…)

サヤカ

…ごくっ

サヤカ

(今なら盗める…右手の…小指…!それさえ、あれば…)

サヤカ

(こんなこと、普通は許されない…許されるわけない…だけど…)

サヤカ

(…やるしか、ない…!だって、取り戻したいもん…私の小指…)

サヤカ

はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…

サヤカ

(だから…名前も知らないおばあさん…)

サヤカ

──ごめんなさい

サヤカ

持ってきた、持ってきたっ、持ってきたっ…!

くすりゆび姫

あら、随分と早かったわね。昨日の今日じゃない

くすりゆび姫

もう小指を手に入れてきたの?

サヤカ

こ、これで、なんとかなるんでしょ!?

サヤカ

(まだ残ってる…指を切り落とした感触っ…!)

サヤカ

(気持ち悪いっ、気持ち悪いっ、気持ち悪いッ!)

くすりゆび姫

確かに右手の小指だわ

くすりゆび姫

おめでとう、これであなたの望みが叶うわ

サヤカ

本当!?これで…私の指、元に戻るの!?

くすりゆび姫

えぇ、そうよ

くすりゆび姫

ほら、手を出して。あ、右手の方よ?

サヤカ

は、はい…

サヤカ

(小指のない私の右手…やっぱり不気味…)

くすりゆび姫

それじゃあまずはこの指をこうして、あなたの手にくっつけるの

サヤカ

(おばあさんの小指…すっごく冷たい…気持ち、悪いっ…)

くすりゆび姫

それで、あなたの右手をこうして包み込んで…

くすりゆび姫

…ほら、これでどうかしら?

サヤカ

(…う、嘘!?小指の感覚が…ある!?)

サヤカ

──って、待って、待って待って待って!

サヤカ

こ、これっ、この小指、お、おばあさんの小指じゃない!

サヤカ

(嫌だっ、気持ち悪いっ!こんなの…私の指じゃないっ…!)

くすりゆび姫

なによ、あなたが持ってきた小指じゃない。これじゃあ不服かしら?

サヤカ

あ、当たり前でしょ!?

サヤカ

だって、私の小指はもっと綺麗で…こんなっ、こんな…

サヤカ

こんなしわくちゃな小指じゃない…!

くすりゆび姫

せっかく小指を取り戻したのに、文句が多いわね

サヤカ

だって、これじゃあ意味ないの!

サヤカ

こんな、こんなものなら…いっそない方がいいよ…

くすりゆび姫

贅沢ねぇ…でもそうね

くすりゆび姫

そういうことなら、あなたの望む綺麗な小指を手に入れる方法を教えてあげる

サヤカ

ほ、本当!?本当にそんなことできるの!?

くすりゆび姫

できるわ。ただし──

サヤカ

いいからっ!いいからその方法を教えてっ!

サヤカ

欲しいの!綺麗な小指が、いますぐ欲しいの!

くすりゆび姫

焦らないで…ほら、まずは目を瞑って

サヤカ

こ、こう!?これでいい!?

サヤカ

(私の小指っ…!取り戻さなきゃ、私の…小指!)

くすりゆび姫

いいわ。それから、綺麗な小指を思い浮かべるの

サヤカ

う、浮かべた!思い浮かべたよ!?

くすりゆび姫

そう。それじゃあ…目を開けてごらんなさい

サヤカ

…っ!

サヤカ

う、嘘…本当に…これ…夢じゃ、ない…よね…

くすりゆび姫

夢じゃないわ。現実よ

サヤカ

(ある!指がっ!私の小指が…あるっ!)

サヤカ

(綺麗な指…しわくちゃな、おばあさんの指じゃない…綺麗な…指…!)

くすりゆび姫

良かったわねぇ、無事に小指を手に入れられて

サヤカ

あ、ありがとう!本当に、ありがとう!

くすりゆび姫

いいのよ。これも薬指を助けてくれたお礼よ

サヤカ

(やった、やったぁ!)

くすりゆび姫

それじゃあ、私はこれで失礼するわ

サヤカ

は、はい。本当に…ありがとうございますっ!

サヤカ

(まるで夢みたい!こんなこと…本当にあるんだ!)

サヤカ

小指…私の…小指…えへ、えへへっ…

サヤカ

(ちゃんと、ある…私の小指…嬉しい…凄く、嬉しい!)

サヤカ

…ん?なんだろう、あの人だかり

サヤカ

(なにかあったのかな…?うーん)

サヤカ

まぁいいや…帰ろう

サヤカ

(どうでもいいや。だって、私には小指があるんだもの!)

サヤカ

ただいまー!

サヤカ!本当に…良かったわぁ、無事で…!

サヤカ

えっ!?ど、どうしたの?お母さん

だいたい、連絡したのにどうして返事しないのよ!

サヤカ

ご、ごめんなさい、電池切れてて…

サヤカ

(言えないよ…斎場に忍び込むために電源切ってたなんて…)

まぁ、無事だったからいいわ

でも怖いわね、近所でこんな事件が起きるなんて…

サヤカ

へ?じ、事件?え、えっと…どういうこと?

まさか知らないの!?さっき近くの道で事件があったのよ!

サヤカ

じ、事件?

ミユキちゃんが襲われたって聞いたから、もしかしたらあんたもって…本当に心配してたんだから!

サヤカ

ミ、ミユキが襲われた…?なに、それ…どういうこと…?

サヤカ

(なに、それ…ミユキが襲われたって…)

私も詳しいことは分からないんだけど、誰かに襲われて小指を切り落とされちゃったんだって!

サヤカ

え…こ、小指…を…?

サヤカ

(ミユキが小指を…切り落とされた…?)

そう、小指!不気味よねぇ

切り落とされた…

サヤカ

(ミユキの…小指が…ミユキの…)

綺麗な、小指が

この作品はいかがでしたか?

1,883

コメント

33

ユーザー

ちょっと怖かったけど、すごくいい話でした!

ユーザー
ユーザー

ってことは、みゆきの小指を想像してたってこと?

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚