叫び。2

そんな事を考えながら、私は外を歩いて行く。

舗装された道、切り整えられた木々、美しく、誇らしげに咲く青色のバラ。

私は、足元に落ちていた懐中時計を見つけて拾い上げる。

綺麗な装飾が施されているが、相当古い物に見える。

しきりに反時計回りに動く時計の針。

そんな事を言っていると、不意にどこかから声が聞こえて来た。

私が叫ぶと、その声は止んでしまった。

今日は変なことばかりだ。

私は、そんな事を考えながら、もう一度その懐中時計を見る。

懐中時計の針が、時計回りにぐるぐると高速で回転していた。

そんな事を言っていると、周りの空気が一瞬にして冷たくなった。

私は、懐中時計から目を離し、辺りを見渡す。

そこには、さっきとは打って変わった世界が広がっていた。

木々は枯れて朽ち果て、花なんて1輪もない。

さっきまで心地よい音を奏でていた噴水ですら、ぐんと歪んでいて、水なんて流す様子はひとつもなかった。

そう言うとアヤちゃんは首を傾げる。

それは、なんとも不自然な首の曲げ方で、少しばかり怖かった。

急に、「愛してくれる？」なんて聞かれても、永遠に一緒にいてあげられる保証はないし、軽はずみな事は言えない。

私は、気取った綺麗事を言うのも言われるのも嫌いだ。

私がうんと頭を悩ませていると、いつの間にかアヤちゃんは消えていた。

まったく、不思議なことばかりで頭が変になりそうだ。

私は朽ち果てた庭の中に、少しばかり古ぼけた家を見つける。

さっきのアヤちゃんの家と似ている。

アヤちゃんの家は、暖かな雰囲気に包まれていた。

アヤちゃんの家の周りにいる人を温めてくれるような、優しくて、幸せな雰囲気が、確かにアヤちゃんの家にはあった。

気が付くと私の足は、もはや私の意思など組みもしないままに、その家に向かっていった。

コンコン…

誰も居ない。

私はそっとドアを押してみる。

思ったよりもずっと簡単に、不気味な音をたてつつ、ドアはゆっくりと開いた。

電気はついているのに、どこかすごく暗い部屋だ。

さっき会った時より、少しばかりアヤちゃんの身長が伸びた気がする。

さっきまで明るかった顔色が、今や青白くなっている。

痩せこけた顔。

一体この短時間に、何があったというのだろう。

アヤちゃんは急に取り乱し、手当り次第に家の物を投げている。

そう言った直後、私の頬を目がけて白い箱が飛んできた。

幸いな事に、箱は私の頬を掠めただけだった。

頬の辺りから、生暖かい液体が流れるのが分かるが、それほどの傷ではないだろう。

私は手の甲で、頬の血を拭ってみせる。

微かにピリッとした痛みを感じる。

私の返事を聞かないままに、アヤちゃんは奥の部屋へと消えていった。

しばらくして、手にいっぱいの救急道具を抱えたアヤちゃんが出てきた。

アヤちゃんは、手際よくガーゼを私の頬に貼っていく。