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暗闇に差す光

第21話 - 【21話】悲しい笑顔の奥

2022年12月26日

#難病

#家族

#友情

#恋愛

#切ない

ri 🌸 ri

黒沢

光から聞いているかも
しれないが･･･

黒沢

わたしが光の父親だ

朝倉

･･･ご挨拶が遅れてしまい
申し訳ありません

朝倉

でも･･･僕に話すような
ことがあるんですか？

朝倉

少し前、突然別れを
告げられたんです

朝倉

それから連絡が
取れなくなって･･･

朝倉

彼女は、
大丈夫なんですか

黒沢

･･･大丈夫、といえば
大丈夫ではあるが

黒沢

そんなことも言えない
かもしれないな･･･

朝倉

･･･教えてください

朝倉

彼女は一体･･･
何を抱えているんですか

黒沢

･･･話す前に、ひとつ
確認したい

黒沢

君は光を
受け入れられるか？

朝倉

え

黒沢

今からわたしが
話すのは、今日まで
光が必死に隠そうと
してきたことだ

黒沢

君と別れることを
決断せざるを得ない
ほどの･･･

朝倉

･･･

黒沢

これから聞く話が
たとえ、どんなに残酷な
真実だとしても

黒沢

君は光を
受け入れてくれるか？

朝倉

･･･ここ最近の彼女の
様子を見ていれば、
ある程度の
予想はつきます

朝倉

あの時彼女が泣いた
本当の意味を

朝倉

知らないまま終わりたく
ありません

朝倉

教えてください

朝倉

光さんの秘密

数日前

黒沢

ここは･･･

光

･･･ちょっとだけ

光

ちょっとだけ、待って

黒沢

･･･

光

･･･

黒沢

･･･

光

･･･あ

黒沢

･･･？

光

朝倉くんだ･･･

光

･･･笑ってる。

黒沢

･･･ここに来たのって

光

･･･ふふ、ごめんね先生

光

どうしても見たくて

光

多分もう、私の足じゃ
会いに行けないから･･･

黒沢

･･･

光

自分から別れたくせに
何言ってんだろうね

光

でも･･･

光

よかった。笑ってて

光

私がいなくても、
笑ってて。

黒沢

･･･

光

ありがとね

黒沢

･･･

光

もう、いいよ。
病院戻ろ

黒沢

･･･無理して笑うな

光

え？

黒沢

泣けよ、もう

黒沢

いいだろ、泣くくらい

黒沢

好きな男と別れたんだから

黒沢

それくらい許されても

光

･･･別に

光

もう好きじゃない、し

黒沢

･･･

光

先生、教えてよ･･･。

光

約束の破り方と･･･

光

──愛の終わらせ方

光

教えて･･･

光が隠したのは

悲しい笑顔の奥にある

驚くほど綺麗な涙だった。

黒沢

筋萎縮性側索硬化症

黒沢

通称・ALS

黒沢

これが
光の抱える秘密だよ

朝倉

ALS･･･

黒沢

10万人に1人の割合で
発症する難病で

黒沢

徐々に身体の筋肉が
衰えていく

黒沢

手足の痺れに始まり、
会話、食事、歩行の
機能が失われる

黒沢

そして最後には、
呼吸をすることも
ままならなくなる

朝倉

･･･

黒沢

彼女の場合、進行の
ペースがやや早く

黒沢

既に普通の学校生活を
送ることが難しく
なってきている

黒沢

そしてこの病気は･･･

黒沢

治療法がない

朝倉

──！

黒沢

特効薬や手術方法が
発見されていないんだ

黒沢

つまり、、、

黒沢

病気が進行して、
最期の瞬間が来るのを
待つことしかできない

朝倉

･･･そんな

黒沢

わたしだって悔しい

黒沢

世界中の論文を読んで
少しでも可能性がないか
探しているんだが･･･

黒沢

どうやらもう、
為す術はないみたいだ

黒沢

医者なのにな

黒沢

毎日毎日、今日も何も
起こらないでくれって
怯えながら過ごしてるよ

朝倉

･･･どうして

朝倉

どうして
何も言ってくれな
かったんだ･･･

朝倉

そんな秘密を抱えながら

朝倉

なんでいつも･･･
大丈夫だなんて･･･

黒沢

──君のためだよ

朝倉

･･･

黒沢

光は、自分の存在が
君の負担になることを
恐れてる

黒沢

自分が弱っていく姿を
見て、君を傷付けたり
大切な時間を奪ったり
することを･･･

黒沢

いや、それ以上に･･･

黒沢

怖いんだろうな

黒沢

たとえ今、一緒に
いられたとしても

黒沢

いつかは君に、
また別の
大切な人ができる

黒沢

そしたら、自分なんか
すぐに忘れられる･･･

黒沢

高校時代に、ほんの
数ヶ月過ごしただけの
恋人なんて

黒沢

すぐに忘れられるって

黒沢

自分にはない未来を
想像したら･･･

黒沢

怖くて──寂しいのかも
しれないな

朝倉

･･･

黒沢

だったらいっそ、
今のうちに忘れてほしい

黒沢

いつか忘れられるより
今、忘れてほしい

黒沢

少しでも心の傷を
小さくしてあげようと

黒沢

別れを選んだんだ･･･

朝倉

･･･忘れる、とか

朝倉

ありえないだろ･･･

黒沢

･･･

朝倉

分かって、たんです

朝倉

俺、なんとなくだけど

朝倉

光の身体、どこか悪いん
だろうなって･･･

朝倉

分かってたんです･･･

朝倉

でも、知らないフリをした

朝倉

光が無理して笑ってるのに

朝倉

気付かないフリをして
目を逸らし続けた･･･

朝倉

･･･恋人だったのに

朝倉

いつでも頼れとか、
味方でいるとか
言いながら･･･

朝倉

肝心なことには何も･･･

黒沢

朝倉くん

黒沢

わたしは君に、
光の支えになって
ほしいと思ってる

黒沢

これは医師として
ではなく──

黒沢

父親として

朝倉

･･･

黒沢

光は強がってるだけで

黒沢

今も君に
会いたがってるはずだ

朝倉

･･･できるなら

朝倉

救ってやりたいです･･･

朝倉

でも､､､俺に出来ますか

黒沢

･･･

朝倉

何度も彼女のSOSを
見逃した俺に･･･

朝倉

そんな資格が
あるんですか･･･

黒沢

･･･資格なんて、
誰にもないだろう

黒沢

そんなもの必要ない

黒沢

あるのは、ただ光が
確かに君を必要としてる

黒沢

それだけだ

朝倉

･･･光は

朝倉

あと、どれくらい･･･？

黒沢

･･･

朝倉

治療法がないんだったら

朝倉

彼女の命は･･･

黒沢

──来年の春を
迎えられるかどうか

黒沢

この冬が
勝負になるだろう

朝倉

──

黒沢

このまま
終わりたくないんだろ

黒沢

ほんとに光を思うなら･･･

黒沢

そばにいてやれ

黒沢

俺はそれを
してやりたくても
出来なかった

黒沢

･･･君はまだ間に合う

暗闇に差す光

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