「君の笑顔って、どんなふうなんだろうね?」
長浜佳奈(ながはま かな)は、どこにでもいる普通の高校2年生。人間関係に少し不器用で、自分の気持ちを表に出すのが苦手な少女。ある日、図書室で出会ったのは、同じ学校に通う目の見えない少年――鷹也坂塔矢(たかやさか とうや)。
彼は静かに本を指でなぞりながら、まるで目で読むように言葉を拾っていた。最初は戸惑いながらも、佳奈は塔矢に自然と惹かれていく。塔矢の目には世界は映らない。それでも、彼は誰よりも人の「声」や「想い」に敏感で、佳奈の心の揺れにもすぐに気づいてしまう。
ある日、塔矢は佳奈に言う。
> 「君が笑ってるときの声、すごく好きなんだ。……でも、見えたら、もっと好きになるのかなって、時々思うんだ。」
“見えない”という現実の中で、それでも「見てみたい」と願う塔矢。
“普通”である自分にできることは何かと悩む佳奈。
2人は少しずつ、言葉と沈黙の間にある「心の景色」を共有していく。
季節が巡る中、佳奈は塔矢に“世界”を伝えようと、景色や色、そして自分の「笑顔」を言葉で描き続ける。それはまるで、光のない世界に、少しずつ色をつけていくような行為だった。
そして迎える、最後の春。
塔矢は手術のチャンスを得る――
「見えるようになったら、最初に見たいのは君の笑顔だ」と言って。
果たして塔矢は、佳奈の笑顔を“見る”ことができるのか。
そして迎える、最後の春。
果たして塔矢は、佳奈の笑顔を“見る”ことができるのか。
そして、佳奈が最後に見せる「笑顔」に込められた本当の想いとは――