戻れない村
Prologue
「皆、『地図にない村』って知ってる?」
俺の何気ない一言が、全ての始まりだった。
とある日、俺等は雑談中に都市伝説の話になった。
インターネットの掲示板やオカルト系の動画で囁かれている「消えた村」の噂。
曰く、地図には載っていない。
たどり着いた者は、二度と戻れない。
見つけたとしても、決して足を踏み入れてはいけない。
「そういうのって大体デマじゃないんですか?」
「逆に、本当にあったら面白くない?w」
怖いもの見たさとYouTubeのホラー実写企画として、俺等はこの“村”を探すことにした。
視聴者に募集した情報を頼りに、いくつかの場所を絞り込む。
そして——彼俺らは「それらしき場所」を見つけた。
地図では何もないはずの山奥。
しかし、古い文献や地元の人の噂によると、かつてそこには小さな集落があったという。
「行くしかねえだろ、これ!」
ノリと勢いだけで決まった企画。
カメラと懐中電灯、探索用の道具を持ち、俺等は車に乗り込んだ。
俺等はまだ知らない。
自分たちが決して戻れない場所へ向かっていることを——。