ハンブル・ファンブル・ファング
「いやあ、今日も疲れた」
白鳥真助は、いつもと同じ時間、いつもと同じ満員電車に揺られながら、何も特別じゃない一日を終えようとしていた。
次の瞬間、金属の悲鳴とともに電車は脱輪する。
そして白鳥は、自分が“死んだ”ことを、あまりにも静かな場所で知る。
そこは天国だった。
だが、彼が想像していた楽園とは違い、そこにいるのは天使ばかりで、人間の姿は一人もない。
この世界には厳格な法律がある。
生前、たとえ蟻を踏み潰したことがあろうとも、嘘をついたことがあろうとも、天国への入場は許されない。
偶然にも、致命的な過ちを犯さずに生きてきた白鳥は、奇跡的に天国へ辿り着いた“例外”だった。
天国のテーマパークで働くことになった彼は、案内人のキーちゃんと出会い、次第にこの世界に順応するようになった。
ある日、白鳥はふと、こんな言葉をこぼす。
「俺さあ、法律変えたいなって思ったりするんだよ、毎回寝る時」
それは、神と法が支配する世界に、人間が牙を向けた瞬間だった。