未来を知らぬ鈴守、有明の月に祈る
秋が深まる頃、山間の小さな町にある“有明月神社”では、
一つの風鈴が、静かに風の中で揺れていた。
その鈴は、ただの装飾ではない。
それは“未来の音”を告げる神具。
古より伝わる予言の鈴であり、世界の境を見守る、祈りと封じの象徴だった。
その風鈴を守るのは───鈴守。
学園では穏やかに振る舞いながらも、彼は人間達との距離を慎重に保っていた。
笑っていても、心の中には誰にも近づかせない“音のない場所”がある。
だがそんなある秋の日。
その鈴が、異なる音を鳴らす。
“この音は、未来が揺らぐ前兆”
“鈴が変われば、世界が変わる”
その日から、静かだった彼の時間は少しずつ軋み始め、
やがて一つの“出会い”が、閉ざされた心をノックする。
これは──
未来を知らぬ鈴守が、誰かと心を通わせていく物語。
そして、信じると言う祈りを、初めて月へ捧げるまでの物語。