テラーノベル

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テラーノベル(Teller Novel)

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加藤真耶(まや)から依頼を受けた翌日、

以前調べて貰ったという

探偵の調査結果が送られてきた。

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(確かに、情報が少ないな)

紫雲 かぎり

(わかったことと言えば)

紫雲 かぎり

(行方不明になった日時)

紫雲 かぎり

(加藤沙耶(さや)の交友関係)

紫雲 かぎり

(それぐらいだ)

紫雲 かぎり

(バイト先を出た後の足取りについては)

紫雲 かぎり

(”駅に向かう姿が目撃されていた”)

紫雲 かぎり

(それだけ)

紫雲 かぎり

(随分とお粗末な調査結果だな)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

いや…

紫雲 かぎり

(”会”が絡んでるんだ)

紫雲 かぎり

(正しくは)

紫雲 かぎり

(”調べられなかった”のかもしれない)

ダメ元でこの調査をした

探偵事務所に問い合わせてみたが

詳しい情報は開示できない

ということだった。

紫雲 かぎり

(ま、そりゃそうだよな)

紫雲 かぎり

(守秘義務があるし)

紫雲 かぎり

(さて……)

紫雲 かぎり

(どうするかな…)

紫雲はぼんやりとパソコンの画面を眺める。

紫雲 かぎり

(あれについては俺の方がよく知っている)

紫雲 かぎり

(七星のことを考えれば)

紫雲 かぎり

(加藤沙耶も誰かに声をかけられ)

紫雲 かぎり

(あのマンションに連れていかれ)

紫雲 かぎり

(”狂宴”の餌食となり)

紫雲 かぎり

(俺に…殺された…)

紫雲 かぎり

(俺の記憶の中では)

紫雲 かぎり

(あの部屋には数人の男がいたはずだ)

思い出したくもない記憶。

ゆえに、

男たちの顔ははっきりと思い出せない。

なのに、

自分が殺した加藤沙耶の顔や、

部屋の隅でうずくまっている少女たちの顔は、

嫌でもはっきりと覚えていた。

紫雲 かぎり

くそっ…

吐き捨てるように言い、

頭を横に振る。

紫雲 かぎり

(あそこにあった死体は)

紫雲 かぎり

(”処分チーム”がどこかに遺棄した)

紫雲 かぎり

(そう、三嶋は言っていた)

そう考えた瞬間、

脳裏に”佐藤太郎”の姿が過ぎった。

紫雲 かぎり

(そういえば)

紫雲 かぎり

(崖に”使用済み”を捨てた)

紫雲 かぎり

(そんな話しをしていたな)

紫雲 かぎり

(四年前のことだが)

紫雲 かぎり

(何か残っていないだろうか…)

紫雲は自前のパソコンを操作し、

コピーしたデータに目を通す。

紫雲 かぎり

意外だな……

ポツリと言葉が漏れた。

紫雲 かぎり

(いや、初対面の人間なのだから)

紫雲 かぎり

(人となりなんてわかっていなかったが)

紫雲 かぎり

(あれだけ不用心な人間が…)

紫雲 かぎり

(ここまで情報を細かく残しているものなのか?)

紫雲はまじまじと

パソコンの画面を見つめる。

紫雲 かぎり

(高額な借金を作った”佐藤”は)

紫雲 かぎり

(高額バイトの募集を見て応募)

紫雲 かぎり

(”簡単な荷物運び”の仕事が)

紫雲 かぎり

(実は”狂宴”の死体処理の仕事だった)

紫雲 かぎり

(戸惑いながらも)

紫雲 かぎり

(”佐藤”は金欲しさに仕事を全うした)

紫雲 かぎり

(その後も”簡単な荷物運び”の仕事に携わり)

紫雲 かぎり

(あのスマホの中には)

紫雲 かぎり

(いつ、どこで、誰と、何をどこに運んだのか)

紫雲 かぎり

(それが事細かに書かれている)

紫雲 かぎり

(一人で行うことは無く)

紫雲 かぎり

(必ず誰かと一緒だった)

紫雲 かぎり

(荷物の中身を知り)

紫雲 かぎり

(逃げ出した者もいた)

紫雲 かぎり

(警察に通報すると言った人間が)

紫雲 かぎり

(その夜、死体となり)

紫雲 かぎり

(処分を命じられたとき)

紫雲 かぎり

(”佐藤”はここから抜け出せないことを悟ったようだった)

紫雲 かぎり

(指示を出していたのは”芝田”という男)

紫雲 かぎり

(”芝田”…)

紫雲はその名前をよく覚えていた。

三上拓海とその妹夏奈を殺すよう

自分に依頼をしてきた人物だ。

三嶋とも仲が良いと言っていたが、

詳細は知らない。

紫雲 かぎり

(そして、四年前…)

紫雲 かぎり

(”狂宴”の最中に)

紫雲 かぎり

(会員が殺されるという事件が発生)

紫雲 かぎり

(急遽呼び出しを受けた”佐藤”は)

紫雲 かぎり

(その処理にあたっている)

紫雲 かぎり

(これは……)

紫雲 かぎり

(俺が起こした事件だ…)

紫雲 かぎり

(このとき指示を出したのは”芝田”ではなく)

紫雲 かぎり

(別の男、とある)

紫雲 かぎり

(用心深い三嶋のことだ)

紫雲 かぎり

(そう簡単に名前は教えるわけがない…)

紫雲 かぎり

(”佐藤”も”芝田”より立場が上の人かもしれない)

紫雲 かぎり

(そう書くに止めているし…)

紫雲 かぎり

(追求はできなかったんだろうな…)

紫雲 かぎり

(そうか…あの中に……)

紫雲の脳裏に

黒い袋を持って部屋に入ってきた

”処理チーム”の姿が浮かんだ。

紫雲 かぎり

(名前は知らないが)

紫雲 かぎり

(あの現場に顔馴染みの死体もあった、と書かれている)

紫雲 かぎり

……

その文章に

紫雲は違和感を覚えた。

自分の記憶の中では、

男たちはどれが誰の肉片なのか

わからないほどに

細切れになっていたし、

顔もぐちゃぐちゃだった。

紫雲 かぎり

(どうしてわかったんだろうか…)

一瞬、

自分は殺していないのでは?

という考えが過ったが、

すぐに首を横に振った。

紫雲 かぎり

(あの場でそれが出来たのは)

紫雲 かぎり

(俺だけだ…)

紫雲 かぎり

(三嶋も部外者は俺しかいなかったと言っていたし)

一つ大きく息を吐いた。

紫雲 かぎり

(顔馴染みがいたというのは)

紫雲 かぎり

(あとあとわかったことだろう)

そう思って文章を読み進めていく。

紫雲 かぎり

(顔馴染みの死に悲しむ暇も無く)

紫雲 かぎり

(…”佐藤”は上の指示に従い)

紫雲 かぎり

(会員の死体もあの崖下に遺棄)

紫雲 かぎり

(まだ使えそうな少女たちは)

紫雲 かぎり

(会員が回収し)

紫雲 かぎり

(使い物にならないと判断された少女たちは)

紫雲 かぎり

(生きたまま崖下に捨てられた……)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(死体を捨てた場所は)

紫雲 かぎり

(この間俺がキャリーケースを捨てた場所と同じ…)

紫雲 かぎり

(あそこに…)

紫雲 かぎり

(加藤沙耶の死体が……)

脳裏をよぎる

血塗れの加藤沙耶の姿。

木に引っ掛かり、

虚ろな目で空を見つめていた。

紫雲 かぎり

……

紫雲は冷めきったコーヒーを

一気に飲み干した。

紫雲 かぎり

(”佐藤”が)

紫雲 かぎり

(細かな指示をスマホに残していたのは)

紫雲 かぎり

(何かあったときに)

紫雲 かぎり

(自分の行為は)

紫雲 かぎり

(全て上からの指示だと説明するためだったんだろうな)

紫雲 かぎり

(だが…)

紫雲 かぎり

(その”佐藤”も会員となった)

紫雲 かぎり

(”会員にならなければ殺されていた”)

紫雲 かぎり

(そう書かれていたところを見ると)

紫雲 かぎり

(自らの意思で会員になったわけではないんだろう)

紫雲 かぎり

(未成年を犯すという行為に特別な快楽は得ていたが)

紫雲 かぎり

(”狂宴”で行われている事を)

紫雲 かぎり

(全て受け入れることは出来なかったようだ)

紫雲 かぎり

(ちょっとした反抗心から)

紫雲 かぎり

(”会”の作る薬を転売)

紫雲 かぎり

(それで得たお金で借金を返済したものの)

紫雲 かぎり

(その後、”会”の作る薬に溺れた)

紫雲 かぎり

(”薬を使っている間は”)

紫雲 かぎり

(”嫌なことを全て忘れることができる”)

紫雲 かぎり

(”だが、薬が切れると”)

紫雲 かぎり

(”言いようのない倦怠感、罪悪感、絶望”)

紫雲 かぎり

(”それが荒波のように押し寄せてきて”)

紫雲 かぎり

(”崖の下から彼女たちが這い上がって来る”)

紫雲 かぎり

(”そして、オレを見つけてこう叫ぶんだ”)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(”人殺し!!と……”)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(その幻覚に耐えることができず)

紫雲 かぎり

(”佐藤”は薬を乱用するようになり)

紫雲 かぎり

(朦朧とした意識の中)

紫雲 かぎり

(相手を殺し)

紫雲 かぎり

(その処分を俺に依頼した)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(彼らは本当に会員だったのだろうか)

紫雲 かぎり

(都合よく使われ)

紫雲 かぎり

(必要が無くなったら処分されているように見える……)

そして、

自分の現状のまた

”都合よく使われている駒”であることを

紫雲はよく理解していた。

紫雲 かぎり

(俺もいつか必要がなくなったら)

紫雲 かぎり

(処分されるんだろうな……)

まるで他人事のようにそう思い、

”さっさと殺してくれればいいのに…”

そんな言葉を口にしそうになったが、

気持ちを誤魔化すように

紫雲 かぎり

彼女にどう報告しようかな?

違う言葉を無理矢理口から出した。

EN

例のヤツ?

nagA

薬の成分

EN

ああ、わかったんだ

nagA

単刀直入に言っていい?

EN

頼む

nagA

あれは”元の薬”から催淫効果を抜いて

nagA

中毒性を弱めただけで

nagA

治療効果は無いし

nagA

体調が改善される効果も無い

nagA

あれは救いのない毒

nagA

それが成分を解析した奴の言葉

EN

やっぱりそうか

nagA

やっぱりって?

EN

いや、体調は良いと言っていたが

EN

記憶障害はずっと残っているし

EN

最近だと過去の記憶まで変化が見られるようになってたんだ

nagA

へぇ~

EN

ちなみに、服用を止めたらどうなるのか聞いてみてくれないか?

nagA

確認済み

EN

さすが

nagA

彼女の体調次第だけど

nagA

服用を止めたら1ヶ月以内に離脱症状が出る

nagA

不安、不眠、情緒不安定……

nagA

そこから欝病になって

nagA

最悪の場合自殺する可能性もある、って

EN

そうか、悠長にはしてられないってことだね

nagA

そういうこと

nagA

彼女の血液検査の結果でもわかれば

nagA

もう少しちゃんとしたデータが出せる、だってさ

EN

ありがとう

EN

でも、これ以上その人を巻き込むことは出来ないから

EN

ん?ちょっと待って

EN

なんで”元の薬”を知っているんだ?

nagA

ああ、そいつ元々解剖医だったんだよ

nagA

だから、過去に似たような薬の成分を見たことがあって

nagA

それと比べたらしい

EN

そうか

nagA

でも、今は無職だけどな

EN

不思議な人と縁があるんだな

nagA

まぁな

nagA

薬の詳しい成分表作ったけどいるか?って

EN

いや、俺がもらっても…

EN

被害者の会に匿名で送ってくれると有り難いかも

nagA

りょーかい

nagA

で?どうすんの?

nagA

ずっと薬飲ませるわけにもいかないし

nagA

薬を止めるわけにもいかないんだろ?

EN

そうだね…

nagA

なんか手伝えることがあればやるけど?

EN

ありがとう

EN

でも、ナーガにはもう十分過ぎるほど手伝って貰ってるし

nagA

使えるもんは何でも使えよ

nagA

相手は一人じゃないんだからな

EN

それもそうだね

EN

じゃ、一つ無茶ぶりしようかな?

nagA

お、いいね!

nagA

師匠の無茶ぶりなら喜んで!

EN

師匠って呼ぶなって言っただろ( ゚Д゚)!

nagA

すみません(´・ω・)

nagA

んで?何すればいいの?

紫雲は何か大きな流れを感じ取っていた。

加藤沙耶の依頼が来た時は、

”何の因果だろう?”

そう思ったのだが、

”佐藤太郎”のスマホデータから

使えそうな情報が得られたり、

ナーガの知り合いが薬の成分を調べてくれたり、

あまりにも”良い偶然”が重なり過ぎている。

紫雲 かぎり

(”良い流れ”が来ているのか)

紫雲 かぎり

(はたまた)

紫雲 かぎり

(誰かに誘導されているのか…)

紫雲 かぎり

……

紫雲 かぎり

(この”流れ”に乗った先に)

紫雲 かぎり

(何があるんだろうか……)

紫雲は椅子の背に体を預け、

天井を見上げた。

【都内某所】

三嶋

珍しいね、君の方から電話なんて

三嶋

行方不明の下っ端君は見つかった?

三嶋

なるほど、監視カメラの映像がね…

三嶋

厄介なことになったねぇ…

三嶋

紫雲くんが?

三嶋

可能性は無いとは言い切れないけど

三嶋

彼が”便利屋”として動いたことなら

三嶋

僕は何も言えないよ

三嶋

すまないね…

三嶋

………そう

三嶋

やっぱり紫雲くんも水面下で動いているんだ

三嶋

ははっ…別に悠長に構えているわけじゃないけど

三嶋

協力者?

三嶋

へぇ~誰だろ…

三嶋

被害者の会の誰か?

三嶋

違う?

三嶋

……ひうち?

三嶋

聞いたこと無い名前だな

三嶋

じゃあ、”芝田”くんはそっちをお願い

三嶋

…良い話しもある?

三嶋

何々?聞かせてよ

三嶋

……へぇ!

三嶋

加藤沙耶の妹がねぇ…

三嶋

これは一体、何の因果だろう

三嶋

……

三嶋

確かにこれは何かに使えるかもしれない……

三嶋

”千里眼システム”のアクセスコードを?

三嶋

そうだね……

三嶋

紫雲君は十分やってくれたもんね

三嶋

愛着はあるさ

三嶋

高校生のときからの付き合いだし

三嶋

これでも、人の心はある方だよ?

三嶋

ふふっ…

三嶋

良い流れがきたね

三嶋

さて、彼が大人しく

三嶋

アクセスコードを渡してくれるよう

三嶋

準備をしなきゃ

『流れ』 END

便利屋・紫雲かぎり〜サクリファイスの花〜

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