俐久
………
俐久
ここまでが、
俐久
殺人事件の真実だ
長い長い話を、聞いていた。
宇美
…
全部、思い出した。
お母さんは、優しい人なんか じゃなかった。
私は、自分で
お母さんは優しい人で
俐久とは殺人なんて犯していない、
ただの幼馴染。
そう、自分の都合のいいように
記憶を塗り替えていたんだ。
宇美
…どうしよう
宇美
私、人を殺しちゃったんだ
宇美
私が、お母さんを…!
俐久
落ち着いてよ!!
俐久
宇美ちゃんは、
何でアイツを殺したんだ?
何でアイツを殺したんだ?
俐久
虐待から解放されて、
俐久
幸せになるためだろ!?
俐久
追い詰められて、
どうするんだよ!!
どうするんだよ!!
宇美
…っ!
宇美
でも、警察にバレたら…
俐久
今まで捕まらなかったん
だから、大丈夫
だから、大丈夫
俐久
……
俐久
ねぇ、
俐久
2人でどこか遠い所に
俐久
逃げようよ
宇美
遠い所…?
俐久
うん
俐久
警察も来ないような
俐久
小さな町に
宇美
…!
宇美
ダメ、だよ
宇美
私のせいで、
俐久の人生を
俐久の人生を
宇美
棒に振りたくない
俐久
いいんだ!!
宇美
なんで、そこまで
してくれるの…?
してくれるの…?
俐久
俺は、
俐久
宇美ちゃんが、好きだから
宇美
!
私の顔が、赤くなるのが分かった。
俐久
俺、宇美ちゃんが
虐待されてた時
虐待されてた時
俐久
何も出来なくて
悔しかった
悔しかった
俐久
だから、これからは
俐久
宇美ちゃんを、ちゃんと
守ってあげたいんだ
守ってあげたいんだ
宇美
俐久…
逃げると決めてからは、 早かった。
親から金を盗んで
服や食べ物を リュックにつめこんだ。
そして、〝その時〟が来た。
島行きの船に、 2人で乗り込む。
宇美
俐久、これから
私たち
私たち
宇美
どうなるのかな
俐久
分かんないけど、
俐久
きっとなんとかなるよ
俐久はそう言って、 私に笑いかける。
今度は2人で
人を殺した街から、
居なくなった。