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鬱
目の前にいるのは、紛れもない生徒会長サマ。しかも、相当急いで来たのだろう。肩で息をしている。
鬱
生徒会長なんて大層な役を担っている人が、立ち入り禁止である屋上なんかに来てはいけないだろう。
鬱
グルッペン
死のうとしていたんじゃないのか?
まるで見透かしたようにグルッペンは言った。
どこか、深紅の瞳が悲哀に満ちているのは気のせいだろうか。
鬱
鬱
鬱
鬱
『落ちこぼれ』
その言葉にグルッペンは大きく目を見開き、顔を顰めた。その顔に怒りを孕んでいるのが分かる。
グルッペン
グルッペン
グルッペン
懇願するような、悲痛な願い。 なんで今初めて会ったようなやつに、そんな切り詰めた顔を向けるのだ。
力強く壇上で演説する彼からは想像も出来ないほど、今のグルッペンは弱々しい。
しかし、生憎鬱はそう簡単に人を信じるような性格では無い。
鬱
グルッペン
鬱
グルッペン
グルッペン
鬱
グルッペン
グルッペン
グルッペン
何おかしなこと言っているんだと声を上げようとして、彼の顔が今までに無いくらい歪んでいるのに気付いた。罪悪感や自責の念に駆られているのだろうと、そう汲み取ることが出来た。
遂には彼の深紅の瞳から大粒の涙が溢れ始めた。
嗚咽を必死に噛み殺しながら、肩を震わせながら、それでも溢れる涙をそのままに視界にはしっかりと鬱を映して。
グルッペン
哀願する彼が、酷く弱い存在に見えた。産まれたての小鹿のような、絶望を目の前にしたか弱い人間のような、そんな感じ。
圧倒的力の前に為す術なく縋り付くしか出来ない、ちっぽけな存在。
可哀想、という言葉よりも先に、 嗚呼彼も自分と同じなんだと、少し嬉しくなった。
彼が一体誰と自分を重ねているかは知らないが、彼も元々弱い存在だったのだろうと。きっと、なにかのきっかけで誰かを失ってしまったのだろうと容易に想像出来た。
鬱
鬱
グルッペン
鬱
鬱
彼がこんなにも弱っているのを見ると、どこか心が痛む。もうとっくに良心は壊れたものだと思っていたが、どうやらまだ健在らしい。
母親のように、彼を抱き締めては頭を撫でてやる。男相手にこんなことをやるのも癪だが、何故かこうしてやりたいと、本能でそう感じた。
彼は僕の胸の辺りの服を掴みながら、声を殺して泣いていた。時折、僕の心臓に手を当てて、耳を寄せて、一定のリズムを刻む鼓動を聞いて安心したように頬を緩めていた。
相当、大事な人だったんだろうな。こうして心臓が動いていることに安堵するくらい、とても大切にされていたんだろうし、その分の悲しみも凄かったのだろう。
少し羨ましいな、なんて。
僕の家族も、友達も、この世界には誰一人として僕のことで喜び、憂いてくれる人はいないんだから。
鬱
グルッペン
グルッペン
鬱
グルッペン
鬱
グルッペン
そう言う彼の目がどこか懐かしむような目になっていたのは、きっと気のせいじゃない。
鬱
鬱
グルッペン
グルッペン
グルッペン
グルッペン
鬱
鬱
グルッペン
グルッペン
グルッペン
鬱
鬱
鬱
鬱
家族に見放されて、学校での居場所も無くて、とりわけ特技も、才能がある訳でも無い。
完璧なる人生の負け組。 権力持ちに媚び売って靴を舐めていくことでしか生きられない、醜い負け犬。
それが、僕。
グルッペン
鬱
グルッペン
グルッペン
グルッペン
核心を突いてるように聞こえるけれど、その実僕はそんなこと一ミリも思ったことは無い。
努力なんて嫌いだし、諦めは早い方。悔しいなんて感情湧いたりしない。期待に見合う程の才能も実力も持ち合わせてはいないし、そもそも僕に期待する人間がいない。
やっぱり、彼はまだ似て非なる、誰かの話をしてる。
でも、なんとなく彼に現実を突きつけるのは可哀想な気がした。
ここは、素直に受け取っておこう。
鬱
鬱
生憎、演技だけは、人を騙すことは得意だ。知らん間に詐欺師なんてあだ名がついてたけど、あながち間違っちゃいない。騙すことも、人生上手く生きるためのコツやしな。
鬱
グルッペン
鬱
グルッペン
グルッペン
鬱
グルッペン
グルッペン
鬱
グルッペン
鬱
僕の制止の声虚しく、彼は颯爽と消えていった。
鬱
10分ちょっと。 たったそれだけだったけれど、ちょっとこの時間が良かったな、なんて。
鬱
鬱
鬱
また話せるのが嬉しいなんて、きっと気のせい。
鬱
ドアを開け、誰もいない薄暗い家に向かって声を投げる。 当然のように声は返ってこない
はずだった。
鬱の父親
いるはずのないあいつが、家に居た。
ぞわりと、全身の毛が逆立つ感覚がした。冷や汗が吹き出す。全身から温度が奪われるような感覚。
なんで、なんであいつがここにいる?あいつには、ここの居場所は分からないはず。だって、実家から新幹線でも使わないと来れないような場所だ。
なんで、なんでなんでなんでなんで
なんで
なんで
息がしづらい。ヒュッ、と喉から嫌な音が鳴る。
鬱の父親
ドガッ、と頬を殴り飛ばされる。
鬱
鬱の父親
鬱の父親
鬱
態々遠くまで来た理由はそれか。 こちとら家賃払うのでもいっぱいいっぱいなのに、金なんて貸せるわけがあるか。
鬱
鬱の父親
胸ぐらを捕まれ、また頬に一発。それだけでは飽き足らず、馬乗りになっては顔を殴打される。
口の中が切れたのか、口内に鉄の味が広がる。思わず顔を顰めると、それも反抗と取ったのか腹やら肋やらをひたすらに殴られた。
鬱
しばらくの間為す術なく一方的に殴られた。僕の意識が段々朦朧になっていくのを見計らって、あいつは僕のカバンから財布を取り出し何枚か万札を抜き取るとそそくさと出ていった。
鬱
痛みで軋む体を引き摺り財布を見てみれば、最近卸したばかりの万札が全て抜き取られていた。
僕の全財産は3000円ちょっととなってしまった。
鬱
僕は、ただその場に惨めに蹲ることしか出来なかった。