わたがし。

わたがし。

拓海。

いつもの街なのに

いつもとは違う夜

いつもの道なのに

人がたくさん居て

いつもとは違う熱気を 見せる商店街

私は『夏祭り』が大好きだ

今日は毎年の夏祭りとは また少し違う

それは幼なじみでもあり

私の好きな人でもある

かいとと夏祭りに来ているからだ

そうやって顔を 真っ赤にしながら言う君

少し安心してるの私は 知ってる

夏の神様、どうか今日だけ。

今夜限りでいいので

かいとの彼女に してください

私はかいととはぐれないように

しっかりと手を握った

今、知り合いにあったら 嫌だな...

そういうことばかり 私の脳内を飛び交う

『どうか知り合いに 会いませんように』

そう何度も願った

でも

そんな願いは叶わなかった

ﾊﾞｯ...

私はかいとと繋いでいた 手を解いた

かほはかいとのことが好き

いわゆる"ライバル"っていうやつ

私は慌てて辺りを見渡すが

かいとの姿は消えていた

今日は俺にとって最高な日

さつきはどう思ってるか わかんないけど

今日だけ俺は さつきの彼氏になった気分だった

俺はすごく幸せ

だった

あの時までは

ﾊﾞｯ...

かほと会った時

さつきが繋いだ手を解いた

俺は必死に戻ろうとした

けど1年に1度の 夏祭りだけあって

人混みが多く

人の流れに飲み込まれてしまった

プルルルルル...プルルルルル...

...おかけになった電話番号は おでになりません

発信音の後に─ ﾌﾞﾁｯ...

気づけば人気があまりない 通路に出ていた

道を引き返そうとしたが

"一方通行"

の文字があったので 1週まわることにした

最初からわかってた

あの二人は両想いで

私なんかが入る隙間なんか

ないって

涙が溢れて止まらない...

今日だけは

泣かせてください

私の心はわたがしのようで

私の涙でどろどろと溶けて

君との思い出と静かに消えた

この失恋がいつかいい思い出に

なりますように

そしていつか

涙で溶けることのない

恋愛が出来ますように...。