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第四話:嫉妬とすれ違い、そして気づく気持ち ——それは、ほんの些細なことだった。 「ごめん今日、ゼミの子たちとご飯行くから、晩メシいらない」 その一言に、俺の胸がチクリと痛んだ。 陽翔の言葉を責めるつもりはない。ただ……最近ずっと一緒に晩ごはんを食べていたから、それが当たり前になっていたから。 「……そう。わかった」 「うん、遅くなるかも」 「……気をつけて」 陽翔はいつもと同じように笑って出かけていった。 でも俺の心は、ずっとモヤモヤしていた。 *** 夜10時を過ぎても帰ってこない。 LINEは「今から帰るね」の一言だけ。 ソファにうずくまり、スマホを握ったまま考える。 ゼミの“子たち”って、誰? 女? 男? 楽しかったんだろうな。俺と食べる晩飯より、そっちの方が。 ——ダメだ、こんなの、俺らしくない。 けど、考えずにはいられなかった。 *** 玄関の鍵が回った音に、俺は顔を上げる。 「ただいまー。……あれ、まだ起きてた?」 「……うん。なんか、寝れなくて」 陽翔がキッチンへ向かい、冷蔵庫を開ける。 「ビール飲む?」 「いらない」 つい、冷たく返してしまった。 陽翔が振り向く。 「……どうした?」 「別に」 「怒ってる?」 「怒ってないってば」 空気がピリつく。俺は視線を逸らす。 すると、陽翔がソファの隣に座ってきて、そっと俺の手に触れてきた。 「……透、もしかして、嫉妬してる?」 「……し、してないし///」 「ふふっ、かわいい」 「……っ、もう知らないっ」 思わず立ち上がろうとすると、陽翔の腕が俺の腰を引き寄せた。 「俺が好きなの、透だけだから」 その言葉に、体の力がふっと抜けた。 「……ほんとに?」 「ほんと。ゼミの飲み会なんて、早く切り上げたかった」 「……なら、最初から行かなきゃいいじゃん」 「……可愛すぎるって、透」 陽翔は、俺の髪にキスを落とした。 「……ずっと隣にいるよ。どこにも行かないから」 ぎゅっと、抱きしめられる腕の中で、俺はようやく息を吐いた。 ……めんどくさいな、俺。 でもそれでも、好きになったんだ。こんな自分でも、受け止めてくれる陽翔が好きだ。 *** その夜は、何も言わず、陽翔の胸に抱かれて眠った。 あったかくて、安心して、でもちょっと悔しくて—— それが恋なんだろうな、って思った。
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