TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

幾多のループ

一覧ページ

「幾多のループ」のメインビジュアル

幾多のループ

4 - 幾多のループ

♥

333

2020年10月10日

シェアするシェアする
報告する

え、あの扉の奥……?

そう。まだ探索してないでしょ?あそこは私が探す。だから新は反対側の扉の方を探してしてよ

そっちは……

もう、探した?

いや、探してはないんだけど、さ……

なに?歯切れ悪いんだけど

どっちみち探さなきゃ行けないんだからさ。ここで足掻いたって意味ないよ

新は俯き、無言になった。

奏は、黙り込んだ新を数秒見つめた後、扉の方へ歩き出した。

嫌々ながら納得してくれたのだと思った。

待って!

まだ、足掻くのだろうか?

何?私は待てないよ。いかに早く武器を見つけられるかが重要だからね

じゃ、じゃあ、奏!!

こうしよう

どうするのよ

奏が行きたがってる方は、自分が行くよ。だから反対側の方を奏が探して

あっちに何があるのよ……

別にいいけど

それじゃ、私は行くね。あっちの扉の方、よろしくね

おう!それじゃー行ってくるよ!

交わした言葉は、互いの耳に届いたものの、二人の扉の閉まる音で、余韻は残らなかった。

やっぱ、ここは廊下か……

……!!

奏は瞬時にしゃがみこみ、身体を小さくした。

微かに聞こえる……あの怪物の足音……

(足音……ってことは、同じ廊下にはいるけど、近くじゃない……ということか……)

(危ないけど、探さなきゃいけない…)

(いかに気付かれないが重要だ……慎重に行こう)

声も、足音も、息も、最大限小さくし、自分の役目のため、進み始めた。

しかし、心臓だけは張り裂けそうなくらい激しく動き、音をたてていた。

その動きに反応するかのように、手が、足が、唇が、震えていた。

皆の前では強がっているが、一人になると人一倍怖がりになり、怖気づいて何も出来なくなる。

そんな自分を恨み、涙を目に飾った。

どれぐらい経ったのだろうか。

気が動転している奏には、数秒にも、数時間にも、数カ月にも感じられた。

そんなとき……

ファーミ

がああああぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!

耳を劈くような雄叫びが廊下内に響き渡った。

奏は、心臓が止まり、死んだのかと思う程びっくりした。

(何……?何なの?私を見つけたの…?見つけられたの……?)

(嫌……嫌…………)

はぁ……はぁ……

生き、てる……?私、生きてる……?

(大丈夫……大丈夫、だから……落ち着いて……)

(右側の方から声と足音が聞こえて、右側へ音が収束されたってことは……あの化け物は右側に歩いて行ったってこと、だから……)

(右側に行けば化け物の背中を追うことになるから……こっちに、進もう……)

会わない……ふぅ……私の考えは、合ってた、ってことかな……よかった…

でも、道中に武器なん、て……ぇ……?

おかしい。気が動転している奏の目がおかしい?

作り物の星に囲まれた神秘的な廊下に…

 赤。

 赤。

……これは、何事なの……?

慎重に、慎重に、歩みを進める。

見つけた。

みつけた。

廊下に撒き散る赤色の中心には………

人の形をしていた"何か"だった。

さっき聞こえた雄叫び、足音、赤いマフラー、不思議な形の鍵……

飛び散った赤。

かたまる。

ふるえる。

あおざめる。

奏は、点と点が線になり……全てを悟った。

あら……た………?

この場所は、奏が出たメインホールの扉の反対側。

奏が最初に指差した扉の奥……

……新……まさか……

全身の力が無くなっていく。地面に膝がつく。

目から、我慢していた全てが流れ出す。

嘘……で、しょ……?

嫌……いや…いや、いやいや……!

震えながら、新の方へ手を伸ばす。

が、届かない。

足に力が入らず、近付くことが出来ない。

いや、この血溜まりに入りたくないからだろうか?

こんなときでも、親身に擦り寄れない自分に嫌気がさす。

再び、奏は泣きじゃくりながら手を伸ばした。届く訳もないのに。

そう思っていたのに、何かが手に触れた。視線をそちらに移す。

奏、しっかりしろ、奏!

しゅ、秀……?

新、が……

わかるわ、そんぐらい……そんな直視してんじゃねぇよ

強引な力で新から奏を引き離す。

落ち着けよ、奏……

そんなん……無理、でしょ……だって、だって……

奏……頼みたいことがあるんだ

今の私が……出来ると、思ってんの……?やめてよ……やめて……話しかけないで……

奏にしか出来ないんだよ……

ヴェリタってやつが言ってただろ?奏に"時を戻す力を与えた"って……

新がこんな姿なの、嫌だろ……?

俺の為に、新の為に、お前の為に、頼む……

……

まるでゾンビのように、フラフラ歩きながらある場所に行き着いた。

時空の間だ。

扉を開け、飛び込むように中央の水晶を手に取り、抱きしめ、奏は床に倒れ込み……

光に包まれながら意識を失った。

この作品はいかがでしたか?

333

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚