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犯罪者と知らずに恋をしてしまって、可哀想……と思っていたら、似たもの同士だったんですね!! 117564って「いいな、〇〇し」!?
出勤すると、
彼はいつも窓際の席に座っている。
ぼんやりと窓の外を見つめ、
賑やかなカフェの中で
彼の周りだけ時間がゆっくり流れているようだった。
嘉野 瞳
去年の夏ごろから現れた彼。
年齢は、自分と同じ二十代前半だろうか。
嘉野 瞳
バイト中にチラチラと彼を横目に見ながら働く。
ただ、自分はホールスタッフではなく、
厨房なので言葉を交わすことは無い。
ホールスタッフの子に彼について詳しく聞こうにも、
自分が彼のことを気に掛けていると
知られてしまうのが恥ずかしかった。
そうやって、悶々としながら日々を過ごしていた。
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店長
店長がそう言って小さなチョコを手渡してきた。
嘉野 瞳
今日は2月2日だ。
店長
嘉野 瞳
店長
店長
嘉野 瞳
店長
などと陽気に言いながら店長は立ち去っていく。
ホールスタッフA
ホールスタッフB
ホールスタッフA
嘉野 瞳
嘉野 瞳
小さなチョコをポケットにねじ込んで、
一人大きく頷いた。
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【2月14日】
チョコレートは上手く渡せた。
タイミングよくお店を出たところで、
後を追いかけ、
ちょっと無理矢理だったけど、
渡せた。
驚いていたけど、
どこか嬉しそうに受け取って貰えた。
嘉野 瞳
安堵の息を吐き、
お店に戻ったあとに気が付く。
次、彼にあったらちょっと気まずいかもしれない。
いきなりチョコレートを渡してしまったし、
特に自己紹介もしなかったし、
手紙の類も入れなかった。
嘉野 瞳
冷静になって考えると、
色々と抜けていることに気が付いたが
後の祭りである。
嘉野 瞳
今は、そう思うしかなかった。
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翌日、
バイトに出るといつも通り彼は窓際の席に座っていた。
何か声をかけようか悩んで、
でもお店も忙しくて
ホールに出ていくことなんて出来なかった。
それでも、
彼がお店を出る前に厨房を覗き込んで、
目が合うと
にっこりと微笑んで
会釈をしてくれた。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
心臓がドキドキした。
顔が赤くなるのが自分でもわかってしまい、
隠れるように厨房の奥へ引っ込む。
嘉野 瞳
ニヤニヤと笑いながら
ネギを刻む姿は
異様に思われたかもしれない。
とはいえ、
それ以上の進展は無かった。
会釈する、
会釈を返す、
それだけの日々。
何故なら自分は厨房にいて、
ホールに出ることすら満足に出来ない。
いっそのことホールスタッフに転身してやろうかと思ったが、
どうやらホールスタッフの人数は間に合っているらしい。
これでは、せっかくバレンタインのチョコを渡した意味が無い。
嘉野 瞳
そう思いながら、
窓際の席を見つめる。
今日は、雨。
雨が降ると彼は店に来ないことが多かった。
誰も座っていない席を
何度も横目で見てしまうのは、
もう癖のようなものかもしれない。
厨房スタッフA
嘉野 瞳
厨房スタッフA
嘉野 瞳
厨房スタッフA
厨房スタッフA
嘉野 瞳
厨房スタッフA
厨房スタッフA
厨房スタッフA
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
厨房スタッフA
厨房スタッフA
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
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ホールスタッフB
嘉野 瞳
嘉野 瞳
ホールスタッフB
嘉野 瞳
ホールスタッフB
嘉野 瞳
嘉野 瞳
ホールスタッフB
ホールスタッフB
ホールスタッフB
ホールスタッフB
ホールスタッフA
嘉野 瞳
ホールスタッフA
ホールスタッフA
ホールスタッフA
ホールスタッフA
嘉野 瞳
ホールスタッフB
ホールスタッフA
ホールスタッフA
ホールスタッフA
ホールスタッフB
ホールスタッフA
ホールスタッフA
ホールスタッフA
ホールスタッフB
ホールスタッフB
ホールスタッフA
ホールスタッフA
嘉野 瞳
ホールスタッフB
嘉野 瞳
嘉野 瞳
ホールスタッフA
ホールスタッフA
ホールスタッフA
嘉野 瞳
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そんな、
まさか、
じゃあ自分が今まで見ていた彼は一体。
もしかして、
幽霊?
いや、
だってチョコ渡せたし。
だけど誰も、
窓際の席にお客さんは座っていないという。
嘉野 瞳
彼が何かを注文して食べている姿を見たことが無い。
自分が出勤したときには、
もう食べ終えているんだろうと思っていた。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
全くあり得ない話しではないが、
その状態で放置するほど
自分が働いているカフェのサービスが悪いわけではない。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
脳味噌が混乱する。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
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五年前。
女子高生や女子大生を狙った暴行事件が多発していた。
夜道を一人で帰っている彼女たちに
犯人は後ろから襲い掛かり、
目隠しをすると
人気の無いところに引きずり込み事に及んだ。
当初、警察は複数犯の犯行とみて捜査していた。
だが、思いのほか捜査は難航。
犠牲者は増えるばかり。
そして、
ついに死者が出た。
二十代前半の若い女性だった。
暴行の果ての殺害。
最低最悪の犯人だと
当時の新聞には書かれていた。
だが、ほどなくして驚くほどあっさり犯人は自首してきた。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
少し眠たげな顔だったが、
よく整った顔で、
あの窓際の席に座っていた彼にとてもよく似ていた。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
去年の夏だった。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
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彼は変わらず窓際の席に座っていた。
思えば肌が異様に白いなぁ、とか。
外を見ている目の焦点が合ってないなぁ、とか。
ホールスタッフは何の声もかけないなぁ、とか。
素性を知ってみれば、おかしな点は多かった。
そして、いつも通り店を出る前に厨房を覗き、
私を見つけると笑顔で会釈をしてくれた。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
彼は犯罪に手を染めた。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
自分で自分に言い聞かせて、
その言葉が心に突き刺さった。
重いため息をこぼし、
仕事に戻る。
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【3月14日】
夜道。
一人で歩く。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
実際、精神的ショックから
まともに調書が取れない女性も多かったようで、
それが捜査を難航させた原因の一つとしてあげられていた。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
声をかけられて振り返ると、
そこに彼が立っていた。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
そう言って握られた手は、
氷のように冷たかった。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
そう言った彼の目には、
狂気が渦巻いていた。
嘉野 瞳
握られた手を振りほどき、
夜道を駆け出す。
嘉野 瞳
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嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
すでに閉店しているバイト先のカフェへと入る。
この時間ならまだ店長がいると知っていたからだ。
店長
嘉野 瞳
店長
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
店長
店長
店長
嘉野 瞳
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店長
店長
嘉野 瞳
店長
嘉野 瞳
店長
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
店長
嘉野 瞳
嘉野 瞳
店長
嘉野 瞳
店長
そう言って店長はニヤリと笑う。
店長
嘉野 瞳
一歩二歩と店長は近づいてきて、
一歩二歩と自分は後ろに下がる。
嘉野 瞳
店長
店長
店長
店長
店長
嘉野 瞳
嘉野 瞳
店長
店長
店長
店長
店長
店長
店長
店長
声を上げて笑う店長。
嘉野 瞳
店長
店長
店長の顔に、もう一つ顔がタブって見えた。
店長
店長
嘉野 瞳
店長
店長
店長
店長
店長
店長
店長
店長
店長
店長
店長は終始ニヤニヤ笑いながら、
いや、店長だけではない。
その店長に乗り移った彼も笑いながら近づいてくる。
その手には、
包丁が握られていた。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
店長
店長
嘉野 瞳
店長
店長
嘉野 瞳
嘉野 瞳
覆面の男
店長
振り返った店長の頭部に
思い切り角材が振り下ろされた。
何度も
店長
何度も
店長
角材は振り下ろされ
天井や床に血が飛び散る。
店長
覆面の男
店長
覆面の男
店長
店長
覆面の男
覆面の男
覆面の男
店長
覆面の男
覆面を被った人物は、
血塗れの角材を投げ渡した。
嘉野 瞳
店長
嘉野 瞳
思い切り角材を振り下ろす。
店長
嘉野 瞳
嘉野 瞳
店長
嘉野 瞳
覆面の男
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
覆面の男
嘉野 瞳
覆面の男
店長
店長
店長
嘉野 瞳
嘉野 瞳
ゴシャッ!
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ニュースキャスター
厨房スタッフA
厨房スタッフA
ホールスタッフA
ホールスタッフA
ホールスタッフB
厨房スタッフA
嘉野 瞳
嘉野 瞳
厨房スタッフA
嘉野 瞳
厨房スタッフA
厨房スタッフA
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
ホールスタッフA
ホールスタッフB
嘉野 瞳
チラリと見た窓際の席に、
彼の姿はもうどこにも無かった。
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
嘉野 瞳
・
・
【END】