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じゃあ、仕事行ってくる

継母

行ってらっしゃい♡

継母

ほら、涼太くんも!

涼太

……

継母

ほら!

涼太

……行ってらっしゃい

ったく、可愛げねぇなぁ

美羽は?

継母

今寝てるよ〜

継母

まだ2歳だもん!

そっか

じゃあ

継母

気をつけてねぇ♡

キー……バタン

継母

……おい!

継母

もっと言うこと聞けよ!

継母

せめてママくらい言いな!

継母

お父さんに変な目で見られるかもしれないでしょ

涼太

……ごめんなさい

継母

全く可愛げのない

継母

私はねぇ、あんたなんか欲しくなかったの

継母

あの人との子供の美羽だけで十分なのよ

継母

分かったらさっさと部屋行って

継母

イライラするの、あんた見てると

継母

顔見せないで

涼太

……はい

継母

……たく、さっさと出てけばいいのに

涼太

……ふぅ

ここには、僕の居場所が無い。

正確に言えば、無くなったのだ。

3年前に

母が死んだ

あの日から。

3年前

涼太!起きろ!

涼太

ん〜?

涼太

なに〜?

病院から連絡があって、母さんの容態が急変したって

涼太

車出すからさっさと来い!

涼太

う、うん!

10分後

先生!

妻は、妻は……!

医者

最善を尽くしましたが、残念です

……は?

医者

先程、5時47分、永眠されました

嘘……だろ……

涼太

母さん……?

おい美穂

まだ生きてんだろ?

美穂

美穂ーーーーー!

その日から、僕の人生の歯車はトントン拍子に狂っていった。

母がいなくなったことで家から笑顔が消え

僕は学校でも笑顔を作れなくなった。

そんな様子が気に食わなかったのだろう。

いじめの主犯格からもターゲットにされ

僕は

学校から居場所を失った。

そんな時だった。

父が再婚したのは。

相手は父より10歳も下の若い女性。

母と呼べる存在では無かった。

彼女はいつも、父のことしか考えていなかったのだ。

父の前では良い格好をして

僕には暴力を振るう毎日だった。

それは、美羽が生まれてから激化した。

食事すらまともに与えられなくなり

たった1週間で3キロ痩せた。

僕にはもう

学校にも

家にも

居場所が無かった。

涼太

なんだよ、これ……

涼太

僕が何したって言うんだ

涼太

勉強も、運動も、全力で取り組んできた

涼太

ボランティアだってしたし

涼太

生徒会活動にも積極的に参加した

涼太

家でも怒られるようなことはしなかった

涼太

なのに……何で……

涼太

もう、疲れたよ……

ピコンッ

涼太

ん?

『1件のメッセージを受信しました』

涼太

何だこれ?

涼太

迷惑メール……?

涼太

てか、『死んでみた』って笑

涼太

新手の詐欺?

涼太

まぁでも、検索だけっぽいし

涼太

えーと?

涼太

#死んでみた

涼太

……と

『ようこそ!上村涼太様』

涼太

は?何で俺の名前……

涼太

てか、さっきのメールも

涼太

何なんだよ、このサイト

涼太

概要欄ねぇし

涼太

気持ち悪いな

涼太

ん?

涼太

死んでみた人の声?

『A子さん』

『死んで良かった!何でも手に入る、素敵な世界に出会うことができました。この世界が嫌なら、絶対行くべき!』

『O太さん』

『大好きだった母に会うことが出来ました。もう二度と、生き返ることは無いでしょう。』

涼太

母さんに、会える……?

涼太

……会いたい

涼太

母さんに会いたい!

『死の申し込みはこちらから』

涼太

……よし!

涼太

入力完了!

ピコンッ

『1件のメッセージを受信しました』

涼太

まじか……

涼太

でも、もういいか

涼太

死のう

早朝4時

涼太

寒!

涼太

メッセージの紙も持った

涼太

あとは

涼太

飛ぶだけ

涼太

学校の屋上、無理やり開けれて良かった

涼太

……終わるんだな

涼太

僕の人生

涼太

……よし

涼太

さよなら

そして僕は

空に1歩、足を踏み出した。

涼太

……ん

涼太

ここは……?

???

ようこそ、上村涼太様

???

この度は、『#死んでみた』をご利用頂き、誠にありがとうございます

涼太

はぁ……

???

本日の午前4時をもちまして、貴方様の魂は天へと昇っていきました

???

1週間後には、こちらに来ることでしょう

涼太

え、じゃあ

涼太

僕はまだ死んでないんですか?

???

はい

???

今、現実世界の方では『意識不明の重体』の状態となっております

???

しかしご安心を

???

1週間後には確実に死ねます

???

ですので

???

この1週間

???

貴方様には死後の世界を体験してほしいのです

涼太

いつもこんな風に親切に体験をさせてるんですか?

???

いえいえ

???

いつもでしたら皆さん、『即死』ですので

???

しかし貴方様の場合は打ちどころが悪く、『即死』できていません

???

このようなケースは非常に稀ですので、こちらとしても焦りを感じた位です。

涼太

なんか、すみません

???

いえいえ

???

上手く死ねるかなんて、誰にも分かりかねますから

???

では、こちらへどうぞ

涼太

はぁ

???

こちらが、死後の世界でございます

涼太

……は?

涼太

何もないじゃないですか

???

ええ、何もありません

涼太

話が違うでしょう

???

ああ、誤解です

???

『今は』何もありません

???

この世界では

???

貴方様が念じるだけで欲しいものが手に入ります

???

さぁ、やってご覧なさい

涼太

じゃあ……

涼太

『母さんに会いたい』

涼太

涼太

母……さん?

涼太、おいで

涼太

母さん……母さん!

???

良かったですねぇ

???

生活の仕方なども念じることが出来ますよ

涼太

じゃあ

『母さんが生きていた頃の生活に戻りたい』

涼太〜

遅刻するわよ〜

涼太

戻った……

涼太

戻った!

???

良かったですねぇ

???

では、1週間後に迎えに来ますので

涼太

はい!ありがとうございます!

そこから5日間は、あの頃の生活を謳歌した。

家にも笑顔が溢れ

学校にはたくさんの友達。

本当に楽しかった。

幸せだった。

……本当に、怖いほど幸せだった。

だって

全て僕の思い通りだったから。

喧嘩しても相手を悪者にできるし、

テストで100点だって取れる。

完璧だった。

完璧すぎた。

そんな完璧な生活を送る度に

僕の中に

『虚像』

と言う言葉が浮かんだ。

???

どうです?楽しいでしょう?

涼太

何ですか?あと2日はありますよね

???

様子見ですよ

涼太

はぁ

???

楽しいでしょう?この世界

???

貴方にとっての不利益が何も無い

涼太

ええ、本当に何も無い

涼太

悲しみも、苦しみも無い

涼太

素晴らしい世界ですね

???

そうでしょうそうでしょう

涼太

ええ

涼太

それに伴って、中身のない喜び等の幸せも存在する

???

ええ

???

だって、『虚像』ですから

???

全ては貴方様が創り出したもの

???

言わば、貴方様がその世界の王様です

???

どうです?楽しいでしょう?

涼太

……楽しくない

涼太

『虚像』には興味無い

???

なぜ?

涼太

『本物』の母さんに会いたいんだ!

涼太

『虚像』は要らない!

???

随分と勝手な言い草ですねぇ

涼太

……は?

???

『本物』の世界を捨てたのは他でもない

???

貴方様ではないですか

涼太

ふざけるな!

???

ふざける?ご冗談を

???

いいですか?

???

『本当』がないから

???

『死後の世界』なのです

???

全てが『虚像』

???

素晴らしいでしょう?

???

『虚像』で貴方様の理想が作れるのですから

涼太

違う

???

はい?

涼太

違う違う違う!

涼太

僕は母さんに会いに来たんだ!

涼太

偽物は要らない!

涼太

本当に要らないんだよ!

???

先程も言いましたが、この世界に『本物』はございません

???

簡潔に言いますと

???

貴方様のお母様も、いらっしゃいません

涼太

そんな……

涼太

母さん……母さん……

???

どうします?あと2日、続けますか?

涼太

……結構です

???

そうですか、それでは

???

『生』と『死』

???

どちらを望みますか?

???

ちなみに、死を選びますと、『死後の世界』の他に『輪廻転生』を選ぶことも可能です

???

ですが、輪廻転生をしますと記憶が失われます

涼太

え?

???

貴方様も無いでしょう?前世の記憶

涼太

まぁ、はい

???

それと同じです

???

次に生まれる時、今の記憶は前世のものとして扱われることになります

???

よって、次の世界に支障が無いよう、記憶を抹消するのです

涼太

……

???

さぁ、どちらを望みますか?

涼太

僕は……

涼太

『生』きます

???

そうですか

???

分かりました

???

では最後に、この水を飲んでください

???

元の世界に戻ることが出来ますよ

もう来ては駄目ですからね

涼太

え……

涼太

母さん?

ごめんね、涼太

涼太

な、何で……

母さんね

死んでから、死に人の案内人になったの

貴方が死んだ時に、会えるように

涼太

母さん……

おいで、涼太

涼太

母さん母さん母さん!!

寂しい思いさせてごめんね

辛かったね

苦しかったね

母さんね、空から全部見てたよ

よく1人で耐えたね

偉かったね

でも、死にたいなんて考えては駄目よ?

涼太

何で、それ……

涼太

誰にも言ったこと無いのに

涼太の母さんだから

見てれば分かる

でも、だからって#死んでみた なんて変なサイトつくって、貴方を怖がらせたのは良くなかったわね

ごめんなさい

涼太

本当にね

涼太

てか、僕が勝手に死なないようにカマかけたってこと?

ええ

この世界の1番偉い人にお願いしてね

だから、元の世界に戻っても、貴方は意識不明の重体なんかになってないわよ

ベッドの上で、気持ちよく目を覚ますわ

涼太

そうなんだ……

いい?涼太

これから、涼太にはもっと辛いことが待ってるかもしれない

でも、忘れないで

母さんだけは、どんなことがあっても涼太の味方だから

それに、母さん言ったでしょう?

可愛いお嫁さん見つけてねっていつも笑

涼太

なんか言ってたね笑

幸せになって

母さんに思い出話聞かせてよ

待ってるから

ここでずーっと

待ってる

涼太

……うん

さぁ、生きなさい

涼太

え、もう?

うん……あ

そうだ、涼太

母さんの引き出し、まだある?

涼太

あるよ

そこの1番上の引き出し、開けてみて

良いもの入ってるから

涼太

分かった

さぁ、生って

来るべき時が来るまで、もう来ちゃ駄目よ

涼太

ん……

涼太

母さん?

涼太

ってあれ、いないか……

涼太

……本当にベッドの上にいるし笑

涼太

母さんの引き出し、開けなくちゃ

涼太

えっと、1番上の……あった!

涼太

なにこれ、通帳?

『上村 涼太様』

涼太

僕の……

涼太

え、500万!?

涼太

なんでこんなに……

涼太

あれ、まだ何かある

涼太

母さん……

涼太

僕、頑張るから

涼太

見ていてね

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