颯哉Side
バンッ!ドガッボコッドガガガガガガガッ
黒狼颯哉
優!そっち行ったぞ!
黒狼優
おっけー!にぃにそっちよろしく!!
黒狼颯哉
あぁ!
今日は葉加瀬博から言われて、とある廃工場に集まる輩どもを潰しに来ていた おおかた潰し終えたという時、ザッと後ろで物音が鳴った。
黒狼颯哉
…
そっと拳銃を構える。 数秒後、そこに現れたのは…
?
ひっ……
僕らによく似た黒髪の少女だった。 戦うつもりのなさそうな顔を見て、僕は拳銃を構えたまま口を開く。
黒狼颯哉
…お前は誰だ?
?
ここで…奴隷にされてる、の……助け、て……
少女は声を震わせながらこちらに助けを求めてくる。 俺は拳銃を降ろし、少女に近付いた。 ちょうどその時、優が奥から戻ってきていた。
黒狼優
ん?にぃにその子誰~?
黒狼颯哉
コイツ、ここの連中に奴隷にされてたらしいぞ
黒狼優
そーなんだ!ねぇねぇ名前は?
?
…真白が、苗字…。下の名前は、覚えてない…。
途切れ途切れに真白はそう言う。 優は顎に手を当てて数秒考えると、僕の方を見た。
黒狼優
この子、一回連れて行こうよ!あのー…えーっと…葉加瀬さんの所に!
黒狼颯哉
あぁ?面倒だしヤダよ
黒狼優
良いじゃん良いじゃん!お願い!
手をパチンと合わせて優は僕に頼み込んでくる。 僕は大きくため息をつき、真白の手を掴んだ。
黒狼颯哉
行くぞ。
?
はぇ、あ、はい…
俺は真白と優を車に乗せ、葉加瀬博のいる建物へと車を走らせ始めた。
黒狼颯哉
なぁ、優。一つ頼みがあるんだが
黒狼優
にぃにが頼み事って珍しいね!何?
黒狼颯哉
真白。服とかボロボロだろ?金はやるから買いに行ってやってくれ
黒狼優
それぐらいなら全然いいよ!任せて!
?
ありがとう…ございます……
黒狼優
ねぇねぇ真白ちゃん!君の下の名前、私が考えてもいい?
運転席の後ろで優が真白に尋ねる。 真白の目は虚ろで、まるで感情がないようだった。
?
…構いませんよ
黒狼優
んー…真白ちゃんって何か能力ある?
?
……風を…操る能力……
黒狼優
風かー!いいね!
優はまるで小さな子供に話しかけるような感じで真白と話す。 俺は二人の会話を聞いて、ふと思いついた名前を出す。
黒狼颯哉
…彩吹…とかどうだ?
?
いぶき…いい、名前…
黒狼優
おー!にぃににしては良いじゃん!
黒狼颯哉
何だと?
真白彩吹
あの……二人の名前、は…?
黒狼颯哉
黒狼颯哉だ
黒狼優
にぃにの妹の黒狼優だよ!
真白彩吹
颯哉さん…優さん…助けてくれて、ありが、とう……
黒狼優
そんなこと全然気にしないで!
優がそう言った時、丁度建物についた。 三人で建物に入り、報告も含め葉加瀬博の所に向かった。