翔陽くんは俺のもんや　　─番外編─

俺が翔陽を好きになったんは

翔陽のジャンプを見たからでも

翔陽のブロードを見たからでもない

ただ

美味しそうに幸せそうに飯食う姿に惹かれた

確かに興味を持ったのは翔陽の ジャンプ力を見たからやったし

独占欲湧いたんはブロード見たからや

やけどそれは全部バレーの話で

その身体能力に惹かれただけ

｢俺の玩具や、ツムにはやらん｣って

その時はそれだけを思っとった。

けど、ツムに取られやんよう 一緒に居ると

嫌でも見えてくんねん

【日向 翔陽】っていう1人の人物が

バレーバカで、字もあんま上手ない

声でかい上、暑苦しいぐらい元気。

まるでツムみたい

でもツムみたいにウザくはない

笑顔は可愛ええし、気遣い出来るええ子

それに素直で

自分でもええって思ったプレーの時 めっちゃ褒めてくれる

俺の中で 日向翔陽 が 友達になりかけてた時

飯を一緒に食った

そしたら翔陽は 口いっぱいに好きなもん入れて頬張って

口の中に神経集中させて

飲み込んだ後

｢幸せ｣って表情を 一瞬だけすんねん

その後も箸を休めることなく食べて

｢美味しい｣って 幸せそうに言うねん

その飯食うてる姿が 目に焼き付いて離れやんくて

見てるこっちが腹減ってきて

何回も昼飯一緒に食べよって誘った

そしたらなんやろな

変な趣味言われるかもしれへんけど

翔陽の飯食ってる姿に 興奮するようになった

口を開ける瞬間

頬張って噛んでる時

飲み込んだ後吐き出す息

全部見てて 興奮すんねん

そんときに、翔陽が好きなんかもしれんって気付いた

自覚して

そう言う気持ちを吐き出さんと 居るうちに

翔陽を食べる夢を見るようになった

手のひらより小さくなってもた 翔陽の服脱がせて

口ん中に放り込んで

でも丸呑みすんのは勿体ないから

味わう

硬い骨ごと噛むねん

翔陽の全部食いたいから

奥歯で骨砕いて

バラバラになったら色んな食感味わう

弾力のあるところ

柔らかいところ

プチッと弾けるような食感もある

そんで噛むたび出る液体が 口いっぱいに広がったら

呑み込む

その瞬間と、その後8秒間

幸せって気持ちに満ち溢れる

けど

脱がした服を見ると

罪悪感と絶望感で苦しくなって 耐えれやんくなる

死にたくなる

｢なんで食ってもたんやろ｣

｢翔陽ともっと 話したかったのに｣

って

自分で食ったはずやのに酷く後悔して

その後に毎回目を覚ます

酷く辛くて怖い夢やのに

起きたらいつもより腹減ってんねん

飯食いたなるねん

いつもより飯が 美味く感じんねん

｢狂ってやがる｣って毎回自分に思う

あんな夢見て高揚してる俺が居る

この気持ちはどうすりゃいいか分からん

自分が分からんくて怖い

ツムが居らん自主練中

翔陽に直接聞いてみた

怯えてまうかな、 とか思いながら翔陽を見る

そしたら翔陽、持ってたボール落として

顔真っ赤にして

って勢いよく言った

なんでそんなこと言われたんか 分からんくて

びっくりしてたら

翔陽がもじもじしながら

って恥ずかしそうに言った

なんで童貞と関係あるかよく分からんのやけどって首傾げたら

翔陽は

と照れながらモゴモゴしながら言った

その時に気付いた

翔陽は【食う】と言う言葉を性的な意味で捉えたことに

声出して笑うのを堪えて肩をふるわせる

翔陽は顔を真っ赤にした後

血の気の引いた怯えた顔で

と俺に問いかけた

翔陽と目合わせれやんくて目を逸らす

やっぱ引かれたやろか…

少し遠くを見詰めて答える

やっぱり自分のこと、 あんま分からんから

その翔陽の言葉を聞いて

自分にしっくり来たのと同時に

酷く安心した

俺も普通の恋愛出来るんや

って

それから2年

翔陽のことは半ば諦めてたけど

久しぶり会った翔陽は 相変わらず美味そうで

食いたなる

けれど

心が一緒になれば

腹も満たされるって 知っとるから