それだけでいいなんて
それ以上を求められない人が使う言葉だ。
ウチにはたくさん友達がいるけれど
誰ひとり、ウチのことを知らない。
誰ひとり、ウチのことを見ていない。
何も考えてないウチだから、あそこにいられて
分け隔てなく接するウチだから、嫌われにくい
誰かの1番になろうとするってことは誰かを傷つけるってことも起き得るわけで
誰かに嫌われるキッカケでもある。
…ああ、でもこれは悩みなんかじゃないよ
そんな現状でも満足してるし、みんないい子たちで大好きなの
…だってそうでしょ
この状況で悩むなんて、ズルいというか、そんなの贅沢だ
ひとつ認めればそれはもう簡単に、制御できないくらいに膨れ上がる
何不自由ない生活なんだから、これ以上欲を見せちゃ、ダメ
それは弱点にもなるんだから。
柑奈
つい人にぶつかってしまって、謝った。
その子は無視して階段を上っていった
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
気になってしまった
だからウチは引き返して、階段を駆け上った
柑奈
柑奈
この子は未だ先生の前とかでは"いい子"を演じていて
みんなからは理解し難い、ちょっぴり変わった子
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
ウチの名前を聞いた瞬間
この子の瞳孔が開いた気がした
それは勘違いかもしれないってくらいのものだったけど
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
『変なの』
その言葉が、こんなにいい意味に聞こえたのは初めてだった。
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
柑奈
こうしてウチはすっかりミステに興味を抱いて、話しかけるようになった。







